最高のリーダーは、チームの仕事をシンプルにする/著)阿比留眞二

ー感想ー
リーダーとは、仕事をシンプルにする力がある人、と言った内容の本だった。
本文に、ダメなリーダーの例があったが、まさしく前の自分を見るようだった。
自分は、プレイングマネジャーで、部下をマネジメントすることさえできなかった。人を育てることもできなかった。結果、チームを迷走させてしまい、自分も鬱になり会社を辞めざるを得なかった。
 この本を、もっと前に読んでおけば、今の自分とは違っていたのかと、後悔ばかり。翻って、今の自分だからこの本と出会えたのかもしれない。
人生って、不思議なことばかりだと、半世紀たって今更ながら思った。
 これからのセカンドキャリアを進めてる上で、アメリカの心理学者エドガー・シャイン氏が提唱する「3つの輪」で「好きなこと」✖️「得意なこと」で、考えてみようと思う。
とても、耳が痛い点、ばかりだったが、とても参考になった。

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<おび>
チームが変わる!
「選択と集中」マネジメント
優秀なリーダーとは、どのような存在でしょうか。
それは「仕事をシンプルにする力」がある人のことです。
この現代の複雑なビジネス環境の中で、
本当にやるべきことを見極め、仕事を絞り込み、
部下に明確な指示を与え、チームを成功に導く。
これができるリーダーが結果を出し続けるのです。

はじめに

あらゆる仕事を“単純明快”にするマネジメント法

 私は、花王株式会社で26年間、会社員として経験を積み、現在では「課題解決コンサルタント」として独立し、活動しています。
「課題解決」のコンサルティングとは、この複雑なビジネス環境において、多くの選択肢がある中から自分の課題を見つけ出す方法を提示することです。
 言い換えると、仕事をシンプル化し、自分がやるべきことを絞り込み、それを確実に実行して結果を出すーそのメソッドを指導しています。
 この「課題解決」のメソッドは、花王にいるときに私のチームが開発したものです。私は独立後、このメソッドに独自の改良を加えながら、官公庁から食品、印刷、IT、自動車、飲食‥.まで、さまざまな業界のリーダーたちを指導してきました。
 優秀なリーダーとは、カリスマ性がある人でも、特別な能力がある人でもありません。「自分や自分のチームの仕事をシンプルにする力」がある人のことです。
 この高度情報化時代において、いかに自分や自分のチームがやるべきことを厳選し、部下に明確な指示を与えてcっひームを成功に導くかーここが、優秀なリーダと、そうでないリーダーの最大の分岐点になります。
 なぜ、この考えに至ったのか、私のこれまでのキャリアに簡単に触れながら、ご紹介したいと思います。

 私は、花王では管理部門、販売部門、社員教育部門に配属され、さまざまな仕事を担当しました。このことは、会社の仕事全体を俯瞰してみる力を身につける貴重な経験になったと考えています。
 例えば、管理部門では、「お金の流れを管理、予測する力」が身につきましたし、販売部門では、「商品を売る力」「社外内の人とのコミュニケーションを円滑にする力」が身につきました。
 この二つの部門を経験したことにより、「人」「物」「お金」をどのように動かしていけばいいのかが、わかるようになりました。
 そして、その後、社員教育を担当する部門に配属されました。私たちのチームが特に力を入れることになったのが、「リーダーのためのマネジメントスキル」を教える研修です。
 そんなとき花王である事件が起こりました。 
 化粧品部門で行われていた、商品の押し込み販売という不正が発覚し、400億円分もの商品を引き取ることになったのです。どこかのメディアに知られたわけではありませんでしたが、当時の社長は、自発的にこれを開示しました。そして全国各地を回って聞き取り調査を行い、各部門のリーダーと協議して改善策を作るなど、大変な仕事をされました。
 このことは、マスコミでも大きく取り上げられましたので、ご存じの方もいらっしゃるかもしれません。
 このショッキングな事件で私は、トップや部門のリーダーの地位にある人は、重大な責任を担っていることに改めて気づかされました。
 現状維持のぬるま湯に浸かることなく、常に「課題意識」を強く持って仕事に取り組むーこれができないリーダーは、会社に大きな損害を与え、結果として、評価されない人間になってしまうのだ、と。
「課題意識」は、「問題意識」と似ているようで、違います。
 例えば、「会社の売上が下がっている」という事態が起こったとします。あなたが営業部のリーダーであれば、会社の売上が下がっているというのは、あなたや、あなたのチームにとっての「問題」でもありますが、あなたや、あなたのチーム「だけ」の問題ではありません。会社全体や各部門の問題でもあります
 一方で、「課題」とは、その会社全体の問題を解決するために、「会社」ではなく「自分」や「自分のチーム」がやるべきことです。つまり、あなたや、あなたのチームに特化された、解決すべき問題が「課題」なのです。
 リーダーは誰もが会社に対しての「問題意識」は持っています。しかし、では自分が何をすればいいのかという「課題意識」を持っているリーダーは、残念ながらそう多くありません。
 この「課題意識」を強く持ち、自分がやるべきことを常に明確にし、それを実行することにできる人だけが、一流のリーダーになれるー。
 そう考え、私たちの部門は試行錯誤を重ね、「課題解決のメソッド」を作り上げました。このメソッドは、今でも花王で使われています。

 このメソッドをベースに、本書では、私の独自の視点や切り口を加え、「リーダーのための仕事をシンプルにする方法」を紹介します。
「課題解決のメソッド」には7つのステップがあり、その解説自体は2章でご紹介していますが、このメソッドの根本的な考え方は、物事を「単純・明快」にし、仕事を合理的、効率的に進めるということであり、この本の内容全体に貫かれています。
(1)会社の「問題」と自分の「課題」を混同しない
(2)仕事は「より少なく、しかしよりよく」する
(3)常に「全体最適」を考えて部下を動かす
(4)「優先順位」だけでなく「劣後順位」も明確にする
(5)仕事を「やめる」のも、「すぐに」やる
(6)上司と部下の違いは「役割だけ」と心得る
(7)自分なりのシンプルな「仕事の原則」を築く
………これらのエッセンスは、リーダー1年生からベテランまで、チームのマネジメントや部下指導に悩む人たちに必ず役立つと信じています。

 今のビジネスの現場を見ていて思うのは、特にリーダー層の悩みは、とてつもなく大きく、深いものになっている、ということです。
 あまりにも多くの情報が氾濫し、世の中がめまぐるしく変化する中で、若いマネジャーは何をどうしたら良いのか分からず、多田目の前の仕事に忙殺されています。
 ベテランのマネジャーはマネジャーで、やはり忙しく、若いマネジャーの悩みを聞く余裕などなく、目先の利益を上げることだけに躍起になっている。
 つまり、「忙しさの連鎖」により、ただただ日々の業務をこなしているー。そのような状況があらゆる職場で起きているのです。
 この「忙しさの連鎖」から脱却するための本書のメソッドをぜひ、あなたの仕事に取り入れて見て下さい。
 驚くほど仕事が快適になります。日々の業務の効率性、生産性が上がります。チームワークがよくなります。そして、多くの成果を出すことができるようになるでしょう。

第1章 最高のリーダーの、仕事を「シンプル」にする力

ー会社の「問題」と、自分の「課題」を混同するな

(1)「リーダーの差」は、ここに出る

①できるリーダー:冷静に、巧みに周りの状況を把握しながら、「やるべきこ
           と」「やるべきでないこと」を的確に判断し、仕事を
           効率的、生産的に進めている
②できないリーダー:「あれも、これも…」とむやみに手を出す。
「仕事をシンプルにする力」があるかどうかが、できるリーダーと、できないリーダーの分岐点なのです。

(2)必要なのは、「捨てる力」

リーダーという地位にあるのなら、情報の要・不要の判断ができる力が不可欠なのです。

(3)人が「同時にできること」は、せいぜい3つ

 脳には「ワーキングメモリ」という機能があります。情報や記憶を一時的に保持して、なんらかの知的作業を実行するときに働きます。このワーキングメモリの容量は、おおよそ3つ、多くて4つと言われています。つまり、どんな人でも、「あれ」「これ」「それ」という3つ、多くてもう1つくらいしか物事を同時に処理しきれないのです。

(4)会社の「問題」と、自分の「課題」を混同するな

①「問題」ーあるべき理想の姿と現状の間に差が出現したときに起こります。
      (IOW 目標と現実の間のギャップが生まれているときに起こる)
    例)営業でいうと、売上目標と実績に差が生まれていれば、そこに
      「問題」が起こったということ
②「課題」ー問題を解決するために、「会社」ではなく「自分」がやるべきこと
      (IOW 自分個人にとって特定化された解決すべきこと)

(5)なぜ仕事が“複雑化”してしまうのか?

