掌編いろは/る「留守でする」

家にはぼく以外誰もいない。
棚の奥のアレを移動させるのは今しかない。
誰にも見つかってはいけない。
まず奥のアレを確認しなければいけない。
そのためには一番高いイスの上につま先立ちになるしかない。
棚の奥にはなにもいない。
ぼくは焦るしかない。
アレはぼくしか知らない。
つまりぼくの明日はないのかもしれない。