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暗闇マジック 

2022、12、13

滅多にない、霧の深い夜になった。

どんな様子だろうと、家の前の田んぼ道に散歩に出る。


途中、霧が晴れて振り返ると、家のある森の上に大きな月がある。

驚き眺めながら帰路を歩くと急に霧が濃くなり、月が雲に消え

黒く霞む中に我が家の明かりだけが頼りなく光る。

左が月、右が家


この日は梨木香歩の「裏庭」を読んでいて

異世界に迷い込むには最適な夜だ、と少し身構える。


残念ながら無事、家に戻る。

夫は今夜、レコードを聴く日、らしい。

私はそれをBGMに、本の続きを読む。


ピアノの演奏になった時

思いついて部屋の電気を消してもらった。

暗闇効果は想像より大きく

部屋がコンサート会場に変身して(ヘッド写真)、音が迫った。

視覚が減ると、聴覚が補うのだろうか。


8才頃、暗い部屋で「反省」をさせられていた。

何の罰かは覚えていない。

外の雨の音がいつもより大きく、さらに強くなる。

あれ、部屋が揺れてる。

大変だ、洪水でこの家、流されてる!

焦って、そう母に伝えようとドアを開けたら

「まだ入ってなさい」と言われ

でも、と思いながら一人だけ、流されている暗闇に戻った。



薪ストーブで暖かいコンサート会場から

湯たんぽふたつの布団に入る。

窓から月が見える。


8才の私よ、闇に紛れて、呪文を唱えて、こっちにおいで。

暖かい布団の中で

でも、の続きを、いくらでも聞きたいよ。


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