森をカートに入れる
さて今日は何をしようか。
毎朝の、布団内会議の議題である。
1月、二人とも仕事の予定はない。
毎日を、好きに作り放題である。
午後、狩りに出ることになった。
庭に植えるべく、森に苗を探しに行く。
相手がじっとしているから狩りとしては軟弱。
狩りとスカウトと買い物の中間、というところか。
まずは行きの道で、ウィンドウショッピング。
目ぼしい「商品」を見定める。
帰りの道
ネット上では指1本でカートに入れるところを
全身で掘って一輪車に乗せる。
スタジオ周りに植えて完了。
望み通り、植物園になってきた。
ここに住んで9年目、環境も二人の関係も
やっと「作る」から「整える」に入ってきた気がする。
電気ガス水道などない一面の雑木林から始まり
住む所や社会からの承認がない二人から始まった。
どちらも、進めるのは無理だと言われたが
予感の方を無謀に選んだ。
途中、他の地に移ること、別々に暮らすことを
何度も何度も何度も選びそうになりながら
それでもここに、二人でいたら
根が張ってきた気がする。
初期に生垣として植えた柘植(つげ)と共に
いまだに小さなことから争いになって絶望するし
水道も洗濯機もお風呂もないけれど
旅の必要を感じなくなった。
朝ここで目覚めて薪を割ってミルクティーを飲んで
その日常にワクワクする。
どこかに、隠れる気持ちがあった8年を経て
根を頼りに、枝を伸ばしてみる。
さて、何から叶えていこうか。
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