 会社の「問題」と、自分の「課題」を混同してしまうから。
例)あなたが、営業部のリーダーだとしたら、「売上が上がらない」というのは、もちろんあなたにとっての「問題」でもありますが、しかし、あなた“だけ“
の問題ではありません。会社全体や各部門の問題でもあるからです。 
 会社全体や各部門の「問題」でもある「売上が上がらない」を解決するために、リーダーとして自分は何をすべきかー。これを考えていくことで、自分の「課題」を特定し、仕事を簡潔・明快にしなければなりません。

(6)仕事を「絞り込む」のがリーダーの役目

 部下に曖昧な指示をださにために、リーダーは「仕事をシンプルにする力」を磨かなければなりません。そのためにリーダは、会社全体の「問題」を、自分と自分のチームが解決すべき「課題」に落とし込み、その課題をクリアするために、仕事を「絞り込む」必要があります。それがリーダーの役目なのです。

(7)リーダーの究極の「存在意義」

「常に会社全体の成長・成功に寄与するために存在している」

(8)部下に“無理難題”を押し付けない

 リーダーというのは、常に「会社全体」の成長・成功にきよるために存在しているのです。そして、「会社全体」のためにならない選択肢は捨てる。それが、リーダーとしての「仕事をシンプルにする力」を養う上での大前提となります。

(9)仕事は「より少なく、しかしより良く」する

 ドラッカーが語った「選択と集中」については、今やビジネスの大原則として誰もが知っていることでしょう。(IOW やるべきことを選択し、それに集中することでこそ、大きな成果を上げられる)

(10)できるリーダーは、やめるのも「すぐに」やる
(11)やらざるべきことは、絶対にやらない
(12)花王のシンプルな「仕事の5原則」

①「社会的有用性の原則」社会にとって、今後とも真に有用なものか
②「創造性の原則」自社の創造的技術、技能、アイデアが盛り込まれているか
③「パフォーマンス・バイ・コストの原則」コストパフォーマンスでどの企業の商品よりも優れているか
④「調査徹底の原則」あらゆる局面での消費者テストで、そのスクリーニングに耐えたか
⑤「流通適合化の原則」流通の場でその商品に関わる情報を消費者に伝達する能力があるか
ー中国事業は5原則の④と⑤に当てはならなかったので撤退した

(13)自分なりの「仕事の原則」を作る

「無理なこと、無駄なことをやらないためにはどうすれば良いか」を考えればいいのです。
例)ゴルフ初心者は、ボールを打つときに、力の入りすぎた不自然なスイングをしてしまいます。しかし、練習を重ね、「不自然さ」をそぎ落としていくことによって、理想的なフォームでボールを打つことができるようになります。
 不自然さの根底には、「無理」と「無駄」があります。この2つを取り除くための「仕事の原則」を作っていけばいいのです。
 例えば、無理な残業をしているとか、無駄な会議をしてるとか、それは自然の法則に反しているので、必ず何らかの問題が起こります。
「無理なこと、無駄なことをしていないか?」という視点を常に持ちましょう。
 この二つの視点があれば、物事の「不自然さ」に敏感になりますので、「この行動はしない、この選択肢はやめよう」という判断ができるようになり、自分の中に「仕事の原則」が作られていきます。
「仕事の原則」が自分の中にあれば、シンプルに考え、正しく判断・行動することができます。そして、そういうリーダーこそが結果を出すのです。

(14)「シンプル力」を磨く4つのポイント

①感情の波を小さくする
人は、感情に波があればあるほど、非論理的で複雑な思考、行動をしてしまうことが多くなります。特に怒りや嫉妬など、マイナス感情に振り回されるリーダーは、本当は捨てなければならない選択肢ー会社全体の成長・成功に寄与しない選択肢を選びとってしまいがちです。仕事は選択の連続です。目標達成までの道のりで何度も選択を迫られます。そのとき、感情の波が小さい人ほど、シンプルかつ合理的な判断ができるのです。
②立ち止まる
できるリーダーは、どんなに忙しくても、「仕事全体の進捗状況を確認するための時間」を確保します。そいて、自分達はいま、ゴールまでの道のりの、どのあたりにいるのか、無駄な動きをしていないか、仕事の効率的に進められているかを繰り返し何度もチエックします。
③長期的な視点を持つ
仕事をシンプルにする力」を磨くためには、「長期的な視点を持つ」ことが不可欠です。
 大きな結果は、長期的な視点で戦略を立てて、短期的な視点で戦術を遂行していくことで得られます。
 短期的視点で仕事をするのは、部下でもできます。目の前の仕事に全力を注いでいればいいわけですから。しかし、リーダーはそれではいけません。
「自分より上位の人の視点」で物事を見ることで、よりシンプルな、より大きな、より長期的な視点を持つことができます。
④社内の人間と戦わない
 リーダーは、常に会社全体の成長・成功に寄与するために存在しているのです。戦うべき相手は、「外」にいるのです。社内の「お隣さん」と張り合っているようでは、よきリーダーになれません。
<「シンプル力」を磨く4つのポイントまとめ>
 🙆‍♂️一流               🙅‍♂️二流
①感情をコントロールする        感情に振り回される
②確認のために立ち止まる        闇雲に突っ走る
③より大きく、より長期的な視点を持つ  目の前の仕事のみに全力を注ぐ
④他社のライバルと切磋琢磨する     社内の人間と権力闘争する

(15)仕事をシンプルにすると「やる気」も上がる

 リーダーが「仕事をシンプルにする力」を磨かなければならない大きな理由の一つは、「モチベーション」が断然高まるからです。
仕事をシンプルにする力」がないと、「やるべきこと」が明確にならず、「やらなくていいこと」「やるべきでないこと」に振り回されることになります。「やるべきこと」を明確にするには、会社全体の「問題」を、自分に特定化された「課題」に落とし込むことが重要だーということは述べましたが、これができないと、仕事が「自分事」にならないのです。仕事が「自分事」ではなく「他人事」では、やる気が出ないのも当然です。

(16)仕事が「自分事」になっているか?

 仕事は、「他人から与えられたもの(他人事)ではなく、自身で見つけたもの(自分事)」になって初めて、高いモチベーションを維持しながら取り組むことができます。目標を達成するために、高いモチベーションを維持しながら仕事に取り組み、結果を出していくことは、すべてのビジネスパーソンにとって大切なことでしょう。

(17)できるリーダーには「余裕」がある

 できるリーダーになるためには、仕事に「優先順位」をつけなければなりません。いうまでもなく、仕事には、優先順位が高いものと、低いものがあります。目の前の仕事をただこなしていくのでは、重要な仕事を後回しにすることになります。それでは、いつまで経ってもいい結果は出ません。
 リーダーの立場になると、多くの仕事が舞い込んできます。しかし、時間は有限です。「結果につながる仕事」を見極め、それ以外は捨てて、物事をシンプルに実行して行くことがリーダーには求められます。
 また、優先順位をしっかり決めて、「仕事を絞る」ことは、精神的な余裕も生みます。リーダーは、部下と一緒に目の前の仕事に忙殺されていてはいけません。仕事全体を俯瞰し、常に第三者的な視点から、「進捗状況はどうか」「今後もこの進め方で間違いないか」「何か落ち度はないか」「チームのメンバーのモチベーションは保てているか」「他部署との連携はうまくいっているか」と、考える時間を確保しなければなりません。
 このように、仕事全体を俯瞰して見ることは、「仕事をシンプルにする力」を発揮し、できるリーダーになるために不可欠なのです。

(18)うまくいかない時は「基本に立ち返る」

 基本に忠実に仕事を仕上げる、徹底して仕事の質を上げる。これは、リーダーの地位を得ると意外と忘れがちです。仕事をシンプル化し、成果を出すための一番の方法なのです。

第2章一流のリーダーの、「選択と集中」マネジメント

ー「やること」「やらないこと」の見極め方

(1)常に「全体最適」を考えよ

 一流のリーダーは、常に「全体最適」を考えながら物事を判断し、優先順位を決めます。一方、二流以下のリーダーは、知らず知らずのうちに「部分最適」の考え方で物事を判断し、優先順位を決めてしまうのです。
「部分最適」ー個々の業務を最適化すること
「全体最適」ー仕事全体の効率や生産性を最適化すること

(2)なぜ“ロス”が出てしまうのか

 部分最適で考えてしまうと、最高の効率を求めるはずが、さまざまなロスが出てしまうことになりかねません。このロスを出さないためには、仕事の優先順位は、やはり全体最適を考えながら決めていくことです。

(3)できるリーダーの「優先順位」の決め方

 リーダーは、常に全体最適で仕事を合理的に進めなけれbなりません。「全体最適」を考えることで、仕事の優先順位は変わってくるのです。

(4)「やらないことを先に決める」という発想法

 リーダーというのは、当然ですが、多くの仕事を抱えています。しかし、それでもなんとかこなし、結果を出さなければなりません。そこで、「優先順位」とは逆の考え方をする必要がある場面も出てきます。すなわち「劣後順位」です。
 仕事に「劣後順位」をつけて、あえて「やらないこと」を先に決める、という
選択をすることが、自分やチームの仕事をシンプルにするためには重要になってくる場合があります。では、「劣後順位」を決めるにはどうすればいいのでしょうか。
 まずは、抱えている仕事を全てノートに書き出し、その次に、その中で「やらなくていいもの」の順番を考えることです。そして、「劣後順位」の中で、やらなくても結果に大きな影響がないと思えるものを先延ばしにする、あるいは思い切ってやめてしまうのです。
 仕事では、先延ばししてもいいものや、あるいは、全くやらなくてもいいものも事実、存在します。その仕事を見極めるためにはどうすればいいのでしょうか。
①「部下に振れる仕事」を見極める
 リーダーは、仕事の量をなるべく減らすべきです。 なぜか。リーダーは、「人を動かす」というのが最も重要な仕事であるからです。そのためには、リーダーには、常に仕事全体を眺める時間的、精神的「余裕」がなければなりません。リーダーは、部下と一緒になって目の前の仕事に忙殺されてはいけないのです。リーダーと部下は、役割が違うのです。部下にもやれる仕事にリーダーが時間をかけすぎていては、チーム全体の動きを円滑にするという役割を果たせなくなります。
②「作業」をやめて「仕事」をする
 できるリーダーとは、「作業」ではなく、「仕事」をする人です。
「作業」ー会社で決められている、やらなければならない業務で、
     「誰がやっても同じ結果が出る仕事」
「仕事」ー自分にしかできないこと、自分だけがやるべきことです。
 リーダーは、チーム全体の方針を決定し、目標達成のためにチームのメンバーを効率的に、生産的に動かし、結果を出すのが使命(仕事)です。
「作業」は大切ではありますが、リーダーにとっては「仕事」の方が大切です。もの前にあるのが「作業」か「仕事」かで迷ったら、必ず「作業」を捨てて、あるいは誰かに任せて、「仕事」を選択しなければなりません。
 また、「劣後順位」を決めるためには、仕事全体の流れを把握しながら、「時間軸」も強くイメージすることです。これは、今やるべきことなのか、1週間後でもいいのか、1ヶ月先でもいいのか、といった「時間の軸」をよく見極めることです。全体最適を考えて「重要度が低い」仕事は切り捨てて、「重要度が高い」仕事に労力も、時間も注ぐのです。

