全日本プロレス3.27後楽園大会雑感
全日本はあまり話題にならないけど見に行った人の評判がよいので来てみた。
一年前にチャンピオンカーニバル公式戦に来て以来、三冠戦を見るのは4~5年くらい前に両国で小島聡と浜亮太の試合を見て以来だ。浜ってw
しかもその試合浜が勝ったんだよな。そして小島は全日本を離れ、新日本に戻りG1に出場、そこで初の団体外G1覇者になるのですが。なんでもつながっていくよねプロレスは。
セミファイナルが世界ジュニア選手権、メインが三冠戦と全日本が誇る2大タイトルマッチが組まれているというのに南側客席は半分くらいしか入ってない。うーん。
プロレスブームと言われていてもやっぱ全団体がブームじゃないわけで。
リングアナウンサーの木原さんの声を聞くと「ああ全日本」と思う。そいや木原さんはもうガンプロ出ないんだろうか。
1、シングルマッチ 20分1本勝負
KENSO vs 野村直矢
野村は新人。入場テーマが「名探偵コナン」だった。
KENSOはダークキングダムというヒールユニットのリーダーをやってて、全体的に黒くなってた。
もう「ビチッと!」とは言ってくれないらしい。
KENSOは私と同い年なのでもう40歳なわけでいいベテランになってるのに、若手相手の第一試合だというのにビンタやらラリアットやら多用して試合が雑だなと思った。もうちょっとレスリングやれよ。
KENSOを見るたびに「この人が棚橋とタッグを組んでた時代があったんだよな」と考えてしまう。
考えたって仕方ないし、もうこれだけ境遇が変わってしまうと共通の何かを求めるのも難しいのだと思うけれど、あの頃新日本で期待されてたのはむしろ棚橋よりもKENSOだったわけで、なんか人生っていろいろだよね。
2、タッグマッチ 30分1本勝負
ゼウス、ボディガード vs 真霜拳號、タンク永井
微妙に大阪プロレスvsK-DOJO対抗戦っぽい試合。
ボディガーは試合のリズムが悪く、なんとなく試合がダラッとした感じになってしまう。
ゼウスとボディガーは「見るからに屈強なプロレスラー」という、もう何世代目かのロード・ウォリアーズの系譜を継いだいいキャラクターをしているが、彼らの良さを引き出せる相手は限られてしまうので扱いが難しい。
「店によっては売れるけど、売れる店を選んでしまう商品」というか。
今日はあんまり売り場に合ってなかった。
3、8人タッグマッチ 30分1本勝負
秋山準、金丸義信、渕正信、青柳優馬 vs 大森隆男、SUSHI、土方隆司、中島洋平
この組み合わせでまさかのSUSHI単独入場。なんだなんだ。スポンサーでもついてるのか。
かつて全日本には雷陣明というレスラーがいた。
諏訪魔と同期入団の有望株だった。
TNAに遠征し、現地ではそこそこプッシュされ、少なくとも売れない頃のオカダ・カズチカよりプッシュされ、KIYOSHIというグレート・ムタフォロワーのペイントレスラーにもなり、チャンピオン・カーニバルにもエントリーされた。
2008年ごろの全日本を見てれば「いずれは諏訪魔と雷陣が全日本の2トップになるのだろう」と誰もが思ったはずだ。
ところが雷陣は2012年にいきなりSUSHIというコミックレスラーになった。
覆面レスラーのBUSHI(現・新日本)のパートナーという触れ込みだ。
入場テーマはシブがき隊の「スシ食いねえ!」、卵焼きが頭についたマスクをかぶり、得意技は「テッカマキ」という丸め込み技になった。
そして全日本の有望株だった雷陣明は消えた。
雷陣がどうしてSUSHIになったのか、今もってわからない。本人からも何の説明もない。
そもそも公式には「SUSHI=雷陣」と本人も団体側も認めてないので聞きようがないのかもしれない。
SUSHIは今日も秋山に頭をはたかれ、金丸にやられ、コミカルな動きで観客を笑わせていた。
新人の青柳はあまりパッとしたところがなく、うーんこれはDNAから再デビューした方がいいんじゃない?とか思ってたら、何の気なしに三沢と丸藤がよくやっていた、走ってくる相手の腕を掴んで自分も回転しながらの巻き投げをサラッとやってて驚愕した。
全日本であれをやるレスラーはその後トップになるレスラー、という認識があるので、もしかしたら今後意外に伸びるのかもしれない。
青柳はそのあとも丸藤がよく見せる「自分から宙に飛ぶことで大きく見せるショルダースルーの受け身」をやってた。
今日はただやられてただけだが、ちょっと覚えておいた方がいいかもしれない。
社長となって存在感を増した秋山を見て「秋山はもう誰の下でもないんだなあ」と思った。
場外でフェンスにぶつけることで「レスラーの格」を表現する伝統を守っていた。
そしてもうろくろく動けない61歳の渕をどこでどうやって出したら盛り上がるか、使いどころをよく心得ていた。
その渕は今日もボディスラムだけで芸を見せてたのだけど、最後は大森のアックスボンバーを受けてて純粋に「渕すごい」と思ってしまった。61歳でなかなかアックスボンバー受けられないよ。
大森は…いい終の棲家を見つけたね。
