怪人H

オメーも怪人だろという声も聞こえてきそうなものだがそれはさておいて、ちょっと前にツイキャスをやったときに話題にあげたら好評だった怪人Hくんについて書こうと思う。中学、高校の同級生だ。

前提として、奇行が目立つ人間のことを僕は怪人と呼称していることを分かっておいてほしい。
由来は昨年Twitterでバズった「ステーション・バー村田」だ。誰かが彼を令和怪人と呼んだ。それを目にしてから僕はヤバいやつを怪人と呼んでいる。
ところでステーション・バー村田は本物の怪人だ。人類の上位0.5%に入る狂人だ。試合に負けうなだれながら帰ったあの日、失恋しとぼとぼ帰ったあの日、志望校に合格し笑顔で帰ったあの日、準備に時間をかけたプレゼンが通ったあの日、色んな人の色んな“あの日”を令和怪人村田は駅の片隅から涙を浮かべながら見つめている。これを怪人という。
何が恐ろしいって最恐令和怪人ことステーション・バー村田、「こづかい万歳」という漫画家のこづかいライフを描いた漫画の一編に過ぎないのだ。「孤独のグルメ」並の一大センセーションを巻き起こしてもおかしくないステーション・バー村田は絶対単独作品でやるべきだ。

話を戻すと、H君だ。
匿名とはいえ彼の名誉のため書けないほどのこともあるので、マイルドなエピソードのみここに綴る。

1つ目。
僕は小学生から母親に連れられ映画館通いをしたいて、中学に入ってからは友達とも行くようになりH君はよく付き合ってくれていた。
あれは中2だろうか、「インセプション」を観に行った日のこと。観賞後彼は言うのだ、「よく分からなかった」と。「インセプション」は分かりやすい方とはいえ、まあノーラン映画なわけだし無理もないのかもしれないが、当時の僕は聞いてみた。どの辺から分からなかった?と。すると

「仲間集めのとこから」

誰のどんな映画を観てもあんまり分かっていないのだろうな、こいつは。と思った。寝ていたのでは?どうか寝ててほしい。仲間集めパートから
理解していない人間と何回も映画の感想を言い合っていたという事実が怖いからだ。おそらく1つも噛み合っていなかっただろう。
アンジャッシュのコントみたいに。

2つ目。
Hくん、モテたかったらしいが中々うまくいかず片っ端から女子にアタックする作戦に出たのだが、その方法が悪かった。
当時はガラケーしかなく、連絡手段は主にメール。メアドに拘ってた頃だ。いなかっただろうか、メアドコロコロ変えて「変えました!」とメールしてきた人。そういう時代だった。
H君、「インセプション」は理解できずともメールの使い方は理解していたようで、告白メールを女子に送りまくるという数撃ちゃ当たる戦法に出た。
しかしだ、CCだか何かで一斉送信してしまったため何人もの名前が宛先に連なっていた。受信した人間全員見れるのに。
結果、総すかんを食らっていた。
メールの使い方は理解していたようだが、使いこなせてはいなかったようだ。「インセプション」の仲間集めパートを参考に、詳しい人間に協力してもらうべきだったのだ。まあそもそもそこを理解できていないので仕方無いのだが。

3つ目。
友達から借りていたPSP版鉄拳を借り物と忘れてGEOに売っていた。服を着る必要さえ感じないほど、愚かだ。

4つ目。
ラブレターを書いたのだが、クラスメイトに「漢文で書いたらいける!賢いとこ見せたらいける!」とからかわれそれをなぜか本気にして漢文ラブレターで突撃→破り捨てられるという事件。
破り捨てられたのは別件だったかもしれないが、確かこっちだったような…。別件だったところで気の毒なことに変わりないが…。

5つ目。 
同窓会の帰り道での出来事。H君は実家に帰る際にバスを使うのだがバスの出発地が僕の家から近かったので送った。そこでの発言を紹介する。

「いや~俺らも高校の頃はやんちゃしとったけんね!」

どれの話だ???やんちゃの意味を履き違えていないか???あと勝手に俺を巻き込むんじゃない、そんなダサムーブに。僕はやんちゃせずとも楽しめるほどには遊びの教養がある。Mr.一斉送信、お前と一緒にするな。漢文ラブレターマン、お前と一緒にしてくれるな。
散々ダサい振られ方をしたショックで偽りの記憶でも生まれてしまったのだろうか。「ゴースト・イン・ザ・シェル」のあいつみたいに何者かに頭をいじられたのだろうか。いや多分イキってただけだろうけども…それにしても…第一僕らが通っていたのは進学校で(我々は落ちこぼれクラスにいました)、やんちゃな方の生徒でも髪染めてるとか遅刻多いとかイタズラ好きでよく騒ぐとかそんなんばっかで喧嘩や非行なんて縁が無いような、世間的にはお利口さんにカテゴライズされるくらいの人間がほとんどだったしH君は別にそういうタイプでもなかった。徹頭徹尾ダサくて引いたのをよく覚えている。
とどめにH君、バスの時刻表すら読めなかったらしく長崎かどっかで一晩放り出されるバスに乗ろうとしていた。実家福岡なのに。それちがくない?と僕が言ったので事なきを得たが、そのまま乗せた方が面白かったな…と後悔している。

最後に、冬に久しぶりに連絡があったのだが、結婚するらしい。膝から崩れ落ちた。めでたいんだけど、めでたいんだけど、自分と近しい人が結婚となると焦るのだ。もう26歳だし。「○○さん、今日飲み会やるけど~」「ごめん~今日旦那と出掛けんのよ」とか言われたいんだよな~。旦那って良くない言葉とされてるんだったっけ、響きが好きなんだけどな。呼ばれるなら旦那がいいんだけどな~下の名前を旦那に変えればどんな世でもそう呼んでもらえるかな。
話を戻しますね。そうかそこまであいつは人生進んでるのか~一方俺の人生~泣と思いつつどう出会ったかを聞いたら「バーで!」と言う。余計な心配かもしれないが、H君はバーで女の子とどうこうというタイプではない。ここまで読んでくれた皆さんは同意してくれるだろう。ちょっと遊ぶくらいならあるかもしれないが、そこから結婚というのがピンと来ないのだ。一方その頃他の友達にも結婚予定報告が来ており「結婚詐欺では?」と話題になったらしい。みんなそういう心配をするような男ということだ、僕が無礼なわけではない。彼を知る者なら当然の反応だ。
そしてこの数ヶ月、「結婚しました」という報告は来ていない。
H君に幸あれ。


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