(5)仕事の「緊急度」に騙されるな

 さて、「リーダーは重要度が高い仕事に注力せよ」と言いましたが、ここで注意したいのは、「緊急度の高い仕事」が、必ずしも「重要度の高い仕事」とは限らない、ということです。
「緊急度が高くても重要度の低い仕事」ばかりしていたら、リーダーは時間を奪われるばかりで、「チームを円滑に動かして結果を出す」という目的を果たせません。緊急度が高いものに振り回されていると、重要度の高い仕事を見失ってしまうのです。

(6)迷ったら、より「簡単なほう」を選ぶ

 仕事のプロセスにおいて、いくつかの選択肢がある場合、リーダーは、「シンプルわかりやすい」方を選ぶことです。複雑な選択肢はできるだけ捨てる、ということが重要です。それは、「シンプルで分かりやすい」方を選択肢や方が、当然、実行しやすいし、スピードも精度も上がるからです。

(7)「80対20の法則」を生かす

 仕事を「シンプル」にするための一つの方策として、「80対20の法則」を活用する手があります。
 これは「パレートの法則」とも呼ばれるもので、イタリアの経済学者ヴィルフレッド・パレートが提唱した理論です。有名なので、知っている方も多いでしょう。「上位2割の営業マンが、売上の8割を上げる」「2割の売れ筋商品が、総売上の8割を稼ぎ出す」「2割の上得意客が、総売上の8割をもたらしている」
というように、2割の「原因」から8割の「結果」が生まれるということを示したものです。要するに、「物事にはキモというものがある」ということです。仕事でも重要な2割のキモを見極めることが重要で、2割のキモを見極めれば、重要でない8割は捨てることができる、ということです。

(8)「人を動かすための時間」を取っているか

 リーダーのスケジューリングには、部下とは異なる点があります。
 それは、リーダーは「人を動かすための時間を作らなければならない」ということです。これも、「80対20の法則」でいうところの2割に当たる、リーダーの仕事の重要なキモです。
 人を動かすための時間とは、具体的にどういうものかというと、例えば、「情報をチームのメンバーと共有するための時間」です。入ってきた情報をメンバーに“丸投げ”するのではなく、まずは自分できっちりと整理・咀嚼して、チームで「やるべきこと」「やるべきでないこと」を明確にして、それをメンバーに的確に伝えることが必要になります。

(9)「情報共有」は必ず全メンバーで行なう

 チームの全員が同じ情報を持ち、同じ目的で仕事を進めれば、物事は必然的にシンプルになり、同じ結論(ゴール)に達することができるのです。

(10)「プレイングマネジャー」になってはいけない

 プレイヤーとマネジャーの両方をこなすー。これは、仕事を複雑化させますし、仕事量も膨大になり、精神的にも、肉体的にも大きな負担となります。「とても務まらない…」血うプレイングマネジャーの悲鳴をよく聞きますが、実際にそうだと思います。
 プレイヤーとマネジャーの両方をやろうとすると、ほとんどの場合、プレイヤーとしての仕事を優先してしまいます。
 なぜなら、自分のプレイヤーとしての仕事で成果を出さなければ、マネジャーとして部下に示しがつかないと考えるからです。ここにプレイングマネジャーの悩みが集約されています。
 しかし、プレイヤーとマネジャーは、やるべきことが明らかに違います。その両方の役割をこなすのは、無理なのです。立場が違えば考えも違いますし、役割は違えば行動も違うからです。

(11)「自分でやる」から「人を動かす」働き方へ

 とはいえ、「プレイングマネジャー」というのは、自分で選択したのではなく、会社から与えられた立場なので、なんとかこなす以外に道はないのでしょう。そのためにどうするか。
 プレイヤーとしての仕事をできるだけ減らし、マネジャーとしての仕事に比重を置いていく方向にシフトチェンジすべきだと考えます。
 もし、会社から「プレイングマネジャー」の役割を与えられていたとしても、リーダーの地位にあるのなら、評価されるのはマネジメントの成果である、ということを強く認識すべきです。プレイヤーの時は、自分さえ結果を出していればいいのですが、リーダーになるとチームで成果を出さなければ評価されないと肝に銘じて下さい。
 なんでも自分でやってしまえば、当然、膨大な量の仕事を抱えることになりますし、メンバーも育ちません。
 メンバーが育たない限り、チーム全体のの力は高まりません。すると、あなたはいつまでたっても、プレイヤーとして結果を出しながら、マネジメントでも結果を出さなければならニノで、いつか必ず挫折してしまうことになります。

(12)トヨタの「健全なる危機感」とは?

 トヨタでは、よく「健全なる危機感」という言葉が使われています。世間一般でも、似たような意味合いで、「現状維持は退歩である」という言葉が使われます。会社の業績が好調な時には、人はこれを維持しようという意識が強く働きます。しかし、リーダーは、ビジネスでは状況がどんどん変わっていくということを忘れてないけません。
 リーダーは一時的に今の状況がいいからといって、それに安住してはいけません。「健全なる危機感」を持ち、「現状維持は退歩である」ということを肝に銘じておかなければならないのです。「今はいいけど、今後はどうだろう?」このシンプルな自問自答を繰り返す習慣を持ってください。危機に陥ってから何か対策をうっても、なかなか効果は出ません。危機感を持った段階で挑戦を始めることで、現状をさらにより良いものにできますし、現実に危機に陥ったとしても、うまく対処することができるのです。

(13)「現状不満足」がリーダー力を磨く

 組織が調子を落とす時には、「不自然さ」が表に出てきます。ビジネスの大原則として、不自然な部分があれば、それは近い将来問題になると考えておいて間違い無いでしょう。「あれ?」「おや?」と思うことがあったら、一度その原因をしっかりと突き詰め、打つ手を考えておく。いい状況の時こそ、リーダーとしてどうあるべきかを考えておく。部下にどのような指示をするべきかを考えておく。

(14)「信頼」という武器を磨く

 リーダーは、「信頼」されなければなりません。部下と「信頼関係」を結ぶ必要があります。「信頼関係」があれば、部下は「この人の言うことは聞いておこう」と、自然と指示・命令を受け入れることができ、ひいては、「この人のために何かできないか」と自発的に動いてくれるようになります。
 リーダーにとって、「信頼」を築けるように自分を磨き、部下に対する影響力を強化することは必要不可欠です。

(15)常に「有言実行」でいけ

 信頼を得るためにリーダーは何をすればいいのか。
答えは、「有言実行」です。自分が「できないこと」「やれないこと」は約束しないことが重要です。

(16)「理論」や「数字」で部下は動かせない

 リーダーには、「伝える力」が不可欠です。話を部下にわかりやすくシンプルに伝えることができなければ、チームを効率的、生産的に動かせないからです。
「会社の言葉」をそのまま部下に伝えるのは、二流以下のリーダーがやることです。なぜなら、会社の言葉というのは、ほとんどが無味乾燥な「数字」や「理論」だからです。それをそのまま下に下すだけでは、部下は動かせないのです。
 一流のリーダーは、「自分の言葉」で話します。会社の言葉を咀嚼して、自分の言葉に置き換えて、チームのメンバーにわかりやすく伝えます。
 例えば、社長が掲げる「顧客第一」は、
 部長ー「顧客のニーズを十分に調べて、新商品の開発をしよう、
    目標の売上を達成しよう」
 課長ー「商品開発されたものを、どのように売り、お客様に満足してもらうか
    を考え、課で売上目標3000万円を達成する」
 一般社員ー「お客様の望んんでいる新商品を開発して、その商品が確実にお客
      様の手元に届くように、得意先を中心に商談に入り、一人500万円
      の売上をあげよう」
 つまり、リーダーは自分より下の階層の人が、具体的に行動をイメージできるように、会社の方針を噛み砕いて、わかりやすく伝えなければならないのです。
 会社の方針を咀嚼して、部下が「自分事」としてとらえられるように、シンプルにわかりやすく話す、ということが重要です。

(17)リーダーのための「失敗学」

 仕事には「失敗」がつきものです。失敗をしないリーダーなどいません。
 大切なのは、その失敗を「教訓」にできるかどうかです。
 リーダーとして、「失敗」というものに対して、どういうマインドで向き合うべきか。ポイントは3つあります。
①くよくよしないこと
 自分が犯した失敗をいつまでも引きずって、落ち込んだり、あるいは自暴自棄になったりするリーダーも少なくないのですが、そういうマインドは絶対に捨てるべきです。どんな一流のリーダーでも失敗をした経験を持っているものです。むしろ成功者は、失敗を糧にして日々成長しているのです。
②失敗を絶対に隠さないこと
 失敗をオープンにすることで、何が原因だったのかを明確にする。そうすることでしか、失敗は生かせません。言い訳は、物事をややこしくします。失敗を次に活かすためには、「言い訳」を捨てなければなりません。自分の責任は責任としてきちんと引き受けてこそ、次への糧になっていくのです。
③失敗から学んだことを周囲と共有すること
 失敗の教訓を共有化することで、失敗を成功に変えるための意見やアイディアが集まってくるのです。

(18)あらゆる仕事を改善する「課題解決の技法」

 このメソッドには、自分が「やるべきでないこと」を捨てて、「やるべきこと」を明確にする力ー「仕事をシンプルにする力」を磨くためのヒントが詰まっています。メソッドは7つのステップからなります。

ステップ①自分(チーム)の課題を挙げる

 課題を解決するには、当然、まず自分の「課題」を明確にする必要があります。ここで気をつけなければならないのは、会社の「問題」と自分の「課題」を混同しない、ということです。
例)あなたがやるべき仕事は、会社の戦略の中で、自分の営業チームが担えることを考え、実行することです。自分のチームが担えないことは捨てる。そうすることで、初めてリーダーは自分の課題を明確にできます。
 では、会社の問題を自分の課題に落とし込んだ結果、例えばそれが、「顧客との関係を強化し、その情報をチーム内で共有し、売上を倍増させる」ということになったとします。

ステップ②その課題の障害となる事象を挙げる

 この事象とは、「客観的な事象と現象」のことです。客観的なデータ以外は拾わない。それが重要です。できないリーダーは客観的になれずに思い込みで事象を挙げてしまうものです。そういった、ロジカルではない事象を挙げてしまうと、本当にやるべきことが発見できません。思い込みで事象を挙げてしまうと、「個人を攻撃する」ことに目が向いてしまいます。それは避けなければなりません。「これは自分の思い込みではないか?」「自分の感情だけで判断していないか?」と自問しながら、客観的なものだけを慎重に挙げていくということ。そうすることで、根本的な課題解決への道が開けるのです。

