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少し先の未来のIRについて

皆様、どうも初めまして。重松さんが素晴らしい企画を立ち上げられたので、足早に週末の貴重な枠をおさえていた伊藤研一と申します。

自己紹介が苦手ですが、人生で一番時間を費やしてきたのは、サッカーです。4歳から始め、昨年まで都リーグ(二部)等でプレーしていました。現在の身体(BMI25前後)で活躍できるわけもなく、練習試合しか出られませんでしたが、証券アナリスト(超ニッチかつ、運動より勉強が得意な人たち)の中では、断トツにサッカーが上手い人(勉強がそこまで得意ではない人)と認識しても貰えると幸いです。

今回は、個人の見解を述べますので、社名は非開示とさせて頂きますが、運用会社も含め、7年近く、アナリストとして様々な企業を取材しております。少しでもお役に立てるアウトプットになればと思っています。

何について書こうか、とても悩みました。取材内容、取材企業の選定基準、良いIRの定義、証券会社にカバーしてもらうには、など、色々と検討しました。それぞれニーズはあると思いますが、今回はSNS等を活用したIRを積極的に行われている先駆者の皆様と進めている企画であることを踏まえ、未来のIRについて、少し考えてみたいと思います。

IRが良いと取材時間は短くなる

IR担当の皆様、一般的にIR取材は、一時間のアポイントが大半だと思いますが、30-40分で終わるケースや、15分程度の電話ミーティングのみのケースってどれくらいありますでしょうか。

情報開示が優れている場合、機関投資家やアナリストからの質問がより本質的な内容に変わり、質問数や取材時間が減少することがあります。セグメントの内訳や、単価×数量等の主要KPI、子会社の動向、など、投資する上では重要な情報をきちんと開示頂くと、実績の確認(過去)より、業績動向(未来)にフォーカスし、的を絞った質問が可能となります。

一方で、情報開示が悪いと、基本的な内容(事業内容や、主要KPI、競合、市場など)、やブレイクダウンの確認に時間が割かれ、一時間ではヒアリングしきれないこともあります。投資家からしたら、取材時間が短くて済む会社のほうが生産性が高く、投資しやすくなるわけです。

そうは言っても、情報開示自体は、過去と比べると、とてもよくなってきています。特に、最近上場した企業は、成長可能性資料がとてもわかりやすい。下記のツイートにもある通り、JPXが中心となって、進めてこられた成果と思っています。


また、決算説明会の議事録や、決算説明会動画のアップロード、シェアードリサーチ等のレポート、note等を活用した捕捉資料、月次開示、Twitterによる質疑応答、取材代行サービスなど、従前と比較すると、会社側と投資家のコミュニケーション手段が多様化している点も大きな変化ですね。

これから本当に伝えてほしいこと

それでは、情報開示の進歩や、手段の多様化を踏まえ、これから先、もっと各社が発信しなくてはいけないことは、どういった内容でしょうか。下記は、ソフトバンクグループの決算説明会ハイライト動画です。

めちゃくちゃ面白くないですか?もちろん、孫CEOが桁違いにプレゼン上手というのもありますが、投資してなくても、三か月に一回、聞いてみたいと思いますよね。私は、時価総額の大小に関わらず、対外的にもっと会社のビジョンやミッション、将来実現したい世界、解決したい課題、事業環境の変化等について、熱く発信していって欲しいなって思っています。

まず、大前提に、決算説明会とか、IRに関連する対外的な発信って、やっぱり堅苦しくて、面白みに欠けるんですよ。特に、決算説明会なんて、所要時間の半分は、書いてあることを読み上げてるだけですし、聴いている側も、みんなで粗探しするみたいな雰囲気があって、私はあまり好きではありません。コミュニケーション手段は多様化しているので、言葉で伝えられる説明会のような場所では、もっと想いとか、感情をさらけ出した内容にしてほしい。

また、IRの機会(決算説明会や機関投資家向けスモール、中期経営計画発表、事業戦略説明会)を使って、視座を上げて欲しい。上場すると、社会的な圧力をたくさん受けるわけです。株価も気になるし、期初計画を達成するプレッシャーなど、短期的な視点になりがちなんです。だからこそ、IRの機会を活用して、改めて高い視座でビッグピクチャーを語ってほしい。そして、そういった話がしやすい環境を聞く側も作っていくことが重要であり、それこそ、IR(インベースターリレーション)ではないかと思っています。

ちなみに、毎回、社長がスピーカーである必要もないんですよ。開示資料が充実していれば、細かい話を投資家の前でする必要もないわけです。今期は全社的に○○に注力しているので、○○事業部長が30分プレゼンしますって、聴く側からしたら面白いんですよ。この機会でしか、話が聞けない訳ですから。こういったことが出来るのは、やっぱりIRがしっかりしていて、決算等のポイントをしっかりフォローできているからなんです。

加えて、各企業が数年先の将来をどういう風に考えているかって、これ以上ない経済情報なんです。例えば、半導体企業が、工場をどの規模感で増設したいか、2-3個ふやしたいのか、20-30倍にしたいのか、具体的な数字はい言えなくても、聴いている側が会社側の熱量から推し量れると、情報価値はとても高く、それだけでフォローする価値ある会社って評価になるんです。

IRを面白く、株式投資をもっと面白く

最近、ワールドカップの本田圭佑の解説が面白いって、世間を賑わせていますよね。コスタリカ戦でも、『4番穴やぞ!今日は4番や!』、『コスタリカあんあ強ないぞ』とか、結構ズバズバ言ってました。実際、的確かつ、感情を込めて、サッカー未経験者にも伝わる言葉で発信していました。

上述のように、議事録や、動画、note、SNSなどを活用した会社側と投資家のコミュニケーション手段の多様化って、民放のみならず、ABEMAでワールド杯が放映されるようになったことに例えられるんじゃないかなと思っています。

放送している内容は一緒だけど、放送する手段が変わり、解説も変わるだけでこれだけ面白くなるわけです。私は、少し先の未来のIRに、この変化を期待しています。手段の多様化は大きな一歩ですが、これからは、手段を活用し、もっと熱量のある、的確な、面白い情報発信が出来ると思っています。

パシマエさんのツイートにもコメントしましたが、政府はNISAの投資金額を倍増(資産所得倍増プラン)させる意向です。5年間で28→56兆円まで、投資金額を拡大させるということは、毎年5兆円くらいの新規投資が生まれる可能性がある訳です。そして、この新たな投資は、今まで投資をしたことがない人達が中心となる訳です。

老後資金等に充てるための重要なお金であり、債券とか、不動産とか、コモディティとか、投資信託とか、色々組みあせた安定運用が基本線でしょう。ただ、個人的には、毎年5兆円のうちの、1%に当たる500億円でも良いから、日本の成長企業にお金が流れてほしいなと思っています。

そのためには、やっぱり、面白さが不可欠なんです。熱量が大切なんです。投資したことない人たちを巻き込んでいかなくてはいけないんだから。

IR担当をしていると、自社の株価の動きがだんだんわかってきませんか?業績と投資家との対話を通じて、株価の変数や、市場の期待値、等を感じれるようになってきていますよね?もし、そうであれば、IRを面白くするだけでなく、株式投資そのものをもっと面白くしていくことが出来る立場にいる方々ではないでしょうか。自社の企業価値向上のみならず、企業成長による豊かさを、是非たくさんの人に届けてほしいです!!

最後までありがとうございました。




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