Hot Toasters「felucca」

01.  Jelly Fish
02. 夏の王国
03. 理由は誰も知らない
04. 楽園のMilk
05. 雪渡り
06. Peach Melba
07. 桐の燭台
08. Fly with Jinn
09. felucca
10. 祝祭の日
11. 雨が過ぎるまで
12. Open the Sesami
13. 星空の少年

 


2018年発売。25年ぶりの2ndアルバム。といっても1stが出たあとバンドが活動休止するまでの数年の間に録りためた曲のお蔵出しといった内容。こちらもナラサキプロディース。
クレジットを見ると、95年~98年頃に録音された曲が中心。この頃にはドラマーもいたよう。

 

 

ホーンが幕開けを告げたあと、メタリックなリフからジャンクでミクスチャーなAメロ、そしてホーンの音色と共に解放感のあるサビへ。ジャンキーでダンサブルで高揚せざるを得ない①からスタート。

②はタイトル通り南国っぽいスカなリズムが続き、その後ギターが轟音で襲ってきたり、ジャズっぽい雰囲気にもなったりと、このバンド特有の表情がよく変わる曲。夏の終わりに時の移り変わりを重ねているような歌詞のしんみりとした雰囲気を醸し出しているアコギの旋律も印象的。

サビ前くらいからの色気のあるホーンの響きが印象的な③。そのあとのサビも魅力的。ジャジーでムーディーな曲。

④はCreek Dust収録曲の別バーション。こちらのほうがギターがよりメタリックで、転調前のホーンのタメが長い。ナラサキさんプロディースだからか、終盤のギターにディーパーズ色を感じる気もする。

⑤もCreek Dust収録曲の別バーション。テンポが少し早くてホーンが醸すパーティー感も強い気がする。サビのギターは割れ気味でかっこいい。

全編ラテンな雰囲気の⑥に続いて、音の質感がグランジっぽい感じがする⑦。だがこの曲もホーンやギロの響きに時折やはりラテンっぽさがあるような気もする。

⑧はギターの響きが魅力的。どの曲もそうだけど、ギターの旋律に千田さんの伸びやかなボーカルが重なるときの、この少しせつなさも感じさせる胸を締め付けてくるこれはなんだろう。千田さんの声も単体としてはそんなに魅力的には感じないのだけれど、楽曲のなかで前に出るでもなく埋もれるでもなく、他の楽器と並んでそれぞれの音が独立していて、だけどそれらが重なったときには景色が広がるようで、とても惹きつけられる。

⑨は始まりと終わりはフィエスタっぽい感じだけど、午睡に見る夢のようなゆるやかな雰囲気の曲。川に浮かべた小舟が午後の光のなかで揺れているように、穏やかで沁みてくる音色。

短いインスト曲の⑩。アコギと奇声のように聴こえるサックスの曲。

⑪もグランジっぽく聴こえる曲。淡々と続いていくギターにホーンとボーカルが絡んで、サビに進むにつれてだんだんと惹き込まれる。ちょっと見方を変えればシューゲソングのようにも感じる。

⑫はCreek Dustに入っててもおかしくないあのアルバムの色のする曲。どんどん展開し、ダンサブルでありながら、せつなげな音色も散りばめられたCreek Dust期の集大成のようにも聴こえる曲。

ラスト⑬はインストの曲。ギターの美しい旋律が胸に沁みてくる。昔の名曲のカバーのようだ。91年レコーディングと、このなかで最も古い音源。

 

ほんとうに素晴らしいアルバム。Creek Dust以降の曲が大半で、Creek Dustというあのとんでもないアルバムからさらに進化してる様が感じられる。ひとつにはドラマーがちゃんといるというのはやはり大きいのかなと思う。あとCreek Dustのいろんな音のカオスっぷりもかっこいいのだけれど、それ以降の曲はもっと音のメリハリがあって研ぎ澄まされているような感じがする。長いこと唯一のアルバムだったCreek Dustをずっと聴いてきたのだけれど、今となってはこちらのアルバムの方が好みかもしれない。
いずれにせよ、現存する2枚のアルバムとも他では聴くことのできない唯一無二の音。決して知られてるとは言えないところが悔しいのだけれど、このバンドがいまも存在してくれていることはほんとうに貴重だし、日本の宝のような存在だと思っています。



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