ゴルシ様がメジロ家ではない理由をできるだけわかりやすく解説する
こんにちは、印度孔雀です。
先週末の競馬、本当に最高でした。日経賞タイトルホルダー逃げ切り勝ち、高松宮記念の大荒れと多くのホースマンの初G1、ドバイターフのパンサラッサ粘り勝ち(同着)、シーマクラシックのシャフリヤールの勝利。素晴らしい週末でしたね。
さて、毎日の日課のごとくツイッタランドを徘徊していたら、こんなツイートを見かけました。
競馬界隈ではお馴染み、競馬評論家の花岡貴子氏のツイートです。
私はウマ娘のアニメを観たあと、割とすぐ競馬を履修し始めました。そこから競馬沼にズボンと落ちてしまったわけですね。そして、そこから現在まで、競馬知識の拡大のため日々研究(大袈裟)を重ねているわけです。
そういうルート(ウマ娘→競馬)を辿っている方は私以外にも多くいらっしゃるでしょうが、多くの方が最初に躓くのは、やはり冠名と血統ではないでしょうか。実は私もウマ娘にハマったばかりの頃はナリタブライアンとビワハヤヒデが兄弟である事に納得がいっていませんでした。ビワハヤヒデとナリタタイシンの絡みが多いので尚更ですね。
なぜ同じような名前を持っているのに兄弟や親子じゃないのか?というか何でこんな共通している名前を持っている馬がいるの?...冠名についての認識は、やはり競馬についてのある程度の知識がなければ理解するのは難しいかもしれません。
また、親子関係なども難しいところが多いですよね。スペシャルウィークとサイレンススズカとフジキセキ(他etc)に共通してる父サンデーサイレンスって何者!?という疑問は、ウマ娘から競馬に入った人の多くが最初にぶつかる疑問かもしれません。
というわけで、今回の記事では、タイトルの様な事例を通して、ウマの冠名と血統について解説していこうと思います。間違いなど無いようにしっかり精査して執筆しておりますが、万一誤っている箇所などあればご指摘ください。
①メジロ家は家族なのか?
まずは冠名についての説明をしていきます。と言ってもメジロ家はよりによって競馬界の中でも少し複雑なので、まずはナリタブライアンやビワハヤヒデでお馴染みのナリタとビワの冠名について画像を用いて説明し、前提をご理解頂こうと思います。
以上の画像では、赤文字で共通しているパシフィカスがそれぞれの母親であることが分かります。このパシフィカスが出産した子馬を、パシフィカスを繋養している牧場がセールに出品します。そして、少し省きますが、ビワ(中島勇氏)が購入したのが後のビワハヤヒデ、ビワタケヒデとなる馬で、山路氏が購入したのがナリタブライアンだったわけですね。
この「ビワ」「ナリタ」というのは、それぞれのオーナーが所有している馬が、他の人から見た時に「〇〇が持ってる馬だな」ということを名前から判断できるように共通してつける屋号のようなものです。これを冠名といい、必ず設定するよう定められているわけではないですが、現在においても多くのオーナーさんが使用されています。ウマ娘においては、「タイキ」「スズカ」「サクラ」「マチカネ」「トウカイ」「ダイワ」「シンコウ」「ヒシ」「シンボリ」「エア」「アグネス」「タマモ」「セイウン・ニシノ」「カフェ」「マヤノ」「アドマイヤ」「エイシン」「カレン」「カワカミ」「トウショウ」「シチー」「スマート」「ゼンノ」「トーセン」「ナカヤマ」「バンブー」「マーベラス」「ビコー」「メイショウ」「ダイタク」「ヤエノ」「サトノ」「キタサン」「ツルマル」「ヤマニン」が冠名です。
そして、例に漏れず「メジロ」も冠名になるのですが、実はメジロの冠名は「メジロ牧場」「メジロ商事」の2つの名義で使用していました。ちなみに、
メジロ牧場名義のウマ娘はブライト、パーマー、ライアン、アルダン
メジロ商事名義のウマ娘はマックイーン、ドーベル
となっています。
基本、「メジロ牧場」名義の馬たちはその名義の通りメジロ牧場にて生まれた馬です。「メジロ商事」名義の馬は、メジロ牧場の生産ではない馬の名義として使用されました。ただし、メジロドーベルはメジロ牧場の生産です(なぜ商事名義なのかは分からないです)。
ということで、「メジロ家」というのは、「オーナーがメジロ商事or牧場で、冠名がメジロ」のウマ娘たちの集まりなわけです。実馬の血縁の有無(ライアンとドーベル・ブライトは史実で親子だけど、ライアンとマックイーンには血の繋がりはない、つまりマックイーンとドーベル・ブライトにも血の繋がりはないことなど)は関係なく、メジロの名を持つウマ娘を一族と見なしているわけですね。ゴールドシップはメジロの名を持たないため、メジロ家には含まれないということです。
では、ゴールドシップはなぜマックイーンの孫であるのにメジロの名を持たない(メジロ商事が所有しない)のでしょうか?