ステップ③事象を整理する

 事象を出し切ったら、似ている事象をまとめて「グルーピング」をします。事象を全て挙げて、それからグルーピングすることで、ロジカルシンキングでは「拡散と収束」といいます。「拡散」と「収束」は、同時に行ってはいけません。「事象を挙げる」ことにブレーキがかかってしまうからです。ます、「拡散」で考えつく限りの事象を出しきってから、「収束」であるグルーピングを行いましょう。この順番を守ることが大切です。
 ここでも大事なのが、やはり、客観的にグルーピングを行うことです。客観的にグルーピングを行うためには、「思い込み」や単なる「希望」を捨て、そのうえでグルーピングを行うことです。「思い込み」や単なる「希望」でグルーピングをすれば、「事実」に反することを行うことになります。
 グルーピングをしたら、次に、「顧客との関係を強化し、その情報をチームで内で共有し、売上を倍増させる」ための課題解決を阻むであろう直接的な原因と考えられる事象にチェックを入れます。そして、一番チェックを入れた事象の数が多いグループを確認します。

ステップ④真のテーマと最優先で取り組むことを設定する

 一番チェックを入れた事象の数が多かったグループが「チーム内の意思疎通が円滑でない」であった場合、それが「真のテーマ」です。
 さらに、「真のテーマ」の中から最優先で取り組む事象を探します。
 例えばそれが、「チームメンバーの◯君はチーム内で混むニケーションおうまく取れていない」だったら、その原因を見つけることが、最優先で取り組むべきことです。

ステップ⑤「WHY」を5回繰り返す

 次に、その最優先で取り組むことに対して、「WHY」を最低五回、繰り返します。なぜ、なぜ、なぜ、なぜ、なぜ…と繰り返し、なぜ、「チームメンバーの◯君はチーム内でコミュニケーションをうまく取れていない」のか、その原因を深掘りしていくのです。例えば、次のような段階を踏んでいきます。
【1回目のWHYの答え】「◯君は仕事量が多く、いつも忙殺されているから」
【2回目のWHYの答え】「○君だけでなく全員がオーバーワーク気味だから」
【3回目のWHYの答え】「やらなくていいことに皆時間を取られているから」
【4回目のWHYの答え】「事務的な作業が多すぎるから」
【5回目のWHYの答え】「特に経理関係の書類仕事が多すぎるから」
…と、意外なところにその原因があることが、浮かび上がりました。
 この「WHY」を繰り返すことによるメリットは、「主観」を捨てられること。物事の本質を見極められることです。

ステップ⑥解決策を考える

 5回の「WHY」を繰り返し、最後に出てきたのは、「経理関係の書類仕事が多すぎるから」でした。これこそが、「顧客との関係を強化し、その情報をチーム内で共有し、売上を倍増させる」という課題をクリアするためにまず解決すべきことです。ステップ⑥では、その解決策を3つ、考え出してください。
例)「提出する書類の数を減らす方法を考える」
  「ペーパーレスの仕組みを考える」
  「他部署のリーダーと連携して、ペーパーレスの実行を経理に働きかける」

ステップ⑦具体的なアクションプランを決める

 挙げた3つの解決策から「アクションプラン」を作成します。「アクションプラン」を作るポイントは、解決策に「期限」をつけることと、実行しやすいシンプルな形にすることです。とにかく、アクションプランは「行動」や「連携」が伴うものにすることが大事です。「アクションプラン」をより明確に、具体的にするーこれを徹底することで、リーダーとして、さらに一段高いステージに立つことができます。
 この「課題解決の技法」ですが、ご説明した7つのステップを、しっかりと踏んでください。大原則は、一つひとつのステップを順に踏んでいくことなのです。省いていいものはありません。
 また、課題解決のステップを踏むときは、「場所」を工夫してみてください。会議室こもってもいいですし、カフェでゆっくりと、じっくりと考えるのもいいでしょう。私は、休日に自宅で考えるようにしていました。とにかく、リラックスして考えられる状況を作り出すことが、非常に大切なのです。そうでないと、どうしても主観や感情を捨てることが出来ず、客観的に、第三者的に考えることが難しいからです。
 この「課題解決の技法」が身につけば、リーダーとしての仕事は間違いなくレベルアップします。ロジカルに物事を考え、「仕事をシンプルにする力」をより一層磨くことができるでしょう。

(19)「課題意識」がリーダーを変える!

 よく、「リーダーは問題意識を持つことが大切だ」などと言われますが、それは問題意識がなければ仕事を改善、改革することができないからです。
 しかし、私は、「問題意識」からさらに進んで、「課題意識」を持つことが大切だ、と考えます。
 ここまで何度も述べてきましたが、「問題」とは、あるべき姿と現状の差が出現したときに起こるもの。言い換えルト、目標と現実の間にギャップが生まれている時に起こるもので、一方、「課題」とは、その問題に対して「自分が何をしなければならないのか?」「自分はどう解決しなければならないのか?」ということをシンプルに特定化することです。
 会社の「問題」を自分事、チーム事に落とし込んで「課題」にかえて、その解決を図るーそれがリーダーの「仕事をシンプルにする力」の基本だ、ということは、これまで述べたとおりです。
「課題意識」とは、まさに、問題を「自分の課題として捉える意識」です。漠然とした問題意識を持つことではありません。
 このような意識を醸成することが、できるリーダーになるには必要不可欠です。ただ「頑張る!」「結果を出す!」という精神論、根性論では、結果は出ないのです。

第3章 でいるリーダーは、「この方法」で人を動かす

ー部下マネジメントに小難しい理論はいらない

(1)人は「合理的に」動かせ

 リーダーの役割は、チームのメンバーを動かし、結果を出すことですが、多くのリーダーが、なかなかうまく人を動かすことができないという問題を抱えています。リーダーの地位を得た人は、権限があるため、自分の「私情」で人を動かそうとしてしまいがちです。
 しかし、リーダーというのは、会社に「滅私奉公」をしなければならないのです。これは、「自分を捨てろ」という意味ではありません。「私情」を捨てて、「チームにとって正しいこと」を優先しなさい、ということです。
 これまで何度か述べたように、リーダーというのは、常に会社全体の成長・成功に寄与する存在でなければなりません。これはあ人の上に立つ人の原理原則なのです。「私情」を捨て去り、その上で、部下の性格や特性をよく見極め、自分の意図する方向に、部下が自発的に動くようにアプローチするーそれが、一流のリーダーなのです。
 人を動かすのは容易ではありません。人を動かすためには、相手のことを観察し、どんな性格なのか、どんな特性があるのかを性格に見極める力が必要です。その上でコミュニケーションを取っていく必要があります。
 いうまでもなく、人の性格や考え方は十人十色。自分の「感覚」だけで捉えるのではなく、「この人は、どのような人なのか? どういうアプローチが効果的なのか?」という、第三者的、客観的な視点を持たなければなりません。
 この章では、自分の「主観」や「思い込み」を捨てて、より客観的な視点から「人を動かす」方法について、お話ししていきます。実践しやすいシンプルな方法を厳選しましたので、ぜひ活用してみてください。

(2)「5つのタイプ別」シンプルな部下指導法

 アルフレッド・アドラーは、人生には、次の3つの課題があると言っています。「仕事の課題」「交友の課題」「愛の課題」
 この3つの課題に共通することは、全て「人間関係」に関連するということです。そして、人間関係は、その距離が近くなればなるほどこじれ、複雑化し、解決は困難になることが多いものです。
 人間関係は、年齢、性別、性格、価値観、環境…など、多くの要素がミックスされて、出来上がっています。普段あまり意識しないかもしれませんが、特に仕事の人間関係は、とても複雑な要素が絡み合っているのです。
 人のタイプを分ける方法には、さまざまなアプローチがありますが、あまり細分化しす技手も混乱するだけなので、私は、特に仕事に関連しては、いつもシンプルに、次の5つのタイプに分けます。
①批判的な人
 
会話をしていると、いつも否定的な意見をいう人がいます。こういう人は、批判的なタイプだと言えます。裏を返せば、正義感に満ちた人だといえ、このタイプの人を自発的に動かすには、話をよく聞いてあげることです。常に持論を展開したいタイプなので、それに対して、頭ごなしに否定したりする指導法はやめること。話の腰を折ったりせず、まずは話を徹底的に聞く姿勢を見せるのが効果的です。このタイプの部下は、論理的で、エネルギーがあるので、「自分で決めたこと」は頑張って実行します。
②協調的な人
 
いつも周囲に気を配っている人がいます。協調性の高いタイプで、他人に対して受容的で、親身になって人の世話をし、それに喜びを感じる人です。こういうタイプの人は、「困ったときはあの人が助けてくれる」と頼りにされることが多いのが特徴です。しかし、こういうタイプの部下は、やさしいので、ガツガツと目標達成に向かっていくのを苦手とする傾向があります。自分を押し殺してしまうところがあるので、もっと自分を出すように指導することがポイントです。
 そして、コミュニケーションを取る中で「君はどうしたい?」「君なりの意見をぜひ聞かせてくれないか?」といった問いかけをするのが有効です。
③客観的な人
 
物事を見て、先行きを計算できる人、現実的な対応ができる人。つまり冷静なタイプの人がいます。しかしそれだけに、このタイプの人は、時に冷たいイメージを周りに与えることもあります。このタイプの人には、仕事はできる人が多いのですが、周りから見ると、やる気や情熱が感じられない時もあります。
 このタイプの部下は慎重で、ミスが少ないので、基本的に仕事を任されればしっかりこなせますが、合理的に動きすぎる部分があり、他の人の感情や状況をうまく汲み取れないところがあります
④ムードメーカー
 
