師と二人の弟子

今回はカルド博士と、二人の弟子プロスペラとベルメリア、3人の魔女とその思想の違いについて、わかっている限りの情報で探ってみよう

カルド博士の思想

博士は「赤子が衣服をまとうように」という思想で、研究していたガンド医療も「人体の置き換え」ではあるが、プロモーションビデオで見せられた映像やなんかでは「丸ごと義体にしてそこに意識を移し替える」という印象に、当初は見えていた

ところが、今回まさにそれをやったように見えるプロスペラのやり方にベルメリアは恐れ、拒否感を示していた
更にはベルメリア自身の強化人士、この設計思想も博士自らが決して認めず許そうとはしなかった

ベルメリアが何をやろうとしたかは後に書いていくとして、二人ともがガンダムを通じて、或いはガンダムを作ること、存在を「肯定」するものであり、カルド博士は「こんな兵器じゃなくてね」と否定するものだった

ここからと「赤子が衣服を『まとう』ように」という表現から、カルド博士の思想は「あくまでも人が人として生きる」ことであろう、と思う

これは他ならぬエルノラ自身の体が示している。右手が義手で、プロローグの映像見るにオルコットと同じくらい義体に置き換えられていると思われ、審問会の言葉やシャディクの言葉からも「半身を持っていかれた」は、あながち比喩表現ではないのだろう
エルノラ自身も「これがなければとっくに死んでいた」と言っていたし

博士の思想がもし「ガンドという肉体に人を移す」なのであるなら、少女の頃から長く一緒に居るエルノラの全身を義体化しないのは何故か、という疑問が出てくるし、見せてないだけで実は全身義体化というのも、エリクトを産んでいることで否定されているだろう

プロスペラ(エルノラ)の思想

思想というほどのものか。彼女の場合、ヴァナディース事変で強制的に目覚めさせられた人なので、元々ガンドで何したい、といった思想ありきで動いているわけではなく、エリクトを失いかけて何とかするためになりふり構わず、ということだろう
その点はプロローグから一貫してるよね、エリクトを乗せてルブリスで戦場に、夫の所に向かったけど、戦闘も人殺しもしたことがなくて何の覚悟も決まらず、ただ感情のままに動いてしまい、結果娘を危険にさらすわ、夫はそれ庇って死ぬわ、その上で逃げ出すという最悪の結果に

話を戻して
プロスペラがガンド、もといガンダムに対し求めるのは「娘の精神をガンダムに移して生き永らえさせる」事の一点のみ
先に上げたカルド博士の思想に反する、だからこそベルメリアも驚愕し拒否反応を示したのだろう
「人が人としてでなくモビルスーツ、或いはパーメットとして生きる」であり、そうしてでも生きてほしい、以前から思っている「逃げれば1つ、進めば2つなら、逃げて得た1つを必死になって守ろうとするんじゃないか」を実践した人ではないか、という感じになってきた

ここで重要なのは、あくまでプロスペラはそれを「娘のために」やっているのであって、人類に適応しようとか、この成果で世間に認められようとも儲けようとも、知的探求心の満足のためでもない点
そこだけは掬ってやってほしい

ベルメリアの思想

ここに来て見えてきたベルメリアの思想。むずかいしい用語、かつ具体的な内容に触れられていないから詳細は不明ながらも「データストーム耐性のある『中枢神経を使用する』拡張神経理論」

中枢神経とは「脳と脊髄」部分、それを使用した「拡張神経理論」拡張神経理論は多分パーメットの「身体拡張」と似通ったもの、どう違うのかまではこの言葉だけで分かった!というのは功名に走る考察系動画の釣りタイトルと同じ

詳しくは不明なものの「身体を拡張する」ガンドフォーマットと「拡張神経理論」は別物、それはカルド博士に否定されたこと、ベルメリアが「あの人たちの『真似事』がしたかった」と表現したこと、16話最後で「ファラクトとは全然違う」と5号が言ったこと「あなたには扱えないわ」とベルメリアが言ったこと、さらに「できない」といったこと

