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初めての狩猟デビュー戦


目指すは報奨金


免許を取得し、めでたくバッチをもらった夫。
晴れて狩猟デビューとなるわけだが、狩猟は期間が決められており、我が地域のわな猟は、11月15日から3月31日までだった。バッチが届いたのは、1月下旬。年度内で狩猟ができる期間は、およそ2か月という短い間しか残っていなかった。

ちなみに、新人ハンター賞という県主催の報奨金がゲットできるのは、2月15日まで。できることならゲットしたい。夫は報奨金目的で狩猟をやるわけじゃないとカッコつけているが、道具を揃えるだけでも出費がかさんでいるので、妻としては幾分でも取り返したいのである。

ちなみに、報奨金に関しては、自治体によって金額や条件が異なるのだが、私の住んでいる市では、猪を捕まえたところで何もない。ちなみに近隣の市を参考にすると一頭6,000円と非常に安いが、このイベント型の報奨金では新人賞が3万円。最大サイズなら最優秀で10万円がもらえる。

いざ猟場となる山へ

我々の猟場は、幸いにも自宅から車で5~10分ほどの場所にある。わな猟は見回りをしなければいけないので、非常にありがたい距離感だ。まず、候補となる1番目の山は、近年登山者が多い場所で、休みの日は多くの人が訪れる。

実は、免許を取る前にも、恐らく猟場はココの山になるだろうと思っていたので、下見に来たことがある。季節は秋で、柿の木が実をつけ、足元にはどんぐりが転がっていた。猪にとっては美味しい餌が豊富な山なのだ。そして、猪の存在を証明するかのように、先輩ハンターの狩猟のネーム標識が近くの木に掛けられていた。

デビュー日は、下見に行った時とは別ルートから山へ入った。できるだけ登山客を避けるためである。夫は、まばゆいばかりのハンターカラーであるオレンジのベストを意気揚々と着用し、頭はゴールデンカムイに影響を受けたマタギスタイル。谷垣ニシパのようにバンダナを巻いていたので、明らかにただの登山客ではない。恥ずかしい。という気持ちもあるが、やはり獲物を狙うなら、登山客がいない静かな道が良かったのである。

森の音に恐怖する

登山道とは別に、その山には丁寧にハンター道があった。下見の時には気づいていなかったのだが、ハンター専用の道があったのである。「入口」と書かれたわかりやすい柵も丁寧にあり、足を踏み入れると、これでもかというくらい先輩ハンターのネーム標識が至るところに掛けられていた。もはや、仕掛けられるところはないのでは?と思う程だったので、仕方なく道から外れた森の奥へ行くことにした。

森に入ると懐かしい気持ちになった。落ち葉を踏みしめる音、鳥の声、静寂、木漏れ日の輝き。幼稚園に通っていた頃、近所の森に「どんぐり山」と名付け、先生がアスレチックを作ってくれた。木の枝にロープで括ったタイヤのブランコに乗るのが楽しかった。落ち葉やどんぐりを集めて遊んだ。

そんな幼少期の思い出に浸った瞬間、バーンッ!!

その思い出の回想が走馬灯なんじゃないか?と思うほど、大きな銃声が近くで鳴り響き、我々は震えた。怖すぎて笑えた。銃猟のハンターさんがいることをすっかり忘れていたのだ。私は、アシリパスタイルとふざけて巻いていたバンダナを頭から取り、蛍光イエローのニット帽にかぶり直した。夫の谷垣スタイルを馬鹿にしている場合ではなかった。私も浮かれていた。

猟場に入ったら、頭をぶち抜かれないようにしなければならないと、U字工事も狩猟コントで言っていた。まさか肝に銘じる日が来るとは・・・。

さらに、気を付けなければいけないのはハンターだけではない。人の気配が少ない森に入ると、途端に動物の気配を感じるようになる。鳥なら可愛いものだが、猪がいると思うと怖い。もしも猪が突進してきたら?と考えると、熊笹がガサガサと揺れると、ヒッ!!と震える思いなのだ。

猟場に立つというのは、人間が優位でない世界に行くという事なのだなと、武器を持たない丸腰の我々は思った。そして、翌日はバットを持参し、ますます登山客とは擦れ違いたくないスタイルになったのである。

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