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農業に欠かせない生態系と土壌生物を理解しよう

農業を理解するうえで欠かせない、農業を取り巻く環境(生態系)、とくに農地に棲息する生きものの基本的な概念を紹介します。


生態系(エコシステム)とは

生物群集とそれを取り巻く非生物的環境(無機的環境)をひとまとめにして、物質の循環やエネルギーの流れに注目して一つの系(システム)としてみなしたときに使われる概念です。したがって、生態系のなかには、動植物だけでなく、大気、水、土壌なども含まれます(図)。

図 陸上生態系の構成要素(北沢(1973)に加筆)

あらゆる生きものは、森林、草地、農地などさまざまな生態系のなかで、そのはたらきから生産者、消費者、分解者に大別されます。
生産者とは、太陽の光エネルギーを使って炭水化物やタンパク質など、無機物から有機物をつくる植物や一部の微生物をいいます。消費者は、生産者が合成した有機物を食べて生きている生きものをいいます。
植物を食べる動物を一次消費者(植食者、害虫)、動物を食べる動物を二次、三次(高次)消費者(捕食者、天敵)と呼びます。そして、植物や動物の遺体を分解するのが、分解者です。

土壌生物とは

土のなかで棲息している生きものは、「土壌生物」と呼ばれています。土壌生物には大きく微生物と動物の2つのグループに分けられます。
微生物には、バクテリア(細菌類)やカビ(菌類)などがいます。土のなかで生息している動物、すなわち土壌動物は、ミミズ、ヤスデ、ムカデ、クモ、ダンゴムシなど比較的よく知られている動物、ササラダニ、トビムシなどあまり知られていない動物、そしてまだ名前すら付けられていない動物までさまざまです。これらの動物は森林、草原など植物が生えているところの落ち葉や枯れ草の下には多くみられますが、畑地や裸地などではほとんどみられません。しかし、化学肥料や農薬を使っていない有機農業を実施している畑では、多種多様な動物がたくさんみられます。

土壌生物のはたらきと作物(植物)の生育との関連を通して、化学肥料や農薬を必要としない有機農業のしくみを紹介していきます。

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