#7 「ジャングルを流れる夢の河」
旅行中に立ち寄ったその国の、その街の、その美術館には、世界じゅうの楽器があつめられていた。モーツァルトの時代の古いピアノ、吟遊詩人の竪琴、鳥の鳴き声をそっくりに真似ることのできる笛、絶滅してしまった珍しい動物の革を張った太鼓、中に水が入っていて、傾けると熱帯雨林の雨の音がする筒状の楽器。あらゆる楽器が並ぶ館のなかは、物音ひとつしなかった。音色を内に秘めたまま、楽器たちは超然と黙っている。楽器のまえには説明書きのプレートとヘッドフォンがついていて、音符のマークのついた白い四