マガジンのカバー画像

「場所」の声を聴く〜「空間」から批評を立ち上げる

チェーンストア研究家・ライターの谷頭和希が、いろいろな「空間」を批評していきます。街のこと、田舎のこと、郊外のこと、チェーンストアのこと、テーマパークのこと。さまざまな空間をめぐ…
月4回以上、更新します。2〜3日に一回更新が努力目標です。それぞれの記事は単体でも購入できますが、…
¥500 / 月
運営しているクリエイター

#保坂和志

祈りのテロリズム――『猫に時間の流れる』をめぐって

 結論を言います。  保坂和志とはテロリストである、と。  もちろんこの2つの言葉は、その小説の表層を読むだけではつながりを持てません。それどころか、保坂和志と共に1990年代を代表する作家の1人である阿部和重が露骨にテロを取り扱ったのに比べれば、保坂はむしろそうした暴力的な表現からは程遠く、対極にいる作家であると認識されることが多いのではないでしょうか。  というのも保坂の作品においてはそもそも――しばしばそれが非難の対象になるように――物語らしい物語が起きないのです。

¥300