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Director's Column #2

SGT.PEPPERS 50周年に寄せて

26年前の自分に問いたい赤線が引いてある。
なにに、かというとビートルズマニアの聖典中の聖典、マークルウィーソン著「THE BEATLES The COMPLETE Recording sessions 」のことである。
26年前の私は同著120ページの1967年2月16日の項、「Good Morning,Good Morning」のレコーディング記事に赤線を引いている。
これは今見ると何が疑問で赤線を引いたのか全く記憶がないが、当時の私には何か相当疑問があったのだろう。


というわけで印象派の新作レコーディングも佳境に近づいてる中、サージェントペパーズ、五十周年のボックスについて。
新ミックスは個人的にはジョージマーティンの息子ジャイルスマーティンの現代のスマートフォンなどで雑踏で聴くことや近年の音楽に考慮したハイ&ローを充実させたミックスに納得はしながらも、やはりオリジナルmonoミックスの方がリンゴのスネアの音など、好みなので
あまり今後ターンテーブルに乗ることは少ないように思う。
が、ディスク2~4の充実さは目(耳?)を見張るものがある。
特に前述の本を手垢で汚れ、ボロボロになるまで読んでいた人達にとってはやっと出会えた至福の時を迎えることになるだろう。


ブートレッグなどになっていない音源がほとんど、あこがれのアビーロードの保管庫に入れたような至福の2時間強。
サージェントペパーズとリトルヘルプマイフレンズの繋がる部分がまだ生まれていない両テイクエンディングとオープニングや、ウィッシングユー ウィズアウトユーのインド楽器奏者(未だに参加ミュージシャンが明らかになっていない)に一音ずつ歌って伝えるジョージハリソン、フィクシングアホールのポールのベースの4弦チューニングが狂ってるテイク、ラブリーリタのベーシック、アデイインザライフのコーダ部分がピアノではなくハミングになっているもの、、、とにかくレアなテイクが目白押し。ボーナステイクとなってるディスク4の数曲も要注意だ。ファーストモノミックスは関係者本人たちの確認用に使用されたものだろうが、新たな発見しかない。


兎に角これを聞かずに世を去っていったビートルマニアはさぞ悔しかっただろう(無論本人たちは知る由もないが)、長生きはした方が良さそうである。こんなものが聞けるなら毎日粗食でも辛抱しよう。とはいえ、こうなってくるとわがままも言いたくなる。例えば、、、67年1月5日のポールが制作した「Revolution 9」に先駆けること1年と5ヶ月のサウンドコラージュ「Carnival Of Light」や、2月10日に行われたあのアデイインザライフのPVでも一部が観れるオーケストラ及びミックジャガーなど有名人も参加したセッションの模様をメンバー本人が撮影したフィルムなどはDVDに入れて欲しかったな、、、などとほんの少しのわがままで済んだこと自体が賞賛に値する。


あとは今回のプロジェクトは66年11月24日のストロベリーフィールズのレコーディングから、67年4月21日の犬にしか聞こえない15キロサイクルの高周波音のレコーディングまでが範囲とされるが、理解は示した上に、個人的にはこの範囲に異論を唱えたい。自分がこのプロジェクトに関わっていたなら6月25日のあの世界中継された「愛こそは全て」のレコーディングまでにするだろう。理由はストロベリー&ペニーレーンは当初はアルバム収録予定だったが、ブライアンエスプタインの意向によりシングルリリースのためにオミットされたにも関わらず本プロジェクトに収録されている。となるとサージェントのアルバムには未収録であったとしても実際はれっきとしたサージェントペパーアウトテイクのオンリーアノーザンソング(2月13日録音開始)、や、ペパーセッションから陸続きで行われたマジカルミステリーツアー、ベイビーユアリッチマン、オールトギャザーナウ、ユーノウマイネイム、、イッツオールトゥーマッチ、そして前述の愛こそはすべてまでの6月26日までの作業が一連のペパーセッションだと個人的には思ってる。このあと8月22日のユアマザーシュッドノウまでは何も行われていない。


とはいえ、確かにアルバムはその間に完成、リリースしてるわけで少々持論に無理があるのも承知だが、ストロベリーフィールズ&ペニーレーンを入れるので「あれば」、僕の言うことにも一理ならずとも、当時の彼らの真実に近づくには2理も3理もあるかな、と思ったりする。大体サージェントペパーズの正体とは、ジャケットも含む後付けの成果であり、レコーディング当時はこのようなコンセプトアルバムにする予定はなかっだろうと思っている。コンセプトアルバムの体をなしているのはサージェントペパーズ(リプライズ)が収録されているのが大きいが、実際にこの曲がレコーディングされたのは終盤4月1日である。最初からこのサンドイッチ案があったわけではないのだ。


蛇足だがストロベリーフイールズは66年のジョンの映画撮影に参加してる頃書かれたと言われてるが実際は映画「エイトデイズアウィーク」内でホテルの部屋でピアニカを吹く64,5年のジョンが撮影されている。そのメロディは紛れもなくストロベリーフィールズのイントロのメロトロンのメロディであることも未だに66年に作曲されたと書いてる音楽ライター諸氏に申し上げておく。


とにかくこのボックスであと数年は楽しませてもらおう。次はホワイトアルバム、、、期待が高まりすぎる。
この金字塔には遠く及ばないが、印象派のニューアルバムもなかなかの出来なので期待しといてください。

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