【映画評論】「THE FIRST SLAM DUNK」を観行きました。※微ネタバレ注意
2022年12月10日(土)。15時04分。
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※今回の記事は時流に乗った記事となるため、noteに早出しすると思われます。
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「THE FIRST SLAM DUNK」を観に行きました。
この映画は、ネタバレをしても誰も幸せにならないと思ったので、ほとんどネタバレなしで書こうと思います。
インターネットでネタバレしている人がいて、「ちょっとこれは著作権的にいいのか?」と思わないでもないですが、まあ、私はしません。
ちょこちょこっと紹介して終わりたいと思います。
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まず初めに。
原作「SLAM DUNK」を読んでいない方でも楽しめるように工夫されています。原作を読んだことがある方は、確実に楽しめますし、原作を読んでいない方が、映画の為に原作を読んでみると、また違った楽しめ方が出来そうな気がします。
ちなみに、私は原作「SLAM DUNK」、または別作品である「リアル」「バガボンド」などを読んだ後に「THE FIRST SLAM DUNK」を観に行きました。
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脚本を務めた井上雄彦氏には感服しました。
原作「SLAM DUNK」の終わりかたがこれ以上に無いくらいに「綺麗に終わった」ので、今回の「THE FIRST SLAM DUNK」でも「原作の同じ内容を繰り返すだけでは?」「クライマックスの山王工業戦を繰り返すだけでは?」という思いが観る前にはあり、あまり期待はしていませんでした。
予想通り、「山王工業戦」を二時間くらい観るだけでした。名言だらけの「山王工業戦」を、アニメで新しく観るだけでも、原作ファンとしては楽しめました。
しかし。良い感じに予想を裏切ってきました。
まず、主人公が、桜木花道ではなく、宮城リョータなのです。
原作「SLAM DUNK」では、突然出てきた謎のチームメイトで「なぜこんな人が弱小の湘北高校に……?」という感じで出てきましたが、映画ではこの宮城リョータの過去から始まります。
宮城リョータは沖縄県出身なのです。そこで、壮絶な経験をしながら、神奈川県まで引っ越すことになります。
「山王工業戦」をハイライトしながら、宮城リョータの過去の話にもちょくちょく触れていきます。
宮城リョータの過去の話を観ていると、井上雄彦さんが描いた漫画「リアル」の影響をかなり感じるな、と思いました。
宮城リョータの過去の話は非常に残酷で、ここには書きませんが、湘北高校スタメンの5人のメンバーの中でも最も過酷な人生を歩んできている、と言っても過言ではないくらいに、過酷な人生を歩んでいます。
宮城リョータの母親の姿が、井上雄彦著「リアル」での高橋久信の母親の姿と重なりました。宮城家があまりに過酷な運命の為に、ただ、風景をぼんやりと眺めたり、現実世界で弾力を失っていく姿は、井上雄彦さんが「リアル」を描いてきたからこそ描けた、徹底的に現実的な母親の像でした。
「山王工業戦」が始まって直後、原作と違うシーンが出てきます。桜木花道がアリウープを決めるのです。
原作では豊玉高校戦でアリウープを知らなかったために、そのまま着地した桜木花道ですが、山王工業戦ではきっちり決めて周囲を驚かせる場面が最初のほうにあります。
これは、あえて「山王工業戦」で見せなかったアリウープを見せる、ということで、漫画の原作「SLAM DUNK」とは少し違う世界線なのだよ、と映画を観ている観客に、そう伝えるかのようなメッセージ性を含んだアリウープだったのかなと思いました。
あまりネタバレをしないように書いていきますが、実は、宮城リョータと三井寿は中学時代からの知り合いでした。神奈川県に移り住み、一人黙々と練習する宮城リョータに対して、武石中の三井寿が1on1を仕掛けます。原作「SLAM DUNK」では、宮城リョータと三井寿は喧嘩するところで初めて出会うかのように振舞いますが、劇場版「THE FIRST SLAM DUNK」では、前々から知っているという設定のもと行われます。
なので、三井寿がバスケ部に戻る時の、髪を短くしたあの数日間の空白も、今回の劇場版「THE FIRST SLAM DUNK」ではきっちりと描かれています。原作の流れを壊さずに、原作では描かれなかった場面などを描いていて、「井上雄彦さんは原作の段階から劇場版を創ることを始めから決めていたのか?」と思うほど整合性が取れていて、原作ファンにはより一層楽しめる内容となっています。
劇場版「THE FIRST SLAM DUNK」で少し残念だったのは、山王工業のチームと湘北高校のチームメイト以外のバスケット選手が一切出なかったことです。声優が増えるなど問題点があったのかもしれませんが、──もしくは、原作を知らない人にも楽しんでもらえるように、あえて登場させなかったのか、映画の中では新キャラとなってしまう魚住純など陵南高校のメンバーなどは、一切出てきませんでした。
そこらへんは原作と違うところで、要はキャラクターをたくさん出すよりも、宮城リョータという人物そのものに焦点を当てた、宮城リョータの人生に軸を置いた作品創りになっています。
宮城リョータは過酷な人生を歩んでしまったがために、寡黙な人物として描かれています。しかし、山王工業戦で皆に声を掛けるなど、宮城リョータ自身が変わっていく様子も描かれています。
そして、タイトルの「THE FIRST SLAM DUNK」の意味なのですが、最後の最後に、なぜ「THE FIRST」なのかが分かります。これは続きがあるのではないか、と嗅ぐわせるシーンが最後の最後にあります。それを観た時には息を飲むような感覚を覚えました。井上雄彦さんがここまで考えて原作を創っていたとすると、「すごい」の一言で終わってしまいます。「THE FIRST」なのです。始まったばかりなのです。「ただの山王工業戦のハイライトで、名言を散りばめただけの映画」のような予想を立てている人もいるのかもしれませんが、全く違う映画です。これ以上は言えません。劇場で楽しまれることを望みます。
最高の映画をありがとうございました。
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