これらから「ベルメリアが作った『ガンダム』ファラクトは、ヴァナディース製ガンダムとは設計思想からして違う別物」なのだと思う
その証拠にシェルユニット形状が全く違う、名前にも「ルブリス」が入っていない

うちでさんざん使いまわしている画像

出自、というか設計思想がそもそも違い、ファラクトは「強化人士という技術ありき」で組み立てた別系統の機構なため、ヴァナディース製ガンダム「ルブリス」の進化系であるエアリアルは自分の知る技術とは全く別、だから協力は「できない」と口にしたのだろう、協力「したくない」のではなく「できない」自分とプロスペラの技術のあまりの違いに打ちひしがれて

強化人士ありき、と考えると、ファラクトは強化人士の増幅した能力で動かすサイコミュシステム的な立ち位置かもしれない、類似した発光部分を持つグラスレーのモビルスーツは、全部有線式で操作できる有線式サイコミュに似た兵装を持っている

ベルメリアの理論の詳細は不明だけど、カルド博士に否定されたこと、脳神経関係であることから「人をやめて脳だけで生きる」に近い思想なんじゃないだろうか

いずれにせよ思想としてカルド博士とは相容れないものだったことは明言された、これは大きい
それとその事から「師に否定されたけどやりたかったからやった」ことであり、倫理にもとることだと自覚しつつ知的探求を止められなかった業の深さも示された

3人の思想の相違点

  • カルド博士「人が人であることをを第一に、そのための身体補助や拡張であって、人という領域を超えることは考えていない」

  • プロスペラ「娘を生かすためなら領域だろうが侵す」

  • ベルメリア「人類を越えられる可能性を探求したかった」

現状受けている印象はこんな感じ。3人とも「兵器としてのガンダム」には否定的であろうことは伺える、カルド博士もやむなくだし、ベルメリアもペイルの命令で同じく、プロスペラも武装させているが、あれも「過酷な環境にさらすとパーメットスコアが上がる」ことを多分エリクトを通じて知ったので、そのためにやったことで人殺しの道具にしたいわけではないだろう

裏切者はベルメリア?

こう書いてきて思ったのだが、ベルメリアがプロローグのヴァナディース襲撃を手引きした「裏切り者の魔女」なんじゃないか?
魔女裁判の歴史を少しでも知れば、そこに他の魔女を密告する悪しき慣習があったことはすぐわかる

プロローグのニュースでオックスアースの代表と握手をしているヴァナディース代表がカルド博士ではないことで、かなり初期からヴァナディース自体が一枚岩ではないことが示されていた

であるなら、カルド博士の思想だけが至上でそれ以外の異端は認められず研究もできない、というのは考えにくい
その傍流でベルメリアが細々と研究を続けていたような気がするのだが、その辺がまだ伏せられていて推測の域にもなかなか至れない

どちらにせよベルメリアは「魔女なんて言い方はやめて」と、珍しく強い否定を見せていることからも、魔女というレッテルに対して強いトラウマを持っていることが伺える
これに対しプロスペラは「魔女はもう一人いたってわけね」と実に軽く使っていることからも、自分がやっている事への自覚と覚悟が見える

ベルメリアが博士に止められ自分の研究がまともに進められなかった場合、その研究やデータを手に入れて自分の研究がやりたかったとする
であればそのためにヴァナディース襲撃の手引きをやった、直接乗り込んでやったのか、協力しただけかは不明だが、彼女にしてみれば研究資料が欲しくてやったのにフォールクヴァングごと全て燃やされ、裏切りの報酬として命だけは助かった

そう考えれば、何もしていないヴァナディースの仲間を裏切ったのは自分なのに「魔女」と言われ蔑まされるのは自分ではなく博士たち
だったらベルメリアにとってはとても身につまされる言葉だろう

