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「感謝する」は、単に「ありがとう」と言うことではありません。

昔、営業成績がひどくて何とかしたいと悩んでいた時に読んだ本の冒頭に「いちばん大切なのは感謝することです」とあったのを覚えています。当時は「感謝することで営業成績がアップする」という理屈に具体的なイメージが湧かず、ただ感謝することがいいことだとは思っていたので、「なぜだろう?」とずっと疑問でした。

「感謝する」と言われて、まず思い浮かぶのは、「良くしてくれた相手に『ありがとう』を伝える」ということだと思います。「ありがとう」はマジックワードと呼ばれ、会話の中で多用してもあまりくどくならないため、営業の世界では特に重宝されています。しかし、「ありがとう」と言うことが「感謝すること」なのでしょうか。私はそれだけではないと思います。

「ありがとう」と言う、を意味するのは、「感謝」の「謝」の部分です。「謝辞」の「謝」。「お礼を言う」ということですね。人間として、きちんとお礼を言葉にできるというのは大切な資質の一つではないかと思います。しかし、お礼を言われても、いまひとつぴんと来ない場面があるのではないでしょうか。営業マンの愛想だけのお礼。「今、その商品は必要ないんですけど」「ありがとうございます!けれどお客様、今後は絶対必要になってきますよ!」「でも、今は必要ないから」「ありがとうございます!今後の参考に、一度お話しだけでもきいてみませんか?」もちろん、悪いことではありませんが、聞いているほうとしては、「ありがとう」の気持ちが全く伝わってきません。

ここで「感謝」の「感」の字が重要な意味を持ちます。「感謝することが大切だ」というのは、「(ありがたみを)感じ、それを言葉にして伝える」ということなのですね。感じなければ、結果として伝わらないわけです。つまり、「ありがとう」の気持ちを感じることがまず大切だ、ということです。「感じる」というのは言葉にするのとは違い、単純に「多用する」ことができません。

「そうはいっても、『ありがとう』を感じる場面なんて、そうそうないんじゃないの?」と言われそうです。「有り難い」から「ありがとう」なので、いつもあるのであれば「有り難い」にはならないというのは、確かにそうかもしれません。しかし、考えてみてください。普段、長く待たされる交差点の信号が「たまたま青だった」みたいなことは、「たまに」でもよくあることだと思います。「駅のホームに入った途端、乗りたい電車が来た」とか「昼の混雑時に入った飲食店で、たまたま帰るお客さんとタイミングが合ってすぐ座ることができた」とかそんな程度のことです。「いや、それは『ありがとう』ではなく『ラッキー』なんだよ。」そうですそうです。ラッキーなんです。その「ラッキー」を利用しない手はない、ということです。だって「ラッキー」って「有り難い」ってことですよね?

信号がたまたま青だったとき、「あ、ラッキー」くらいで済ませていたのを「お、信号が青だ、ありがたい」と思えるかどうかが重要なのです。これは訓練しないとできません。「ラッキー」と感じるのは簡単なので、それを意識して「ありがたい」に変えてみましょう。これが習慣化すれば、「ありがたみ」を感じる場面は飛躍的に増えるはずです。そこまでくれば、あとはそれを言葉にする習慣を身につければ完成です。お客様からの言葉に「ありがたみ」を感じ、反射的に「ありがとうございます!」と言葉に変えることができる営業マンは最強です。聴く姿勢になるお客様は必然的に増えるでしょう。同様に(これもよく言われますが)「すみません」を「ありがとう」に変えるのも有効だと思います。

また、日常的に「ありがたみ」を感じることができる人というのは、それだけで幸せです。「ありがたみ」を当然に感じてしまうと、相対的に人生の満足度は下がってしまいます。「信号は青なのが当たり前。赤なのは不幸」と考えるか「信号は普通は赤だから、青だったらありがたい」と考えるか、どちらが幸せなのかは述べるまでもありませんね。一度きりの人生、どうせなら幸せな時間を増やしたい。ぜひ「感謝する」技術を身につけましょう。

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