掌編いろは/あ「あやとり」

「文取り(あやとり)」という職種は、ここでは重要な役割をもつ。
 まず無駄な語尾をピンセットでつまんで廃棄する。「あのぅ」の「ぅ」等だ。
 やたらおおい装飾語、擬態語も最低限を残して廃棄される。
 本によって中身がすかすかなのは、文取りが仕事をした後だからである。
 標準語と方言は分別がむずかしく、方言専用の文取り資格試験もあるという話だ。
 ちなみに廃棄された言語はシュレッダーのなかでインクに戻る。