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毒親育ち視点で見るジャンケットバンク ピーキー・ピッグ・パレス 思いやりに目覚めた村雨編

思いやりに目覚めた村雨

 ブタ3体を天堂に奪われ、酸素濃度が16,5%となった村雨の小部屋。ヨガは始めた(が始めたばかりだろう)医者の不養生な村雨の体は、幻覚を見る位に弱っていた。
 カルテやレントゲンの幻覚から、カルテに記載されていない筈の患者の情報。裏を返せば、デッカイハスキーについて話される程に「患者から警戒はされていない」上に、「治療に関係無さそうな話までちゃんと聞いて覚えている村雨」は根が優しい説が浮上した。

 「いちいち覚えていない」だの「あなたたちは病気なのだから」と患者の幻覚達に返答する村雨に対して、問い掛けてくる幻覚兄貴。点滴装備で病室のベッドに横たわりながらも、可愛い弟に手術を頼もうとして「物を知らん男」扱いされる兄貴。それでも、お兄ちゃんムーブをかましてくれる兄貴。弟を信頼し、甘やかし、家族を大事にしている兄貴。そして、コストや労力を喜んで他人(配偶者も血は繋がっていないが戸籍上の身内である)差し出す兄貴へ向けた「わけがわからない」を挟んで、忘れていた意志を思い出す村雨。

 沢山のカルテをメスで切り裂いた先には、笑顔を浮かべる患者達の姿。病気を治して貰ったら医者には感謝するしかないが、笑顔を向けてくれるとなると、ハラスメント的なことを村雨はしなかったのだろう。或いは、口は悪いが、人格までは否定しなかった系だろうか。
 村雨の趣味は手術だけに、そののスキルは高いとは思っていた。だが、患者に高圧的な態度を取るとこもなく、説明を端折ることもない真面目な医者をやっている説が浮上するじゃないか。

 だが、叶から「思いやりに目覚めちゃった」と言われた辺り、村雨には思いやりには欠けていたようだ。ただ、思いやりに目覚めた時の表情は、むしろ悪役だ。ところで、本業ではちゃんと問診はやっていたんだろうな? 問診をしない医者に、あんな笑顔は向けられないし、雑談もしてこないよな? とも思うのだが。

 何にせよ、思いやりに目覚めた村雨には、敵が人間に見えるようになった。そして、敵の弱点も見えるようになった。ついでに、神の策略も理解したようだ。理解された天堂もニコニコしている。

反撃の医者

 酸素不足で幻覚を見た村雨は、その中で天堂の言う「神の声」を聞いた。そして、自らの親番で、反撃の一手を漆原に浴びせる。

 村雨と天堂は共にオオカミのカードを、牙頭はレンガの家のカードを、漆原はオオカミのカードを選択。そして、ここで「親番から攻撃先を指定」「可能であればオオカミは必ず攻撃先を指定しなければならない」「既に他のオオカミが狙っているカードは指定不可」「攻撃先として指定出来るカードが無い場合、オオカミの憤怒が発動する」のルールが意味を持つことになる。

 この罠を宇佐美班が発動させるには、村雨が親番であることが必須。何故なら、オオカミのカード3枚とレンガの家が場に出ていたとしても、親番とその次にカードを出すギャンブラーが同じ班で無ければ「攻撃先を互いのオオカミに指定することを確定出来ない」からだ。オオカミが3枚場に出されたとしても、三つ巴のように攻撃先を指定すればオオカミの憤怒は発動しない。だからこそ、村雨が親番の時に仕掛けることが重要だった。そして、その為に、天堂は村雨に「神の声」を聞かせる必要があった。

 宇佐美班のオオカミが、ブタを奪うことはなかった。しかし、オオカミの憤怒を発動させ、漆原のブタを2体減らしたことで酸素濃度を一気に3%低下させる。それだけでは、漆原も耐えることが出来ただろう。だが、思いやりに目覚めた村雨は、これまでとは違っていた。オロオロしていた姿は消え、忘れていた意志を取り戻した村雨の姿。それは、漆原の判断力を低下させ、弱気にさせるには充分だった。

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