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ジャック・アマノの“アメリカ NOW” ワイルド・ウェストの旅のハイライト=ヘル・キャニオンに始まった荘厳なる景色の連続

 2回休んだワイルド・ウェスト・ツアーのつづきです。
 クレイジー・ホースを見た後は山の中のカスターという村へ。オレンジ色の光が差し込む夕暮れのタイミングで到着し、メインの通りはいい雰囲気になっていた。オープン・エアか、それに近いバーやレストランが何軒かあり、人々が和んでいた。マウント・ラシュモアの近くにあったキーストーンという街は観光地感全開だったけれど、こちらは実に長閑。ホテルも山小屋風な作りだった。

 翌朝から天気は下り坂。もうそろそろ東に戻り始めなくちゃいけない頃だし……と次なる目的地、ノース・ダコタ州ビスマークに向けて走り出した。マウント・ラシュモアの方へと元来た道を辿るんじゃ芸がないので、さらに西、それから北に向かうルートを採用。この判断が思いもよらぬ1日をスタートさせることになった。

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ヘル・キャニオン。険しい岩山と黒い燃えかすになった木々が造る不思議な景色

 30分も走らないうちに、道がくねくね曲がる山道になり、その後には山火事があったのか、道の両側の木々が燃えかすになっているところに出た。四大統領やクレイジー・ホースの彫像があった山とは土の質が違っていて、もっとボロボロと脆い感じ。「なんなんだ、これは……」と圧倒される風景。岩肌に黒くなったまま立っている木々が、異様。おどろおどろしい。ヘル・キャニオンと呼ばれている一帯なんだと道端のサインで知った。地獄谷か。行き交う車はほぼゼロだし、雲行きの怪しさも心細く感じさせる一因になっていた。

ヘル・キャニオンと呼ばれるだけあって、何か異様な雰囲気が漂っている(タイトル写真)

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時折雨が降る中で州境を越え、ワイオミング州入り

 雨が降り出し、ワイオミング州へと入った。ここも初めて来る州だ。サンダンスなんて、いかした名前の町を通ってインターステイト90へ。それで東に少し向かうと、またサウス・ダコタに戻った。短い訪問となったワイオミング、次はもっとゆっくり来よう。おそらく9月に。

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85号線で北上する。速く動く雲が、何かが起こりそう……と不安にさせる

 いま世間を騒がせているスタージスに到達する手前でフリーウェイを降り、US85号線で北上を開始した。すぐに360度、見渡す限り地平線という景色の中に。

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85号線の光景。あまりにも広大な牧草地が延々と続き、そこには膨大な数の牛が

一本道を淡々と走り続けた。たまにすれ違う車はいた。大型トレーラー、乗用車、そしてキャンパーも。しかし、追いついちゃう車や、追い抜いていく車はほぼなかった。この景色には、ラジオも音楽も合わない。車の風切音だけ聞きながら走り続けた。

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ビッグホーン・シープの標識が現れる。実際に見てみたかったな、天然のビッグホーン。遠目でいいんで

 US85のインパクトは強烈だった。自分がこれまでに走って来た中で最も印象的な道になった。氷河のカナディアン・ロッキーを二番に押し下げて。地図で見た時は、「ただただ真っ直ぐで退屈だろうな」と思ったが、全然そんなことはなかった。午前中のヘル・キャニオンと同じで、今にも嵐になりそうな雲の色や流れ、という天候が視覚的にも心理的にも大きな効果を発揮していたと思う。いずれにしても、あの景色のスケールは……。ことばがなかった。

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アメリカの広さは理解してるつもりだったが、ここまでのスケールの景色を見たことはなかった……85号線は全く単調などではない

 ここを馬に乗って、旅をしながら暮らしてたんだな、クレイジー・ホースたちは。とてつもなく広いエリアで営んでいた彼らの生活に想いを巡らす。

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西側の雲が黒い。「雹(ひょう)とか降ってこないよね?」なんて心配もしてしまった

今回のツアーでアメリカン・インディアンについて、もっと色々と知りたくなった。

以上 第25回終了


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