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国連の原罪

 東京新聞が4月21日(日)「国際社会の重い責任」と題する社説を掲載したが、パレスチナ問題の根源を抉る、優れた論説だった。
 
 第2次大戦後、英国からパレスチナ問題を丸投げされた国連が1947年11月、人口で33%、土地の6%しか持たないユダヤ人にパレスチナ全土の56%を与える分割決議(国選総会決議181)を行ったことが現在に続くパレスチナ問題の根源にあるが、社説は、国連総会での投票に先立って行われた国連パレスチナ臨時委員会での議論を紹介している。臨時委員会には主流派の第1小委員会と非主流派の第2小委員会があり、主流派の2国家分割案が採択されるのだが、非主流派の第2小委員会は、「国連に多数派(アラブ側)住民の土地を取り上げ、少数派(ユダヤ側)に与える権限はな」く、「ユダヤ難民はその出身国が再定住に努力するか、国連加盟国が分担して引き受ける」ことが筋だという正論を主張し、もし分割案が通れば「わずかに残されたアラブ、ユダヤ両社会の友好、協力の可能性を破壊」し、「中東と世界の平和を脅かす」と警告していたが、その後の展開は非主流派の警告通りとなった。
 
 社説は、「一連の経緯には、植民地主義が根強く残る欧米中心の国際社会の身勝手さが透けて見えます」とも指摘しているが、現在の3分の1ほどの加盟国しかなく、先進国中心であった当時の国連には、早尾貴紀氏の指摘する植民地主義と人種主義の影響が色濃く残っていたということなのであろう。反ユダヤ主義の原罪を抱える欧州は、問題を外部(中東)へ押しつけることによって欧州内部でのユダヤ人問題の解決を図ろうとしたのだろう。そこに、シオニズムと共通する植民地主義と人種主義の痕跡を嗅ぎ取ることは容易である。
 
 ところで、この国連パレスチナ分割決議について、岡真理さんは『ガザとは何か』の中で次のように述べている。
 
<この分割案が総会にかけられる前、アドホック委員会がこれを子細に検討して、法的に違法である、国連憲章違反だと言っています。アラブ国家は経済的に持続不可能になる。何と言っても、ホロコーストはヨーロッパで起きた、ヨーロッパの犯罪です。その犯罪の代償を、パレスチナにヨーロッパのユダヤ人の国を創ることでパレスチナ人に支払わせるというのは、政治的に不正である。こんな分割は、仮に可決されたとしても機能しない、 “unpractical” (非現実的)だと断言しています。>
 
 しかし、事実は東京新聞社説の言う通り、このような主張をしたのは臨時委員会(アドホック委員会)の第2小委員会であって、この結論は臨時委員会で採択されず、採択されたのは第1小委員会が提案した2国家分割案であるから、第2小委員会の意見を臨時委員会の結論であるかのように言うのは正確ではない。細かいことのようだが、日本におけるパレスチナ問題の解説について圧倒的な影響力を持つ岡氏だけに、事実は正確に伝えてほしい。彼女の言論活動に深い敬意の念を抱いているからこその要望である。

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