いつも明るく、朗らかで、天真爛漫なムードメーカー。このタイプの人は、人目を気にせず思うままに振る舞う稽古があります。感情的、本能的、自己中心的、積極的に動くことが多い一方で、創造性に優れているという特徴もあります。明るく、遠慮がなく、怒ってもその環境を引きずらないので、周囲に楽しさや魅力を感じさせますが、それが度を越すと自分にブレーキをかけられず、軽率な行動をとることがあるので注意が必要です。このタイプの人には、人を巻き込み力があり、優秀な人も多いのですが、どこか浮ついた気分で仕事をしていることもあるので、仕事の抜け・漏れが多く、また、見当外れの方向に仕事を進めてしまう傾向があります。
⑤自己抑制が強い人
 自己抑制が強い人というのは、子供が親の顔色をうかがうように、常に自分の気持を抑えて、相手の期待に応えようとする傾向があります。その結果、嫌なことも嫌と言えず、強いストレスを抱え込みがちです。しかし、人に考え方や行動を合わせられるので、上に言われたことを素直に、確実に完遂するといういい特徴もあります。ただし、このタイプの人は、ある日突然、自分の中に蓄積したフラストレーションを爆発させ、周いの人を驚かすことがあります。

 ただし、これら5つの傾向は、誰もが全ての要素をある程度持っていて、完全なものではありません。ケースによって、強く出てくる要素が変わってくることもあります。人の性格というのは複雑なものです。

(3)部下に「レッテル」を貼ってはいけない

  リーダーは、相手のタイプを見極めながら、それぞれに有効なアプローチ法を考えていかなければなりません
そこで大事になってくるのが、「人を観察する力」です。すなわちコミュニケーションを円滑にするために、「人を観察する力」を磨くことが必要なのです。
 できるリーダーになろうと思うなら、部下がどのような「パターン」でものを考えたり、行動したりするのかをよく観察しなければなりません。
 多くのリーダーが、その力を身につけていないので、独りよがりのコミュニケーションを行なってしまいます。もっともいけないのは、自分の主観や感情、あるいは人の噂や一方的な評価で「こういう人間だ」と決めつけてしまうこと。レッテルを貼ってしまうこと。これは、人間関係を拗らせます。
 そういうひとりよがりの「評価基準」を捨てることができるかどうかーこれは、できるリーダーと、できないリーダーを分ける分岐点なのです。
 人にレッテルを貼ってしまうと、本来のその人とは違う人格を認識してしまうので、コミュニケーションがうまくいきません。
 リーダーは、それではいけません。どんな部下でも、何らかの能力を持っています。リーダーは、部下の能力を引き出してはじめて、大きな成果を上げることができるのです。

(4)「会議」は部下を見極める絶好の場

  自分なりのシンプルな「部下観察ポイント」を持つことです。例えば、「仕事の進め方」「会議中の発言」「チームメンバーとの会話の内容」「電話での対応」など、自分なりに注目するポイントを持つのです。会議で人間観察をすれば、その人の性格や考え方がよく見えてきます。会議は、人のタイプを見定める絶好の場です。

(5)部下の心を察知する簡単トレーニング

 想像、推察することは他人の心の状態をつかむ訓練になるのです。

(6)小難しいマネジメント理論は不要

 心理学やコーチングなどの小難しい本を読む前に、もっとシンプルに、部下のちょっとした顔色や表情などをよく観察する、といった努力や工夫をすべきです。そして、あなたなりの部下観察法を確立していきましょう。

(7)特定の部下に対する苦手意識を捨てる

 人は、苦手意識がある相手から遠ざかろうとします。嫌な思いをしたくないため、相手を避けるようになるからです。そうすると、ますます関係が悪くなります。リーダーは、「チームを動かす」ことを、何より優先させなければなりません。それを阻害するものは何が何でも取り除かなければなりません。

(8)部下との関係改善は、「常にリーダーから」

 部下が誰であろうと、どんな部下であろうと、人間関係を良好にするには、「常に」リーダーから働きかける。それが鉄則です。相手を変えようとしても、なかなかそうはいきません。まず自分の考え方を変える。そのほうがよっぽどシンプルか合理的です。誰にでも苦手な人はいます。リーダーとて例外ではありません。できれば、苦手な人とは関わりたくない。それが本音でしょう。
 しかし、繰り返しになりますが、リーダーは、「チームを動かす」ことを、何より優先させなければなりません。まず自分が苦手とする人の嫌な点を全て挙げてみてください。人に見せるものではないので、正直に紙に書き出してみてください。その書き出した嫌な点について、どうしてその点を嫌だと思うようになったのか、その原因となった出来事も書き出して冷静に向き合ってみると自分の気持ちに少しずつ変化が起こってきます。

(9)部下との距離を縮める一番シンプルな方法

「単純接触効果」というものがあります。これは「ザイアンスの法則」とも呼ばれる心理学用語で、「人間関係の親密さは、接触回数、接触頻度が多ければ多いほど増大する」ことを言います。つまり、「顔を合わせたり、話したりする回数、頻度が増えるほど、お互いに対する好感度が高まる」という、極めてシンプルな法則です。「まず、リーダーの方から部下に働きかける」。それがリーダーの重要な役目なのです。

(10)できるリーダーの「シンプルな質問力」

 部下とのコミュニケーションを円滑にするためには、リーダーから部下にタイミングよく、シンプルな「質問」をするのも効果的です。そうして部下と話すきっかけを作ると同時に、部下が担当している仕事がどういう状況になっているかを確認します。

(11)このちょっとした問いかけが部下を伸ばす

 ところで、部下に声掛けをするときは、「何か気の利いたことを言わなくてはならない」などと難しく考えていませんか?そんなことで頭を悩ませる必要はありません。部下とのコミュニケーションや、マネジメントに関して、小難しい理論やノウハウなんて必要ないのです。もっとシンプルに考えて、普段から何気なく「質問」をする。それだけで、部下の能力、また自身のリーダーとしての能力を磨くことができ、そして成果も上げることができるのです。

(12)部下が「話しやすい上司」になる

 部下とのコミュニケーションを円滑にする上で、「話しかけやすい環境を作る」ことはとても重要です。簡単なアドバイスですが、これはものすごく重要で、リーダーが、険しい顔、不機嫌な顔をしていたらチームの雰囲気は確実に悪くなります。常に「部下の話を聞く用意がある」という雰囲気を作ることが、リーダーには必要です。無理してニコニコしている必要はありませんが、なるべくやわらかい表情を作っておくことが大切です。「そんなことか」と言われるかもしれませんが、そんな小さなことが重要なのです。リーダーは忙しいものです。部下が何かを言ってきても、その時すぐに対応できないこともあると思いますが、そういう時は、後で必ず、話を聞く時間を取る。それが大切です。

(13)なぜ、報連相がうまくいかないのか?

 その理由は簡単で、「報連相ん時間をつくっていないから」です。リーダーは、多くのやるべきととを抱えています。個々のメンバーからの報連相w受けるのは、その中のごく一部でしかありません。しかし、部下にとっては上司への報連相こそが一番重要なことであることが多いのです。リーダーは、そのことを知らねばなりません。

(14)部下の「ストロングポイント」をさらに強化する

 リーダーはメンバー各個人の「ストロングポイント」を知ることが必要です。部下の能力を引き出すー。これは、優れたリーダーになるための条件です。そのためには、部下の「ストロングポイント」を強化すべきだと、私は考えます。部下には自信をつけさせることが重要です。

(15)「プロセス」を褒めるな、「結果」を褒めよ

 最近は、部下を褒めるというのが一般的で、褒めて育てろと言われます。しかし、これには少し注意が必要です。部下が結果を出して初めて褒めるー。それが重要で、プロセスでやたら褒めてしまうとそれは部下のためにならないということです。結局、結果が出ないと、部下自身も心の底から満足感は得られません。プロセスは大事ですが、結果を意識させることはもっと大事なのです。

(16)喋りすぎるリーダーは二流

 リーダーの中には、部下との会話の中で、自分の言いたいことばかり言っている人が少なくありません。部下から意見や提案が出なくて困っている、といリーダーは多いのですが、それも、やはりリーダーが喋りすぎているからです。部下とのコミュニケーションには「忍耐」が必要なのです。

(17)もっと「長い目」を持て

 部下指導においては、「短期的な視点」を捨てること。それだけで、部下指導はうまくいきます。部下は、自分で仕事について考え、仕事を実行していくことで徐々に成長していくのです。その成長は緩やかですが、ある時急に伸びる時が来ます。成長が止まってしまっているのではないか、と感じる時もあるでしょうが、大きく成長する時が必ず来ると考え、辛抱強く待ってください。リーダーは、部下に「好かれる」必要はないのです。それよりも「信頼される」ことが重要なのです。部下は、リーダーが仕事に厳しくても、「この人のもとにいれば成長できる」と思えば、信頼してついていくものなのです。

(18)「イエスマン」を集めてはいけない

 リーダーの地位に就くと、チームのメンバーなどを自分で決めていくことができます。そこで陥るのが、「イエスマンばかりで周りを固めてしまう」ことです。自分の意見に賛成する人ばかりが周りにいるのは、危険です。チームの間違いを正す機能が働かなくなるからです。こうなると、いうまでもなく、リーダーは目標を達成することができなくなります。反対意見を言ってくれるメンバーは、とても貴重な存在です。なぜなら、そういう人はリスク回避に対する感性が高いからです。反対意見を言ってくる人間を煙たがっていてはいけません。リーダーの「度量」というのはそこに表れるのです。議論とはお互いの信頼関係をより強くするものーそういう認識を持たなければなりません。

(19)上司と部下が違うのは「役割だけ」

 目標を一緒に成し遂げるために議論をする場においては、上司も部下もありません。同じ目標を持ち、それを一緒に成し遂げるための「同志」であり、「仲間」です。上司と部下が違うのは、ただ一つ。「役割」だけなのです。

第4章 結果を出すリーダーの、チームを一つにまとめる技術

ー段取り力、指導力、調整力、人間的魅力…

(1)「名選手、名監督にあらず」

 あなたがリーダーに選ばれたとします。自分にはリーダーの才能がない…と、そんなふうに気後れすることはありません。そんな気後れは捨て去ってください。リーダーが中心となっていいチームワークを発揮できるかどうかは、才能より心がけ次第で決まるのです。大事なことは、リーダーとしての努力と工夫ができるかどうか。会社は、その子tをよくわかっています。それができない人には、リーダの役目を絶対に回さないのです。何かのプロジェクトをチームで進める際は、リーダーである、あなたの才能を発揮するのではありません。チームメンバーに才能を発揮させることです。そのためにチームを一つにまとめるにはどうするか、そこに心を注ぐことが重要なのです。

