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完訳で読み直すロビンソン・クルーソー

ロビンソン・クルーソー - Wikipedia

児童向け文学では、ロビンソン漂流記がもっとも好きでした。

乗っていた商船が難破して、乗員は全滅し、自分ひとりだけが生きて無人島に漂着し、救出されるまで、27年も文明から切り離されて、独力で生きねばならなかった人の話です。

ロビンソンクルーソーは小説なんだけれど、18世紀の船乗り、セルカークの実話が元になっています。

同時に漂着した船の残骸から回収した道具を活用し、衣食住を確保する。島にやってきた人食い部族と遭遇して撃退し、食われそうになっていた原住民を救出し、後から漂着したスペイン人も加えて、しだいに仲間を増やしていく。

18世紀の船乗りの野心とバイタリティが伝わってくる名著です。読むだけで元気になる。

児童向けに抄訳されたバージョンしか読んでいなかったので、あらためて、完訳版をkindleで読んでみたら、記憶の10倍くらいヘビーな内容でした。

抄訳だと、ロビンソン・クルーソーは、冒険好きな性格で、親が止めるのも聞かず、裕福な実家から出奔して、船乗りとして商船に乗り込んだら、その船が難破して、南米沖の無人島に漂着します。

ところが、原著だと、ロビンソンは、最初の航海ではアフリカ沖で船が難破して、運良く助かります。次の航海では海賊に襲われて、アラブ人の奴隷になります。そこから苦労して脱出して、沖合で商船に救助され、同乗して南米に移住します。

南米では、農園を経営して成功したのに、それだけでは満足できず、今度は奴隷貿易に乗り出すのです。奴隷貿易の途中で、嵐に遭って、大西洋で難破して、無人島に漂着する。

無人島に漂着して、すぐに、サバイバル生活ゴー!でもないです。

島の沖合に流れ着いた船の残骸から、生活用品を取り出して持ち帰るまでの手間が呆れるほど長い。

物資を運ぶには、まず、イカダを作らないといけない。

船の資材からイカダを作り、船から物資を持ち出し、イカダにくくりつけ、陸揚げするまでの苦労が実に長い。

無人島で洞穴生活を始める場面でも、

椅子とテーブルがない。

とくにテーブルを作るまでの手間が長いのです。なにしろ、

縦引きのノコギリがない。

丸太から、板を何枚も取りたかったら、平行に丸太を縦引きしないといけないのだ。

ノコギリの使い方 - 角利産業 株式会社角利産業 株式会社 (kakuri.co.jp)

ロビンソンは、丸太を両側から斧で削って、板を削り出す。丸太1本から板1枚しか取れない。

私たちの生活は、すごく単純だが重要な多数の道具によって支えられていて、あれば存在すら気づかないが、なくなると、とたんに大変なことになるのです。

私は漂流モノが好きで、他にも、こんなのを読みましたが、ロビンソン漂流記がいちばんいい。船から持ち込んだ穀物を育てて、パンを焼いたり、畜産をやってみたり、仲間が増えていったりする、拡大再生産ループがいい。

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