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わたしが出町座に行った日 2017/12/30

非常事態宣言にともない4月8日ごろから大阪の映画館が休館されはじめて、18日には京都の映画館が(わたしいつも行く映画館さんすべてが)休館という状況になりました。そこから約一か月が経ちます。一か月。一か月のあいだ、映画館で映画を観れていない。配信サービスは充実していて、ありがたいことに(これはほんとうに今までの文化の蓄積があることと、関係者の方々が「いまだからこそ」と工夫してコンテンツを提供しようとされていること、生存戦略として踏ん張っておられるゆえだと思うので、ありがたさしかない)たくさん映画は観れますが、でもやっぱり映画館に行きたい。

そう思っていたタイミングで、出町座さんから(映画の上映はお休みされているはずの出町座さんから!)「5月」のリーフレットが届きました。

リーフレット送付は出町座さんの「会員特典」で、わたしは遠方に住んでいるわけでもないのに郵送してもらうのは申し訳がないなといつも感じつつ、でも仕事帰り郵便受けに封筒が入っていると「あっ、やったー!」と思うし、そして夜中に「来月は何を観ようかな」と上映スケジュールと仕事のシフト表をながめながら予定を組むのが毎月の楽しみだったのだなと(いまさらの気づき)

「5月」のリーフレットの内容は、「仮設の映画館」のこと、5月をむかえてのお便り、そして「今後の上映予定作品」のお知らせ、でした。

「上映予定」の作品で楽しみなのは、ポン・ジュノ監督特集に、時をかける少女、街の上で、レ・ミゼラブル、ほかは何を観ようかなこれも観たいなと、数か月まえと変わりなく、わたしはわたしの観たい映画について考えられていることにとてもほっとしました。

上映はお休みされているけれど、「ここにいますよ」と声をかけてもらったようで、ほんとうにほんとうに嬉しかったので、今日はわたしが出町座さんに初めて行った日のことなどを書こうと思います。

◆2017年12月30日

ホロウ・クラウンの『リチャード2世』がわたしの「初」出町座さん映画でした。「京のお正月には、シェイクスピアがよく似合う」という謎のキャッチフレーズに「どういうことなのか???」と思いながら観に行った記憶があります。

ホロウ・クラウン、俳優さんと演出の豪華さに圧倒されますが、わたしはそこに生きている”人間”に完全に魅せられてしまい「シェイクスピアがこれを書いてから500年以上経過しているが、はたして”人間”は500年経って、変わったのか……? 変わってないのでは……?」と蕎麦を食べながら考えたりした2017年年末でした。英国BBCによる本気の大河ドラマという感じなので「シェイクスピアは難しそう」という方にこそ観て欲しいホロウ・クラウン。ホロウ・クラウンはいいぞ。

ホロウ・クラウンは全7作なので、年末年始はオープンしたての出町座さんに通いまくるしかなく……(なんせ全7作品ある……)

お正月の出町桝形商店街の空気をおぼえています。なぜか写真も撮っていました。見上げたら「今年も元気だ」の"ことば"がでっかく掲げられており、わたしはたぶんそのとき「元気でいよう、今日も元気だ」とうれしくなったんだろうなと思います。具体的な出来事は思い出せないのに、感情は残っています。不思議です。

そんなお正月以降、わたしは出町座さんで何度も映画を観て、CAVA BOOKSさんで本を買い、出町座のソコさんでコーヒーを飲み(出町座さんには本屋「CAVA BOOKS」さんと、カフェ「出町座のソコ」さんがはいっています。映画関連の書籍は買えるしコラボメニューは食べられるしで世界観というか愛がすごい)商店街でもよく買い物をするようになり、寄り道のように映画を観て、あるいは映画のついでに寄り道をし、生活をしていました。生活のなかに、映画館がありました。当たり前のように。その当たり前がいま、「当たり前」でないこと、ここにこうして書きながら「つらい」と感じています。

つらい雰囲気になってしまいました。きりかえて、今できることのお話をします。出町座さんでは未来で使える「出町座未来券」を発行されていて(現在、1300人以上の方が応援されているようです。1300人!)わたしも申し込みました。自分がはじめて出町座に行った日のことを思い出すと同時に、「出町座にはじめて来ました」という方が、これからどんどん増えていくのだろうなと、未来を想像します。わたしも、ぜったいぜったい、行くので。未来で。

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