掌編いろは/そ「層」

それは音もなく、一日一段ずつ積み重なっていく。
おおきな層のすきまを埋めるようにちいさな層があるのも、いい。
場所によっては斜めの層がすばらしいバランスで保たれているのも、いい。
これは芸術といってもいいだろう。

だがしかし、そのうつくしさは足踏みひとつで崩れ落ちるのだ。
今、ひとつの衝撃が、この層を次々に崩してゆく。崩れてゆく。


「読みもしない本を積み上げているだけじゃない。ああもう、邪魔!」
掃除機の轟音とともに、書庫の通路が本の山で埋まった。