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私にとっての旅は



社会人になって初めての長期休みに、香川を訪れた。彼と行く2回目の旅行だった。四国はまだ行ったことがないし、どんな風景に出会いどんな気持ちになるのだろう、と期待に胸を膨らませる。


そんな中で、1番心に残ったのは猫とアートの島として知られている香川の離島、男木島。徒歩で一周できてしまうほどの小さな島。
ふっと横を見ると、トースト色の猫が道でゴロンとお昼寝をしている。少し歩くと、たぬきみたいに大きい猫も座ってこちらをじっと見ている。
猫好きの私と彼にとってはたまらない。沢山のわくわくを共有しながら猫を探して歩いた。


ご飯屋さんの店主のおじいちゃんが、どの辺にどんな猫がいるか気さくに教えてくれたり、島に遊びに来ている人達と何度も顔を合わせるうちにちょっとした仲間意識が芽生えたりして、人との距離の近さも心地いい。


もちろん、漁港で海を感じることも忘れなかった。瀬戸内海はとても穏やかで、白波が優しく立つ。そして少しだけ、爽やかな匂いがする。すぐに大好きになった。今まで見るどの海とも違う穏やかさを内に秘めていた。
島で1番高い位置にある豊玉姫神社から見る景色も、映画のワンシーンに出てきそうなほど美しかった。


その神社から少し下った、緑の木陰に囲まれたベンチの近くで、この旅1番の夢のような時間を過ごした。黒猫の兄弟がいて、その片方の子が私の膝の上に来てくれたの。あの時は嬉しすぎて、足が震えちゃったな。
沢山撫でていたら寝ちゃったのも可愛かったし、彼が羨ましがって本気で自分の膝に猫を誘導していたのも、おもしろくて愛おしかった。
ずっとここにいたいと思うくらい、幸せな時間だった。


そんな島で流れる時間は、どこかゆったりしている。
人も猫も、のんびり穏やかに暮らしているからかな。そこには確かに、生活が見えるのだけど、外の人達にも開かれた場所でもあるんだと感じて。
そのバランスが、なんだか心地よく感じた。
また、穏やかな海と人なつこい猫、生活とアートが融合するこの島に会いに来たいな。



住んでみたいと思うほど素敵な場所だったけれど、旅で訪れるくらいがちょうどいいのかもしれない。「住む」と「訪れる」という双方の視点では、この島の見え方はかなり変わるだろうと思う。


この旅行中何度も、家族に写真とひとこと感想を送りたくなった。
旅行のいいところは、旅行で見た景色や感じたことを共有したい大切な人の顔が浮かんでくるところ。きれいな景色を見た時、それを共有したいと思うこと。あの人が見たらなんて思うかな、あの人だったらここでどんな風に過ごすのかな。
誰かの好きそうな何かを見つけた時、ついその人の顔が浮かんでしまうように。


あとね、もうひとつ。日常の小さな幸せや素敵さに気づけるところもいい。
普段仕事をしながら日常を過ごしていると、「ああ、非日常に飛び込みたい!」と思う時も多い。
世界中の、まだ見たことのない景色を見て、異なるバックグラウンドを持った人達と会って話してみたい、と願っている。けれど日常から離れると、不思議と日常のことを"少し遠くから"よく考える。


仕事で関わっている子供たちは今頃何してるかな、なんて思ったり、お土産を選んでる時、家族と暮らせてみんな元気でいてくれることが嬉しいなと思ったりする。そんなふうに、日常の幸せに気づかせてくれるのもまた、旅の好きなところ。


これから、まだまだ色々なところを旅したい。
そんな中で、大切な人の顔を思い浮かべたり、日常に思いを馳せたりするのも、いいなと思う。


次はどこに行こうかなあ。


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