UNRWA職員のイスラエル奇襲攻撃関与疑惑について(ガザ危機メモ)

 国連パレスチナ難民救済事業機関(UNRWA)の職員が、ハマスによる10月7日のイスラエル奇襲攻撃に関与していたとの疑惑が浮上したのを受け、アメリカ、ドイツ、日本など10カ国以上が資金拠出の停止を決めた(1月29日時点)。
 
 一方、資金拠出の継続を表明したノルウェーのアイデ外相は28日、「この深刻な人道状況でUNRWAへの資金を削減することの影響の大きさを考えるべきだ。我々は何百万人もの人々を集団的に罰するべきではない」と訴えた。
 
 関与が指摘された職員は12人。一方、190万人以上が避難を強いられているガザ地区では200万人以上がUNRWAの支援に頼っている。12人と200万人!
 
 国連の緊急援助調整官のグリフィス事務次長(人道問題担当)は1月15日のCNNとのインタビューで、ガザ地区では「ものすごい速さで飢饉に襲われて」おり、うち40万人は実際に飢餓状態に陥っていると強調していた。この状況でUNRWAへの資金拠出が停止されれば、実際に餓死する住民が続出するだろう。
 
 国連のアルバネーゼ特別報告者(パレスチナ自治区の人権担当)は国際司法裁判所(ICJ)がイスラエルに人道支援物資の搬入を強化するよう仮処分命令を出したことに触れ、「停止の動きはジェノサイド条約上の義務違反に当たる可能性がある」と指摘している(共同)。
 
 ところで、錦田愛子・慶応大教授は、朝日新聞記事へのコメントで、「7年以上の長期にわたり経済封鎖が続くガザ地区内では、就業の機会はきわめて限られ、UNRWAはパレスチナ難民にとっての最大の雇用主」であり、「今回、襲撃への関与が指摘されたのは、(約1万3千人という)膨大な職員のうちの数名」であると指摘した後、ICJによるジェノサイドに関する予備判決が出されたこのタイミングで今回の告発がなされたことは、「国際世論でイスラエル批判が強まるタイミングを狙い、かねてより把握していた情報を公開した可能性も考えられる」と指摘している。そして、「実際に、前日まではジェノサイド裁判で盛り上がっていた欧米の国際世論は、この事件の報道で一気にハマース批判へと傾いた」ということだ。報道を冷静に見る必要がある。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?