(2)円滑に動くチームの作り方

 いかにチームを一つにまとめて、円滑に動かすかー。
やるべきことは、次の4つです。

①会社の戦略を自分の頭に叩き込む

 会社には「戦略」があります。例えば、それが「顧客の営業を成功に導くコンテンツを提供する」と言ったようなものだったとします。リーダーは、これをまず自分の頭にしっかりと叩き込み、脳に焼き付けることです。

②会社の戦略を部下と共有する

 次に会社の「戦略」を部下に浸透させます。そこで、「戦略」を抽象度の低い「戦術」(その戦略を実現するために具体的に何をすればいいのか)に置き換え、共有します。ー会社の戦略を咀嚼し、具体化させる。
 部下に浸透しやすい形に戦略をブレイクダウンすることで、部下はそれを正しく理解し、その達成に向けて具体的に動くことができるのです。
例)
戦略ー「顧客の営業を成功に導くコンテンツを提供する」
戦術ー「お客さんが売上25%増を3年以内に実現するために、良質な企画書・
    提案書を作成するためのノウハウを提案・発信する」

③部下に役割を与える

 戦術とは何か。「何を」「どうやって」「いつまでに」やるかを決めることです。すると「やるべきこと」「やるべきでないこと」が見えてきます。仕事の目的や意義、目標、予算、期限…を具体的に挙げて、メンバーたちとよく話し合い、個々の役割を明確に決めていくのです。

④部下を「その気」にさせる

 メンバーたちに個々の役割を伝える時、ただ仕事の内容、進め方を機械的に伝えるのではなく、「あなたにはこのような役割を期待しているから、ぜひ頑張って、結果を出してほしい」と伝えます。このステップは省略してしまいがちですが、ここが人を動かせるかどうかのキモであり、できるリーダーと、できないリーダーを分ける分岐点でもあるのです。きちんと相手への「期待」を伝えること。部下を「その気」にさせて動かすのが、一流のリーダーなのです。

(3)リーダの「覚悟」が部下を動かす

 人間は、自分の言動を正当化したがります。誰もが自分は可愛いですし、保身に走るのも、仕方がないことではあります。ただし、これが行き過ぎるとチームがバラバラになったり、仕事が非効率になったり、成果が出にくくなったりします。大きなことを成し遂げるには、強いリーダーシップを発揮し、部下の意見を聞き入れない覚悟も必要です。部下が「達成できる」と確信するまで、何度も自分の信念を言い続けましょう。

(4)部下が「最大の力」を発揮する時

 チームを一つにまとめる力があるリーダーは、「ここぞ」とう時には、妥協をしません。人は、難しい目標に向かう時ほど、能力を発揮します。それは、難しいことに取り組む時ほど、集中力が増すからです。部下に言い切ってしまうことで、部下にも「覚悟」が生まれます。「覚悟」が生まれると、考え方や行動がシンプルになります。そうなると、驚くべき集中力や創造力を発揮できるようになります。いわゆる“フロー状態”となって、脇目も振らず物事に向かうことができるようになります。スポーツなどでは、フローな状態になることを「ゾーンに入る」などと表現しますが、例えば、一流のバッターが、「ボールが止まって見えた」などと語るときは、その状態なのです。

(5)生産的な会議のルール

 チームでまとまって仕事に臨むためには、リーダーは会議を開くことになります。しかし、多くの場合、会議が意味のないものになっているのは、リーーだーの責任が大きいのです。メンバーが悪いのではなく、リーダーの会議の進め方に問題があると認識してください。
 参加者の発言が少なかったり、リーダーが一人で延々と話していたいする会議に意味はありません。できるリーダーは、会議のルールを自分なりに作ることで、生産的な話し合いを生み出します。

(6)部下に自分の失敗談を話す効果

 地位が高い人ほど、会議に参加することが仕事だと思っている人が多いものですが、できるリーダーになりたいのなら、こういう考えは捨てましょう。部下のために、会社のために、恥ずかしい話でもどんどんしていきましょう。するとあなたの信頼はむしろ増すでしょう。

(7)リーダーに必要な「根回し力」

 リーダーは、会議などで、時には自分の提案を強力に押し通さなければならないことがあります。しかし、なかなかそれがうまくできない、というリーダーも少なくないのが現実ではないでしょうか。重要なポイントは、いきなりその提案をしない、ということです。自分の考えや意向を事前に周知させる時間、場面を多く持つようにすればいいのです。

(8)「根回し」がうまくなる2つのポイント

①誰に対してするのか
②どんな方法で攻めるのか
を考えることです。

(9)「キーパーソン」の見極め方

 大きな成果を上げようとするならば、リーダーは、社内外の権限を持った人物にアプローチをする必要があります。つまり、「キーパーソン」を押さえ、動かさなければならないのです。極論を言ってしまえば、キーパーソンさえがっちり押さえていれば、それ以外の人物へのアプローチは捨ててしまっても構わないのです。

(10)「何事にも、キーパーソンは二人いる」

 物事は、決定権者だけで決められているわけではありません。決定権者には「ブレーン」が必ずいるのです。そういう人たちといい関係を作ることができれば、仕事がスムーズに進ことは間違いありません。「何事にも、キーパーソンは二人いる」という意識を持ってください。決定権者は誰と親密な関係を結んでいるか、この点を注意深く調べることです。

(11)「でも」「しかし」…を封じ込める

 チームを一つにまとめるためには、リーダーは自分の「口グセ」に注意する必要があります。リーダーには、習慣にすべきではない「口グセ」があります。「でも」「しかし」という、否定、反論、言い訳へと続く逆説の接続詞です。
 例えば、チームの誰かが何かを話しかけてきたとしても、「でも」「しかし」でリーダーが切り返してしまえば、そこで建設的な話し合いはできなくなります。「でも」「しかし」と部下の話を遮ってしまうのは、最悪のリーダーなんです。リーダーの地位につく人というのは、仕事ができる人でもあるので、ビジネスの話では先が予想できてしまい、話を遮ってしまうことがよくあります。しかし、人の話を最後までしっかり聞くということは、信頼関係構築のためには大切なことなのです。この時、話の内容が正しいか、間違っているかは、あまり重要ではありません。まずは話を最後まで聞くこと。そしてそこから何かを生み出そうとすること。その姿勢が大切なのです。

(12)「それも一理あるね」という効果的な一言

 リーダーになったら、否定的な口グセは禁物です。「でも」「しかし」といったネガティブな言葉を使うのが習慣になっていないか、自分でチェックしてみてください。リーダーは、前向きな言葉、生産的な言葉(「それも一理あるね」)を使って、チームを一つにまとめなければなりません。

(13)「沈黙↔︎疑問点を聞く」テクニック

 できるリーダーには、とことん相手の話を聞いて、最後にズバッと刺すシンプルな一言を発することで相手を納得させる人が多いものです。喋り続けることで主張を通そうとすることが、必ずしも効果的ではないと心得ておきましょう。特に相手が感情的んあっていれば、こちらは冷静に一歩引いて、押し黙る。相手の感情が収まるまで、徹底して話の聞き手に回るのです。

(14)「バカ」になれるリーダーの魅力

 チームを一つにまとめる力のあるリーダーは、例外なく「人間的魅力」を持っています。人は、魅力のある人に引き寄せられ、その人のために力になろうと動くものです。人間的魅力がある人とは、仕事をしっかりとこなしながらも、「バカになれる部分を持っている人」です。

(15)本田宗一郎の人間的魅力とは?

 仕事では厳しいけれど、仕事を離れれば、その厳しさをサッと捨てる。相手がたとえ目下の人であろうともその話によく耳を傾け、虚心坦懐に付き合う。そんな人には魅力があります。そして、その魅力は、組織を一つにまとめる力でもあるのです。

(16)リーダーが遠ざけるべき、こんな人間

 誰の話からでも学べることがあるー。こう言ったことはよく言われます。しかし、この考え方はリーダーになったら捨てることも必要です。あえて話を聞かない人を決めるのです。では、リーダーが「話を聞かなくてもいい人」というのは、一体どういう人なのでしょうか。最も話を聞かなくていい人は、あなたに対して、常にネガティブな発言を投げかけてくる人です。多くの人との交流の中で、何も得られない、時間の無駄、と感じる相手は必ず出てきます。こう言った人を「スルー」する、あるいは「遠ざける」スキルを持つことは、「仕事をシンプルにする」という観点からも、リーダーにとっては大切です。

(17)不用意に敵を作るな

 仕事人生の中では、ソリが合わない人が出てくるのは仕方がないことです。しかし、だからといって不用意に敵や苦手な人を作るのはよくありません。あなたにとっての重要人物なのに、気が合わないからと言って敵対してしまえば、物事はややこしくなり、感情にも振り回され、仕事に支障が出てきます。
 不用意に敵や苦手な人をつくってしまう原因には、接触回数が少なすぎるということがあります。接触を避けると、当然、相手にはあなたにいい印象を持ちません。先にも述べましたが、心理学に「ザイアンスの法則」というのがあります。これは、人と人は、接触回数を増やすだけで、警戒心が薄れ、お互いの好感度が増していくというシンプルな法則です。つまり、人間関係の構築は、コミュニケーションの「回数」に大きく左右されるとのことです。不用意に敵や苦手な人を作らないためには、自分からコミュニケーションを取る機会を増やすことが大切なのです。

(18)女性社員の上手な動かし方

 女性の活躍が著しい時代になりました。そこで男性のリーダーが悩むのが、女性の部下に対指導についてです。女性部下に対する上手な指導のポイントは、「プロセス重視」でくことではないかと私は考えます。ひとくくりにはできませんが、男性は結果重視の人が多く、女性はプロセス重視の人が多いように思います。ただ女性の部下に対しては、仕事のプロセスの一つひとつの目的や内容をより丁寧に説明した方がうまくいく傾向があるように感じます。「納得感」があれば、高い能力を発揮して仕事を遂行してくれるのが女性の部下なのです。

第5章 伸びるリーダーの、仕事を面白くする発想方

ー「いいアイディア」の出し方から「信念」の作り方まで

(1)仕事はいつでも「面白く」

 面白そうに仕事をしているリーダーと、つまらなそうに仕事をしているリーダー。部下はどちらについていきたいと思うか。いうまでもなく、答えは前者です。面白さを感じられず、仕事に没頭できなければ、スキルも身につきませんし、中途半端な仕事しかできません。結果として、二流以下のリーダーになってしまいます。仕事が中途半端になっていると思うのなら、根本的に考え方を変える必要があります。

(2)自分で限界をつくっていないか?

