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花束が似合う彼女


とっても大切な親友の誕生日をお祝いした日のこと、聞いてくれる?
彼女は高校時代からの友達で、今年で8年目の付き合いになるらしい。


高校生の頃は毎日一緒にいて、恋バナやお気に入りの先生のモノマネなんかをしていつも笑いこけていたっけ。あの頃の私たちは無敵で、毎日を必死で生きていた。
大学生になってからは進学先が別れて中々会えなくなったけど、たまに東京で遊んだり旅行に行ったりしていた。会うたびに、努力家でまっすぐな彼女に刺激をもらって頑張れていたと思う。 



そして社会人1年目の今はすぐ会える距離にいる。お疲れさま会を開いて「私たち今月も頑張ったね〜」と言いながらちょっとお高いディナーをするのが月末の楽しみ。
おいしいご飯と彼女の笑顔に触れて帰路に着くと、心が満たされるってこういう感じなんだなと思う。また明日から頑張れそうな気持ちになる。
そんな彼女の23歳の誕生日が近づいてくると、全力でお祝いしたくなって1ヶ月前から計画を立て始めた。



プレゼントに花束は絶対あげたい。彼女にとびっきり似合うのを。
私の大好きなあの本もあげたいな。心が沈んでどうしようもない時、お守りになるように。
ご飯のおいしいお店でディナーをして、誕生日プレートでサプライズもしなきゃ。
お風呂に浸かりながらそんなことを考えていると、喜ぶ顔が目に浮かんで思わずにやにやしてしまう。


そんなこんなでディナーのお店を予約し、プレゼント用の本を自分で包装して、彼女の好きなミッフィーの便箋で手紙も書いた。
手紙は1番のプレゼントになるといいなと思う。
私はよく、友達や家族からもらった手紙や子供たちからもらった色紙を読み返す。それはどんな時も心をほわんとあたたかくしてくれる。お守りのような存在。


お祝いする当日、花屋さんがなかなか見つからずに焦ったけれど、何とか見つけて彼女のイメージにぴったりな花束を作ってもらった。
真っ直ぐさを感じるひまわりと、儚いかわいらしさを感じるかすみ草。どんな花が好きかな、似合うかなって考えている時間は本当に楽しい。


何かもうひとつプレゼントをあげたくって雑貨屋さんを見て回った。
猫好きな彼女にぴったりのマグカップを見つけて、これにしようかな?と期待が膨らむ。
待ち合わせの時間になったから一旦集合して、さっそく花束を渡した。満面の笑みで喜びを表してくれるところ、本当に好き。


フィルムカメラで花束を持った彼女を写真に収めたくて、お散歩しながらいい場所を探した。
誕生日に彼からプレゼントしてもらったフィルムカメラは、最近おでかけの時に必ず持ち歩いていて「なんかいいな」の瞬間に出会ったら気ままにシャッターを押している。
特に友達とか、彼とか、大切な人たちの姿を残したくなる。現像する時もタイムカプセルを開けるようなわくわく感があって、一瞬を時間をかけて表せるところが好きなんだ。


無事彼女の姿をカメラに納め、雑貨屋さんに向かう。さっき見つけたマグカップを見せると、すぐに気に入ってくれた。
彼女と私は好きなもの、ときめくものがよく似ている。「私も欲しいぐらいかわいいな〜」と言ったら、彼女が「お揃いにしようよ!」と言ってプレゼントしてくれた。こういうところ、あたたかくて勝てやしない。


プレゼントも買えたので、ディナーのお店に向かう。前も2人で来たことがあって、お互いとても気に入った場所だから「今日は前食べられなかったあれ食べようよ!」と入る前からわくわくしていた。
おいしい料理を食べながら、たわいもないことから真剣な話まで、ありのままに心の中を共有する時間。
たまに、彼女にかけるべき言葉がわからない時がある。どんな言葉も、彼女が打ち明けてくれた感情には釣り合わない気がして。
でもね、私たちはお互いを大切に思っていて、言葉はなくとも空気感でそれがちゃんと伝わると思うの。だからあんまり怖くない。
親友とはいえ他者だから全てを理解することはできない。だからこうやって、心の中を共有して知りたいと願ってる。


料理を食べ終えて、そろそろプレート来るかな?とそわそわしていたら、店員さんが想像通りのかわいいプレートを運んできてくれた。
彼女は目を丸くして驚いていて、サプライズが成功した私はとても得意げな顔をしてた。
「生まれてきてくれて、私と出会ってくれてありがとう」
心の中でずっと、こう思ってた。また来年もその次もずっと、どんな形でもお祝いさせてね。


最後は一緒に電車に乗って、ハイタッチをしてお別れ。また10月末のお疲れさま会まで、できる限り自分を大切にしながら頑張ろう。


幸せな月末を経て、また私の1ヶ月が始まる。




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