この点について、次の項目で解説していこうと思います。
②ゴルシはメジロ家になりうるか?
まず、競走馬の父親となる種牡馬(ほとんどは元競走馬)についての認識をわかりやすく表現するにはどうすればよいか。私なりに考えたのがコチラ。
一夫多妻制(ただし夫は単身赴任)
...これだけでピンと来た人もいるかもしれませんが、擬人法を用いてもう少し噛み砕いて説明することにします。
この男性Aをメジロマックイーンに置き換えてみてください。スタリオンに繋養されたマックイーンは、そこにやってきた繁殖牝馬に種付けし、子が誕生すると、それがメジロマックイーン×その牝馬の産駒となるわけです。種付けは何頭もの牝馬に対して行われ、全てが無事に産まれてくるとは限りませんが、そこで生まれてきた子はマックイーンの子でありその牝馬の子ということになります。
そして、そんなマックイーンが種付けした牝馬の中に、パストラリズムという牝馬がいました。後、パストラリズムは無事1頭の牝馬を出産しました。その馬の名はポイントフラッグ。彼女はチューリップ賞2着、牝馬G1にも3度出走している名馬です。そんなポイントフラッグも引退後は繁殖入りし、キンイロリョ...ステイゴールドが種付け相手として選ばれました。そして、この2頭の間に儲かった子がゴールドシップなのでした。
人間であれば、パストラリズムとマックイーンが2人でポイントフラッグを育て、ポイントフラッグとステイゴールドが2人でゴールドシップを育てるのでしょうが、馬の場合はそうはいきません。種牡馬はプライベート種牡馬(誰かから出資されていない、個人で管理する種牡馬)であったりしない限り、文中で度々登場するスタリオンと呼ばれる施設におり、そこでシーズン中は日々種付けに励んでいます。子供が生まれても、構うことはできません。よって、親子らしい親子関係が成立するのは、基本的に仔馬と母馬の間だけであるのです。
ちなみに同じような理屈で、父親が同じであっても、母親が違うときは競走馬の場合「きょうだい」とは扱いません。母親のみが一致する時に「半きょうだい」、両親が一致する時は「全きょうだい」と呼ばれるようになります。一番最初のナリタブライアンたちの画像を見るとわかりますが、ナリタブライアンとビワハヤヒデは「半きょうだい」、ナリタブライアンとビワタケヒデは「全きょうだい」と呼ばれることになります。
話を戻します。パストラリズムの繋養先はメジロ牧場とは全く関係の無い牧場であり、その産駒(ポイントフラッグ)を購入したのはメジロ商事ではなく、パストラリズム、そしてゴールドシップと同じ小林英一氏です。そして、ポイントフラッグの繋養牧場もメジロ牧場とは関係ありません。これらの事から、ゴールドシップは生まれた時点でメジロの馬になる所以はないのです。メジロマックイーンレベルの種牡馬であれば(結果論としてG1馬は出なかったとはいえ)たくさん種付けしますから、その産駒全てをメジロ商事で買う訳にもいきませんし、孫となれば尚更です。
ということで、競走馬ゴールドシップにとって、メジロマックイーンは血統表的には祖父にあたっても、会うこともなければ見ることもない(というかマックイーンが06年に急逝しているため09年生まれのゴルシは物理的に会えない)ので、直接の関わりのない母父との絡みがあること自体がウマ娘ならではなのです。ですから、母父⇔孫のような関係であれば、余程のことがなければゴールドシップがメジロの馬になるということは起こりにくいと考えられます。重賞を勝っていないような牝馬の産駒は、母と同じオーナー(この場合小林氏)の元で走ることが多いですし。もし起こりうるとすれば、マックイーンの種付けした馬がメジロ牧場の馬であった場合くらいではないでしょうか。
なお、ウマ娘における母父の絡みについては、現時点ではキタサンブラックと母の父サクラバクシンオーのカップリングは馴染んできていますが、母父メジロマックイーンとなると(現時点でお蔵入りの)オルフェーヴルやドリームジャーニーなどがいるので、今後追加されるであろうウマ娘たちとの関係がどうなるのかが気になるところです。
まとめ
というわけで、ゴールドシップがメジロ家ではない理由を分かっていただけたでしょうか。解説した内容をまとめると、
メジロの冠名でない
ゴールドシップの牝系(ポイントフラッグ→パストラリズム→・・・)にはメジロ牧場産の馬がおらず、メジロに買われる所以もない
ということになります。とりあえず覚えていて欲しいのは、近親の馬がすべて同じ冠名になるというわけではないという事ですね。そもそもメジロ「家」という括り自体、ウマ娘独自のものです。
おわりに
今回の記事はいかがだったでしょうか。少々長くなってしまいましたが...
血統表、最初は難しいところが多いとは思いますが、読み解けるようになるとどんどんその面白さに気づくのではないでしょうか。ウマ娘の登場馬の血統表から他の馬に派生していくのも、なかなか面白いですよ。
それでは、また次の記事でお会いしましょう。印度孔雀でした。
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