 中途半端なリーダーでは、自分のポジションを確立できません。「自分の居場所」を作ることはできないのです。これでは、心も不安定になるので、誰だって仕事に嫌気がさしてきます。大事なことは、「思い込み」を捨てることです。
 つまり、仕事が面白くない大きな原因は、いままでの経験kら自分で自分に「制限」を設定していることにあるのです。実は、そういった制限は単なる思い込みであることが本当に多いのです。その制限を取り払うことができるかどうかーそれが、リーダーとしての仕事の面白さを発見できるかどうかの鍵となります。

(3)仕事をシンプルにして、エネルギーを集中させる

 よく「仕事は苦しいのが当たり前」と言われます。しかし、できるリーダーは、例外なく自分の仕事に面白みを感じながら、高い集中力で仕事に没頭しています。仕事に積極的に取り組み、周りと良好なコミュニケーションを取りながら、楽しそうに仕事をしています。そのように仕事をするにはどうすればいいのか。自分の「課題」を明確に持つことです。そして、仕事をシンプルにすることです。「課題」を持つことの重要性については、これまでにもお話ししましたが、改めてそのことを理解する必要があります。
 会社の「問題」と、自分の「課題」を混同しないこと。会社の問題を解決するために、自分に特定化された「やるべきこと」=課題を見つけること
 そうすれば、仕事をシンプルにすることができます。仕事がシンプルになれば、世界が変わります。自分の「やるべきこと」が単純・明確になれば、そこにエネルギーを集中させることができるようになるからです。そして、出せる結果が圧倒的に変わってくるからです。

(4)仕事で大事な“ゲーム感覚”とは?

 言葉は悪いかもしれませんが、「仕事は、所詮ゲーム」なのです。仕事の場というのは、ゲームと同じ「仮想の空間」であるとも言えて、これは、会社っを辞めた時に、本当によくわかります。定年退職をして、会社から一度離れて仕舞えば、会社での実績というのは、大半が人生から消えていってしまうのです。まさにゲームと同じなのです。だからこそ、「ゲーム感覚」で仕事をすることが大切になります。「やるべきこと」がシンプルになれば、仕事は面白くなります。余計な「やらないでいいこと」に振り回されず、高い集中力を持って仕事に向かうことができます。

(5)リーダーに求められる「耐える力」

 リーダーの仕事は、一般社員のそれとは違います。リーダの仕事というのは
大部分が「完全な正解」のない中で進んでいくものです。自分のチームを率いて未知の世界に踏み込み、結果を出さなければならないのです。
 リーダーの仕事とは、新しいことに対するチャレンジの連続なのです。
 新しいチャレンジに向かう時には、「耐える時期」というものが必ずあります。例えば、プロジェクトを成功させるための「準備期間」などです。この時期は地味な仕事が多く、「仕事が面白くない」と感じることもあります。情報収集や関係者への根回し、社内的な事務手続きに追われたりします。「行動」が伴わない仕事には、なかなか楽しみや喜びを感じられないのは事実です
 しかし、ここで焦らず、行き当たりばったりで行動せず、情報収集や関係者への根回し、社内的な事務手続きに集中することです。
 機が熟したらスピード感を持って行動すればいいのです。
 機が熟すまでは行動を控える。「なぜ、いま行動しないのか」をシンプルに明確化しておけば、それに苦痛を感じることは少なくなります。
「耐える力」のないリーダーは、「やるべきこと」や「やるべきでないこと」が曖昧なまま走り出し、その結果、迷走します。
 耐える時期に行った、緻密な下準備があってこそ、その後シンプルかつ効率的、生産的に仕事を進めることができ、結果を出すことができるのです。
 下準備期間に耐えることができなければ、やがてメンバーたちを迷走させ、無理、無茶をさせることになります。
「耐える力」のないリーダーは、目先の成果ばかりを追い求め、大きな結果を出すことができないのです。

(6)「あえて行動しないこと」で道が開く時

「耐える力」のあるリーダーは、結果を出すための下準備を緻密に積み重ね、ここぞというところで溜め込んでいたエネルギーを一点に集中させ、スピード感を持って行動を起こします。仕事を合理的、効率的、生産的にするために、「あえて行動しない」という局面が、リーダーにはあるのです。

(7)いい「アイデア」の出し方

 新しいことにチャレンジし続けるのがリーダーの仕事です。のそチャレンジを成功させるために必要なのが、「有効なアイデアを出す」ことです。アイデアがどんどん湧いてくれば、仕事は楽しくなります。アイデアを出そうとする時に苦痛を感じてしまう大きな原因は、ゼロから何かを生み出そうとすることにあります。つまり、今まで誰も思いつかなかった、全く新しいアイデアを出そうとするから苦痛を感じてしまうのです。そこで、視点を変えてみる。「すでになんとなく考えていた平凡なアイデアを磨いて、仕上げる」のです。スタートは平凡なアイデアでかまいません。その平凡なアイデアを深く考えていくのです。平凡なアイデアを面白いアイデアに「進化」させるのです。

(8)「オズボーンのチェックリスト」

 例えば、「売上アップのために電話営業を増やす」という平凡なアイデアも、「そのために、どうするのか?」と考えていくことで磨かれ、精度の高いアイデアになっていきます。では、そのアイデアを「進化」させるためにはどうすればいいのでしょうか。
 あなたに知っておいて欲しいのは、「いいアイデアは、既存のアイデアの組み合わせから生み出すことができる」ということ。何かと何かをくっつけることで生むことができる、ということです。
 アイデアを進化させるテクニックとして有名なものに、「オズボーンのチェックリスト」というものがあります。
 これは、ブレーンストーミングの考案者として有名なオズボーンによる発散発想技法で、アイデアに詰まった時に、突破口を見つけるシンプルかつ効果的な、9つの質問リストです。
①他に使い道がないか?
②他に似たものを探してみたら?
③変更してみたら?
④大きくしてみたら?
⑤小さくしてみたら?
⑥置き換えてみたら?
⑦配置や並びを変えてみたら?
⑧逆にしてみたら?
⑨組み合わせてみたら?
このようにアイデアを進化させていく作業は、とても楽しいものです。せひ活用してみてください。

(9)煮詰まったら「場所」を変えてみる

 もう一つ、アイデアを出すシンプルな方法として、ぜひ、「場所を変えてみる」ということをしてみてください。
 アドバイスとしては簡単なものですが、実際に机にかじりついて物事を考えていても、なかなかいいアイデアは出てきません。視点を変えるためにも、「場所」を変えることをお勧めします。
 ところで、「ノマドワーキング」という働き方が注目されています。「ノマド(nomad)」は、英語で「遊牧民」を意味します。近年、インターネットの発達によって、遠く離れた人と意見を交わしたり、どこでも情報を手に入れたりすることが容易になり、職場だけでなくさまざまな環境や場所で仕事をすることが可能となりました。
 このような働き方を「ノマドワーキング」といい、こうした働き方をする人を「ノマドワーカー」と呼びます。
 アイデアは、「机の上」で考えているときより、カフェや電車の中にいる時の方が思い浮かびます。
 これは、「場所」が変わることで、新しい刺激を受けるからです。今までにない頭のスイッチが入り、アイデアが生まれてくることがあるのです。
 また、シャワーを浴びている時や散歩をしている時など、リラックスした状態でアイデアは浮かびやすい傾向があります。
 アイデアは「必死に考える」となかなか出てきません。「いいアイデアを出すぞ!」と意気込めば意気込むほど、頭が固くなり、“脳力”を引き出すことができません。

(10)中国古典に学ぶ「ひらめき力」の磨き方

 アイデアを出す時は、リラックスできる環境を作ることが重要です。
 リラックスした状態で考え続けていると、ある時突然、いいアイデアがひらめいたーという経験は、あなたにもあるのではないでしょうか。
 例えば、机にかじりついてアイデアを考えたけれど、なかなかひらめかず、疲れて帰宅し、お風呂にゆっくりつかっていたら、突然、いいアイデアがひらめいたーということはよく起こります。
 中国の古典から生まれた「三上」という言葉があります。
 これは、「馬上=馬の上、つまり移動中」「枕上=寝床に入っている時」「厠上=トイレの中あるいはお風呂の中」の3つを意味します。優れた詩やアイデアがひらめくのは、机に向かって考えているときではなく、日常生活の些細なことをしている時である、と言っているのです。

(11)「リラックス」が思考力、発想力を磨く

 リラックスしている時、思考はシンプルになっています。そういう時こそ、人はひらめきを得やすいのです。いいアイデアが欲しいなら、「自己規制」をいないことです。「ブレーンストーミング」をするときの4つの鉄則は、
①質より量
②自由奔放
③批判禁止
④統合改善
であることは有名ですが、特に叩き台となるアイデアを考える時は、「これは無理だ」「現実的じゃない」「前に失敗した」「予算がない」…などといった「自己規制」はしないこと。そうでないと、アイデアが萎んでいくからです。まず、「思いついた」ことはなんでも、どんどん出していくこと。そこから、先に紹介した「オズボーンのチェックリスト」のように、アイデアを「転がす」ことでブラッシュアップしていくことが肝要です。

(12)常に「コンディション」を万全にせよ

 リーダーというのは、日々、自分の体の「コンディション」に気を配らなければなりません。あなたが倒れれば、チームは機能しなくなってしまうからです。風邪などの病気にかかることはもちろんですが、「やる気低下」などの心の不調にも注意しなくてはなりません。
 しかし、「なんとなくやる気が出ない」というときも、その原因は、実は体の不調が原因のことが多いものです。
 昔から、心身一如(いちにょ)ー体と心は繋がっていると言われていますが、人間は体が資本なのでこれは当然だと言えます。
 体のコンディションを整えるためには、休息、栄養、運動が必要不可欠です。運動不足で、食事はコンビニ弁当ばかり、多忙で休日もしっかり休めないという状況では、リーダーとして失格です。体によくない影響が生じると、当然、パフォーマンスは落ち、心も折れやすくなってしまいます。無理や無茶をしすぎると、体のコンディションは悪くなる一方で、仕事の質も高まりません。休日にはしっかりと心身ともに休めるように、ウィークデイで仕事を終わらせる計画を立てて下さい。

(13)仕事ができない人ほどよく風邪をひく!?