また先ほど挙げたファラクトのシェルユニットの画像のように、グラスレーもまた禁忌の技術かつオックスアースの企業秘密であろうガンドフォーマットを停止させる「アンチドート」を開発しているが、こちらも当然ガンドフォーマットとその仕組み自体を熟知しないと作れない
つまり、そこに手を貸した「魔女」がいた可能性が高い

またしても使いまわし

こちらまでベルメリアであったかは疑わしい、アンチドート開発に至れるまでガンドフォーマットを熟知しているなら、いくらカルド博士の研究に直接携われなかったにしても、設計思想自体がそもそも違うファラクトを作るのではなくルブリスタイプを参考にするんじゃないのか、という疑問が出る
あと時系列的に相当早くから裏切っている、すると今度はフォールクヴァングへの手引きができたかどうかの方が怪しくなる

いずれにせよベルメリアが思ったより研究本位な人間で、人の心なく4号や5号に接しているペイルCEOと似た者同士であったことだけははっきりと描かれてしまった

強化人士の正体は

今回の趣旨からは外れるおまけ
ベルメリアの提唱した「拡張神経理論」から、エアリアルが見せたデータストームを利用した超密度情報体系、絵で言うとエアリアルが展開するパーメットのドーム、脳のニューロンのようなあの場を、パーメットそのものではなくそれに耐性のある脳を使って行おう、というものではないか

それぞれのビットをつなぐネットワーク、これを人体(脳)で

15話までは5号が4号の台詞を意識した言い回しをし、これひょっとして5号と見せかけて4号なんじゃ?と思わせる場面が多くあった
特にパーメットスコアを上げずに戦った場面、既に肉体が限界を迎えかけていた4号にはできないことだったので避け続けた、そう思わされた

ところが、16話でエアリアルに搭乗した際パーメットのあざが出現、パーメットスコアを上げたことが発覚し、エリクトらしき存在に更にデータストームを引き起こされた(スコアを上げられた?)描写もあった
もし4号ならあの時点で死んでいる

更にはベルメリアに暴行する、CEOに報告するなど4号の優しい性格とは違うニューゲン言うところの「性格の悪さ」が出ていた

であるにもかかわらず4号のことを、それも相当パーソナルな情報を知っていて「君の家族はいただくよ」という風に、4号の使ったフレーズを多用することで「つながり」を示している

そのつながりは4人のCEOにも共通していて、5号がスレッタに対してどう接したか、ランブルリングでの戦闘が本気でなかったと言うなど、盗聴や盗撮といった諜報の可能性もあるが「それ以上」の情報源があるのではないか

思えばプラントクエタにも「謎のコンテナ」を運び込んで、外の戦闘を直接観察したのではないと知り得ないような情報を、混乱したクエタの通信妨害が解除された直後に送ってきている

ベルメリアが持ち込んだ謎のコンテナ、脳缶入りそうなサイズ…

これに関して「あれは時系列が進んで情報を掴んだ後だからだ」とする説はある。ただ、そちらだとしてその証拠が何一つないことに変わりはない
つまるところどちらの説もある「重ね合わせ」

これらの点から、強化人士は中枢神経どうしをネットワーク接続する「人間ガンビット」のようなものではないか、という疑いを持った

そうなれば4号と5号のように、ある程度ネットワークで情報が共有されることに説明がつくし、5号が4号とは別人でデータストームのダメージ蓄積がまだだから、CEOズの5号への無茶ぶりも「まだできるやろ」で片付く話になる(どっちだろうが危険なので最低発言に変わりはない)

そしてベルメリアの「決闘のデータをフィードバックさせる選択肢だって」という言葉、これが完全に文字通り「4号の情報を5号に移し替える」作業でしかない、という響きになってくる
こちらも最低だが、今回露見したベルメリアの正体の片鱗、そこからの推測が当たっていれば何ら不思議はない言動だ

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