ガザ情勢2024年3月

 イスラエルによるガザ虐殺が始まってすでに5カ月半。ニュース報道も減り、国際社会はどうか知らないが、日本社会の関心も低下しつつあるが、ガザの人道危機は一層深刻の度合いを増している。

 人間は数字ではなく、真の悲劇は数では伝えられないという当たり前の事実を踏まえたうえで、備忘録として現状の一端を書き止める。

 国連機関などのデータを使った報告書「総合的食糧安全保障レベル分類」によれば、ガザで飢餓に直面している人は3月中旬時点で人口の3割に当たる約68万人。このまま戦闘が続いた場合、7月までに人口の半分の約111万人が最も深刻な「フェーズ5(飢餓/壊滅的状況)」に陥り、約85万人が飢餓一歩手前の「フェーズ4(緊急)」、残る約27万人が「フェーズ3(危機)」になると予想される。この結果を受け、グテーレス国連事務総長は今月18日、「市民はゾッとするような状況に置かれている」と述べ、「イスラエル当局に対し、ガザ全域での人道物資の完全かつ自由なアクセス確保を求める」と呼びかけた。

 しかしガザへの食糧支援にはイスラエル軍の許可が必要で、国連世界食糧計画(WFP)が食糧支援の必要性を訴えてもイスラエル軍はなかなか許可を与えないためカール・スコウWFP副事務局長は、ガザの「現場からもたらされるのは、痛ましく、胸が張り裂けそうな絶望的な話ばかりです」と述べている。配給の食料を受け取るや否やその場に座り込んで缶詰の豆を食べ始める家族や、雑草を食いちぎる幼児もいるという。

 このようなガザで今やか細い「命綱」とも言える国連パレスチナ難民救済事業機関(UNRWA)に対して、日米を含む15か国以上が拠出金を停止しており、ガザ最南部のラファでは13日、UNRWAの食料配給センターがイスラエル軍の攻撃を受け、少なくともスタッフ1人が死亡、22人が負傷した。昨年10月7日以降、少なくとも165人のスタッフが死亡し、UNRWAが関与する学校など150以上の施設が攻撃を受け、こうした施設に避難していた400人以上が犠牲になったという。国連のデュジャリック報道官は13日、「これほど多くの国連機関のスタッフが犠牲になるのは前例がない」と述べた。

 前例がないのは国連機関に対する攻撃だけではない。「ガザでは子どもの栄養失調が急速に広がっており、前例のない水準に達している」とUNRWAは軽傷を鳴らしている。ガザ保健省の発表(18日)によれば、昨年10月以来、死者は3万1726人となり、子どもの死亡は1万3000人以上に上るという(ユニセフ、17日)。

 今回のイスラエルのジェノサイド作戦では、病院が標的になっていることも極めて特異な特徴となっている。イスラエル軍が18日に攻撃を再開したガザ北部のシファ病院では、電力供給の遮断により酸素吸入器が使えなくなるなどして21日までに患者13人が死亡した。AP通信によると、病院の敷地を軍の走行車両が取り囲み、狙撃兵が病院内に向かって発砲。「動くものは何でも撃ってくるため、医師も救急車も動けない」と話す避難者の声を伝えている。

 一方、イスラエルのネタニヤフ首相は17日、「どんな国際的な圧力も、この戦争のあらゆる目標を達成することを止めることはできない」と述べ、国際社会による非難を一切無視する姿勢を改めて強調した。

 

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