 栄養に関しては、「まごわ(は)やさしい」という合言葉があります。豆腐、ゴマ(などの種実類)、わかめ(などの海藻類)、野菜、魚、しいたけ(などのキノコ類)、イモ類、こういったものをバランスよく摂れば、生活習慣病予防になると言われています。
 また、運動では、軽い筋トレやジョギングをするだけでも、テストステロンというホルモンの数値を上げることができます。このホルモンは、集中力を高め、やる気や競争力も高めてくれます。「仕事ができない人ほどよく風邪を引く」などと言われますが、体調管理をしっかりとして、健康な体をつくることも一流のリーダーの必須条件なのです。

(14)一流のリーダーの「眠り方」

「残業はするな」最近、ビジネスの世界では、残業をしないことが常識になっています。会社が残業代を削減するためということもありますが、定時に仕事を終われないということは能力がないことを証明しているようなものだと考えるようになってきたからです。私も、残業はするべきでないと考えていますが、その理由は少し違います。残業をすると、睡眠時間が短くなる弊害があるからです。
 しっかりと睡眠をとった方が得策です。8時間睡眠を取ることは難しいかもしれませんが、6時間以下でいいとは思えません。睡眠でしっかりと疲労を取らなくては、仕事でミスが起きない方がおかしいです。

(15)残業しないためのシンプルな極意

 24時間の使い方を自分なりにきっちり組み立てておかなければなりません。まずは、「睡眠の時間」を軸として、1日のスケジュールを組んでみることです。
 例えば、仕事に使える時間が10時間なら、仕事を8時間で仕上げる方法を考えて見てください。急に入ってくっる仕事もあるので、10時間で終わらせるようとするとやりきれないことが出てきて、残業することになるからです。
 また、1時間の「コアタイム」と30分の「仕事の見直し時間」をつくっておきましょう。一番難しそうな仕事に向かうために「コアタイム」をつくっておき、無駄なこと、非効率なことをしなくていいように、「見直しの時間」を取っておくのです。
 そして、重要なので繰り返しますが、リーダーがしなくていいことは、全て部下に任せる。これこそが、リーダーが残業をしないためのシンプルな極意です。

(16)部下に「小さな失敗」をどんどんさせる

 リーダーは、部下と一緒になってチームの知恵を結集し、協力して、大きなことを成し遂げていくものです。若くて経験の少ない人にもどんどん仕事を回して、見守ってあげるということが重要です。リーダーには経験もありますし、こうするともっとよくなる、という正解もわかっているからです。しかし、「仕事を任せる」ということをしなければ、リーダーにはいくら時間があっても足りません。睡眠時間を減らして、体に負担をかけて、「根性」で仕事を進めるべきではありません。「根性」は勝負どころで生かすものであって、仕事のベースにするものではないのです

(17)これからのキャリアをどう考えるか

 アメリカの心理学者エドガー・シャイン氏が提唱する「3つの輪」というものがあります。これは、自分のキャリア、働き方を考える時に、次の3つのシンプルな質問を自分に問いかけるものです。
①あなたのやるべきことは?
②あなたのできることは?
③あなたの好きなことは?
この3つの「やるべきことの輪」「できることの輪」「好きなことの輪」の重なり合う中に、あなたに最も適したキャリアがあるーというフレームワークです。
①はすぐには答えられないので、③から自分に問うと簡単に答えを出すことができます。

(18)「好きなこと」✖️「得意なこと」で考える

 「好きなこと」というより、「得意なこと」を挙げます。自分の強みを思い浮かべて、実際に書き出してみてください。そして、「好きなこと」と「できること(得意なこと)」を組み合わせて考えると、「①あなたがやるべきことは?」が見えてきます。
例)
「好きなこと」ー「評判のお店のチェック」
                ✖️
「できること(得意なこと)」ー「英語」
                ↓
「アイデア         「日本で評判のお店を、外国人向けに
(あなたがやるべきこと)」  英語で紹介するサービスを提供する」

 よく、「好きなこと」をやるのがいいのか、「得意なこと」をやるのがいいのか、という議論がありますが、これはナンセンスだと私は思っています。
 ほとんどの場合、「好きなこと」しか「得意なこと」になり得ないし、「得意なこと」しか「好きなこと」になり得ないからです。
「好きなこと」と「できること(得意なこと)」を組み合わせて考えるとき、もう一つ「誰かを喜ばせることができるか?」というシンプルな視点があるといいでしょう。そこにビジネスチャンスがあるからです。
 この「エドガー・シャインの3つの輪」は、余計な選択肢を捨てて、自分がやるべきことを見つけるために有効なので、ぜひ取り入れてみてください。

(19)「お金」よりも大事なこと

 人はただ生きているだけでもお金がかかります。そのお金を稼がなければ生活できないという現実があります。これは誰でも同じです。お金が欲しいという欲望は誰もが持っているでしょう。
 ただ、気をつけなくてはいけないことがあります。わかりきったことかもしれませんが、お金は幸せになるための「手段」です。お金を持っているだけでは人は必ずしも幸せになれないということです。
 お金が引き金となって人は不幸にもなります。 
 お金に盲目となった人は怖いものです。
 お金のことで頭がいっぱいになると、「どれだけ儲かるか」という視点しか持つことができなくなるのです。お金だけに価値を置くと、自分の人生もお金に換算されるだけになるのです。お金を中心とした仕事、働き方をすると、「信念」を簡単に曲げてしまいます。しかし、「信念」のないリーダーは、やがて必ず淘汰されます。私利私欲に走り、リーダーとして本当は捨てるべき間違った選択肢を拾うようになるからです。

(20)信念のあるリーダーは強い

 自分の「信念」をしっかりと持って、責任を持って善悪を判断し、行動していくーこれこそが、リーダーに求められていることです。
 これまでも繰り返し述べてきたように、リーダーというのは、会社や組織、チーム全体の成長・成功に寄与するために存在している、という原理原則を忘れないことです。
 そして、そのために自分がやるべきことは何か、自分はなんのためn仕事をしているのかーこの自問自答を繰り返すことが、「信念」をつくり上げていくときのベースとなるのです。
 信念のあるリーダーは強いのです。なぜか?それは「目の前の利益を捨てる」ことができるからです。

西郷隆盛が残した言葉に
「命もいらず、名もいらず、官位も金もいらぬ人は、始末に困るものなり。この始末に困る人ならでは、艱難(かんなん:困難にあって苦しみなやむこと。つらいこと。)を共にして、国家の大業は成し得られぬなり」
(名誉やカネなどに釣られない人間は厄介だが、そういう人間でなくては国づくりのような大業は成し得ない、という意味)
要するに、お金や名誉に惑わされない人間が一番強い、ということです。
 強いリーダー、一流のリーダーを目指すのであれば、信念を貫くこと。そうすれば、「結果として」お金は後からついてくるのです。

(21)「歴史の偉人たち」を相談相手とする

 リーダーの地位に就くと、多くの悩みを抱えることになりますが、反対に悩みを相談できる人は少なくなっていきます。だから、上に行けば行くほど、精神的なタフさが必要になってくるのです。できるリーダーにとって、「孤独に耐える」ということは必須の条件だと言えます。では、孤独に向き合い、孤独を受け入れるためにはどうすればいいのでしょうか。多くのリーダーが、古い時代に著された古典を読んでいます。古典は、長く読み継がれているだけに、時代を超えて規範とすべき術が記されているからです。
例)住友生命保険会長の佐藤義雄氏は「菜根譚」を愛読書としていると言われています。
 人生においてためになる言葉、ビジネスやプライベートで活用できる教えを読み、心をケアしているのではないでしょうか。孤独と向き合うためには、先人の知恵を借りるのも一つの手なのです。

(22)リーダーのための「17条憲法」

 17条憲法の内容は、現在の憲法のようなものではなく、官人の心得になっています。結局、人間の考えにオリジナルなどないのです。自分の抱えている悩みには、誰かがすでに答えを出してくれています。その先人の知恵を使えばいいのです。

(23)「トップは真っ先に苦しみ最後にいい思いをする」

 リーダーは、誰よりも仕事を熟知して、誰よりも真剣に仕事に立ち向かう、ということを求められているのはいうまでもありません。
 そのために、今目の前にある仕事にどう対応するのかを誰よりも深く考えることが必要です。徹底して考え抜き、自分を追い込むことも、時には必要です。ラクをしようと考えてしまえば、油断が生まれ、大きな失敗につながってしまいます。伊藤忠商事の丹波宇一郎元会長は、「トップは真っ先に苦しみ最後にいい思いをする」という考え方をしていたそうです。自分を追い込んで真剣に考え抜けば、緻密な計画が立てられ、抜けのない提案もできます。

(24)今日から「わが社の常識」を捨てよ

 社内の人間関係がうまくいっているリーダーでも、社外の人といい関係を作れていないことが少なくありません。社外の関係者と信頼関係を作るときの鉄則は、「会社の悪いところを外部に出さない」ことです。人は、いま置かれている自分の立場を理解して欲しいがために、言わなくてもいいことまで言ってしまうものです。しかし、自社を批判するような人間を信頼する人はいません。
 会社という組織は、種々雑多な人間の集まりです。どんな会社でも独特の社風や方針というものがあります。そこをきちんと理解した上で、客観的な、第三者的な視点を持って、よくよく注意して発言することが必要になります。信頼してもらわなければ、仕事で結果は出せないのです。



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