いろんな人間模様が垣間見える鍋試合。
4、6人タッグマッチ 60分1本勝負
諏訪魔、ジョー・ドーリング、佐藤光留 vs 曙、吉江豊、石井慧介
ひかるんと石井への「どうして君たちそこにいるの?」感が強かった。
二人とも頑張ってたけど…あからさまにサイズが違いすぎる。
諏訪魔とジョーのタッグはテリー・ゴディとスティーブ・ウィリアムスみたいだった。ちょっと破壊力図抜け過ぎ。
諏訪魔は本気を出さないうちに本気がなくなっちゃうんじゃないかな…と思った。
吉江の試合はなんか眠い。
そいや吉江も昔、棚橋とタッグ組んでたよね。
ここは背中に棚橋の幻影を見てしまう人ばっかりだ。
5、世界ジュニアヘビー級選手権試合 60分1本勝負
[王者]青木篤志 vs[挑戦者]鈴木鼓太郎
※青木は6度目の防衛戦
全日本の世界ジュニアなんだけど、なんとなくノアのGHCジュニア選手権みたいな気がしてしまった。
リング緑色じゃないけど大丈夫?的な。
鼓太郎に三沢のカラーが付き過ぎてしまったというのもあるんだろうけど。
エルボースイシーダ出したときはワァ…っとなった。
試合は全体的にレベル高かった。
え、こんな攻防見たことない、という瞬間が何回かあった。
かつて丸藤とKENTA、最近だと飯伏とケニーが試合したときに見せた、トップロープに両者が立った状態からの飛び上がってのフランケンシュタイナーを青木がやった。すごいなあこの人たち。
決まり手は鼓太郎のかちあげ式エルボー。
徹頭徹尾三沢DNAだ。
けどもう三沢を知らずに全日本を見てる人も少なくないだろうし、その人たちにとってはタイガードライバーもエルボースイシーダも「鈴木鼓太郎の技」として認識されていくんだろうなあ。
6、三冠ヘビー級選手権試合 60分1本勝負
[王者]潮崎豪 vs[挑戦者]宮原健斗
※潮崎は2度目の防衛戦
木原リングアナが「すぁんかん、せんしゅけん、ろくじっぷんいっぽんしょうぶをおこないます!」から始まるリングコールの最後に「レフリー、和田京平」って言うと「キョーヘー!!」と客席から声がかかる光景は、もう25、26年続いてるわけで。
これこそが全日本。これこそが三冠戦。
2年くらい前までDDT闘うビアガーデンで福田洋となんとかストラップマッチをやってた宮原がすっかりすっかり大物に変わっててビックリした。
この2年間すごく努力したんだろうなあ。
宮原がよかった。身体が全然大きくなったし、動きに迷いがなくなったし、しっかりメリハリのあるプロレスをやれるようになっていた。
そしてそれを迎え撃つ潮崎の抜群の王者感。
潮崎にはまぶしいくらいの「エースの格」がついていた。
潮崎には全日本の選手にしては珍しく「華」もある。
なのに、どうしてこれしか観客がいないんだろう…と不思議な気持ちになる。
きっかけさえあれば棚橋弘至と肩を並べる存在になれる気がするのに。
今日はほどほどの試合が見れればいいや、と思って来た。
前に見に行ったときに武藤や小島がやってたのはそういう三冠戦だったからだ。
でも今日、潮崎と宮原がやってた試合はまったく違った。
一言で言えば、90年代に三沢や川田、小橋が武道館でやってたような試合。
相手に勝つために極限まで身を削り、さらにその上を行こうとするプロレス。
終盤、潮崎がショートレンジのラリアットを打ったとき、宮原の身体がぶっ飛んでいった。
あ、こらダメだ…と思ったカバーを、3カウント直前で宮原は肩を上げる。
肩を上げるけれど、宮原の生体反応は極めて薄い。
そこに潮崎がゴーフラッシャーというブレーンバスターの要領で担いでから首を抑え込む大技を出す。潮崎のフィニッシュ技だ。
今度こそ…と思ったカウント3直前で再び宮原は肩を浮かす。
返したところで、宮原はもう動けない。
さらにひどい技を受けるだけだ。
でも返す。
なぜ返すのか。
それは「観客の想像以上を見せる」のが三冠戦の絶対定義だったからだ。
宮原も潮崎もボロボロになりながらその定義を守ろうとする。
会場が超満員の日本武道館でなくガラガラの後楽園ホールであっても、潮崎と宮原は「三冠戦というブランドに対しての責任」を守ろうとしていた。自分の身を差し出して。
そこに胸を打たれた。
90年代後半、友達と遊びの日程を合わせる時に「あ、その日は全日の三冠戦があるから無理だ」と言ったらプロレスを見てない友達からはブーブー言われたけど、唯一プロレスを見ていた友達からは「あー三冠戦なら仕方ない」と許された。
名前こそ同じでも、もう今の全日本は昔の全日本とは別の団体だ。
ずっとそう思ってた。
でも違った。
三冠戦はやっぱり三冠戦だった。
あのころ、私たちが見ていた三冠戦は2015年にまだあった。
全日本は粗い。
新日本やDDTに比べると洗練されてない部分は多い。
けど、ここぞというときには他のどこにもない試合をする。
やっぱり年に一度ぐらいは三冠戦を見ようと思った。
今日は本当に行って良かった。
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