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坐忘の境地(不動智)

孔子の弟子の中でいちばん優秀で大好きなのは顔回です。彼は
聴くことの達人です。そして孔子からも最もかわいがられました。

そんな孔子と顔回との逸話をまとめたのが荘子です。孔子と顔回の
坐忘問答で、最終的にたどり着いた境地が「坐忘」でした。

※坐忘とは、
五体から力を抜き去り、一切の感覚をなくして、 身も心も虚になった
状態。我を忘れる虚心、無心の境地です。

道と一体化する坐忘の境地には容易にたどり着けないものです。

砕けて言うと、脳のキャパシティは決まっているのでくだらない
こと忘れてしまえ、つまらないとこを覚えていると脳のスペースを
占有してしまい無駄になるということ。

ストレス社会で鬱になる人が増えていますが、うつ状態を克服する
コツは上手に忘れることだとストレスを研究している人も言って
います。

坐忘の境地は、後に沢庵和尚が唱えた不動智という言葉に近いものです。
剣の道に通じるものがあり、心が四方八方に自由に動きながらひとつ
のものや一つのことにとらわれない状態です。かんたんに言って
しまうと雑念を払うということ。

剣の道だけでなく、この境地は処世に応用できます。
日本のソニーが世界的企業に躍進した秘訣はこの境地にあるとある
経営評論家が喝破しました。

既成の固定観念にとらわれず、虚心に流動的な情勢に対処し、そこ
から経営目標や経営方針を引き出すことができたから世界的企業に
急成長できました。

坐忘の境地(不動智)を経営理念に応用して成功したケースですが、
個人においてもまったく同じことで、心を空っぽにしておくことで
それだけ新しい状況に対する判断能力が養われます。

大きな壁にぶつかってもうまく状況を回避して方向転換することが
できます。一本調子ではない曲がりくねった現代社会を生き抜く柔軟な
生き方ができます。

逆境を生き抜く知恵として起ったことは起こったこととして虚心坦懐に
受けとめ、反省しながらそこから学んで、次に生かすために忘れてしまう
ことが、結局成功への道しるべになるのでしょう。

いつまでたっても過去の失敗や過ちにこだわっていると時間がもったい
ない。悔やんでいるよりも次にどんな対処をするべきかというところに
心を傾けないといけません。

「言うのはやさしいが行なうのはむずしい」からこそ、人は悩み多き人生
を歩み続けるのでしょう。


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