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オーダーメイド小説0001【トンネルを抜けたら】


 僕は、夢をみているのだろうか。
目の前には、見たこともない世界が広がっている。
七色の綺麗な花々、車より速く走る様々な動物たち。
そのどれもが、僕の心をウキウキさせてくれる。

 ただどうしても訳が分からないことがある。
隣りに座っている女の子は一体だれ?
頭には、とても珍しい七色の髪飾りをしている。
どうして僕はここにいるのだろうか?
落ち着いて、少しずつ思い出してみる。


 僕は、現在大学4年生。
夏休みを利用して、遠くまでドライブ旅行に1人で出かけた。せっかくだから、二つほど隣りの県まで足を伸ばそうと計画して、スーバーで大量の飲み物やお菓子を買い込んだ。このあたりは、まだまだ子供だなと思ってしまう。この夏休みに免許をとったばかりで、長距離ドライブは生まれて初めてだから、凄くワクワクしている。
 そして、いざ出発して、初めて走る高速道路にもテンションが上がりつつ、あるトンネルに入っていくと、次第に辺りが白く輝き始め、そのあまりの明るさに目を瞑ってしまった!

 次に目を開けると、そこは高速道路ではなく、草原の中の道を走っていた。
「ここはどこだ?」
まるで北海道の小麦畑を彷彿させるような、見渡す限り草原である。その中に真っ直ぐに伸びる道を車を走らせている。

 ふいに、隣りに人の気配を感じ、左を向くと、そこには女の子が座っていた。僕はすごく驚いて
「えっ!き、君は誰?どうやって乗り込んだの?」
と聞くと、その女の子は少し微笑んで
「ふふふっ、まぁ細かいことは置いといて、しばらくドライブを楽しみましょ。私はユナって言うの。あなたのお名前は?」
僕は少し引き気味に、
「ぼ、僕はレイカ。大学4年生。君は?高校生?」
すると、ユナはきょとんとした顔をしながら、
「ダイガクセイ?コウコウセイ?よく分かんないけど、私の年は17才よ」
「僕より5才も年下だね」

しばらくの沈黙の後、ユナが
「レイカ君、運転上手だね。この村で一番うまいかも」
レイカは嬉しくなった。褒められたのが、だいぶ久しぶりだったからだ。

僕は気付けば、ユナに心を許して、自分の生い立ちや、初恋の話し、部活動の話しなど、何時間もおしゃべりをしていた。とても不思議な気分だ。ユナとはずっと昔からの親友のようにも思えた。小学生時代にイジメを経験してからは、母親以外には心を開くことが出来ないでいたが、どうやらユナのお陰で長く凍っていた心が少し溶けたように感じた。なんだか胸がドキドキしてきている。

 すると突然ユナが
「あっ!ここで止まって!」
と言うので、大きな木の近くで車を止めた。
ユナは大きな木の幹に手をかざした。すると、扉のような物が現れた。
「ここが私の家なの。どうぞ、入って。お茶ぐらい出すわ」
木の家の中に入ると、そこは想像の何倍もの広さで僕はビックリした。
すると、奥より長老のような方が姿を見せた。
「レイカ君、紹介するわ。私の祖父よ」
「初めまして、レイカと言います」
「うむ、ユナの祖父じゃ。君はどこの村出身じゃ?」
と祖父が聞いてる横で、突然ユナが倒れてしまった!
祖父はビックリして、
「こりゃいかん!いつもの発作よりひどい!!」
「おじいさん、ユナさんは何か病気なんですか?」
「うむ、難病なんじゃ。治すには、隣りの村にある秘境の森の、精霊のシズクが必要なんじゃ。じゃが、魔物が最近はびこっておってのぉ。この老いぼれには取りには行けん」
「おじいさん!!僕が、その精霊のシズクを取ってきます!ユナさんの病気を治したいんです!」
「その気持ちは大変嬉しいのじゃが、見たところ剣士でも魔法使いでもなさそうじゃ。大丈夫かのぉ?」
「そ、それは、分かりません。でも!このままユナさんをほかっていたら、死んじゃうかもしれないんですよね?」
「うむ、そうじゃ。この際、君に賭けてみようかのぉ。よしっ、そうと決まれば、ワシのかつての武器と防具を貸してやるのじゃ。これでなんとか取ってきてくれ!」
「分かりました!必ず精霊のシズクを取ってきます!」

 僕は早速、おじいさんから武器と防具を貸してもらい、車で隣り村を目指した。そして、途中にあるトンネルに入ると、突然!!目の前が真っ白になり、眩しくて目をつむってしまった。


 気が付くと、僕はベッドの上で寝ていた。
「レイカ!気が付いたのか?じっちゃんじゃ、分かるか?」
横を見ると、じっちゃんがいる。
「あれっ?ここは、、、病院?僕の車は?」
「うむ、1ヶ月以上眠ったままじゃったからのぉ、仕方がない。記憶喪失の可能性もあるからのぉ」
「じっちゃん!僕は、1ヶ月も寝てたの?どうして?全然覚えてないよ!!」
「うむ、最初から説明するのじゃ。レイカは、トンネルの中で大型トラックと正面衝突を起こしたんじゃ。警察から連絡が来たときは死んだかと思ったぞ!」
「じ、事故?僕は事故を起こしてしまったの?じゃあ、、、あれは、、、全部夢?」
「まぁ、1ヶ月も昏睡状態じゃったからのぉ。夢の1つも見るわのぉ」

そこへ、ドアのノックがして、おばあちゃんが入ってきた。
「あらあら、レイカ、ようやく目を覚ましたんだね。良かったね!」
「うん、おばあちゃんまで心配かけてごめんね。今、じっちゃんから事故のこと聞いてたんだよ。って、あれっ?!おばあちゃん、その七色の髪飾りは?」
「あぁ、これね、私が50年も前に作ったものよ。だから、世界に1つだけよ。それがどうしたの?」
「夢で、その七色の髪飾りをした女の子と会ったんだ!」
「へぇ、そうかい。珍しいこともあるもんだ。久しぶりに付けてるから、レイカに見せるのは初めてだったからね」
「おばあちゃん、ちなみに聞くんだけど、下の名前って何?」

「珍しいこと聞くね。私の名前は、、、ユナよ」


【終わり】

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