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フラップレスインプラント手術について

今回は、以前ご紹介した「損をしないためにインプラント施術について知っておく」という記事の中で触れられなかったフラップレス手術について、ご紹介していきましょう。2019年10月時点で調べた結果、東京都内でフラップレス手術の平均は35万円となっています。

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フラップレスインプラント手術の広告について

フラップレスインプラント手術には、「歯茎を切らないフラップレスインプラント」、「痛みが少ないインプラント」、「腫れや痛みが軽減」などの広告がインターネット上に見られます。もちろん、これらのメリットは事実ではあるのですが、ややおおげさな文言にも感じられます。

切開や歯肉の剥離を伴わない手術方法ですから、出血は少ないと思われますし、軟組織の腫れや疼痛が少ないのも理解できます。しかし、この広告を見た方は、ほとんど痛みや出血などが無いと思ってしまうことも考えられます。痛みの感覚は人それぞれですし、骨を削る感覚はあります。

あくまでも、通常のインプラント手術と比較して、という部分をくれぐれも忘れないようにしてください。

フラップレスインプラント手術を疑問視する声も

広告が多い一方では、フラップレスインプラント手術を疑問視する声もあがっています。理由としては、使用するサージカルガイドが手術中にしっかりと固定できるかという問題で、動いてしまったら正確な埋入ができないという疑問です。また、外科手術の基本である目視で患部を確認できないということに、疑問を抱く歯科医師もいます。

フラップレス手術について

では、実際にのフラップレスインプラント手術と通常のインプラント手術の違いはどのような点にあるのでしょうか。メリットとデメリットも含めて見ていきましょう。
参照記事
【医師監修】フラップレス(切らない)インプラント手術の全て

フラップレスインプラント手術と通常のインプラント手術の違い

通常のインプラント手術では、まず歯肉をメスで切開して、歯槽骨を露出。埋入位置を確認しながらドリルで穴を開けます。その後はインプラント体を埋入して、2回法の手術では剥離した歯肉を縫合し、オッセオインテグレーションが確認されれば、2次手術として再び歯肉を切開して、アバットメントを装着します。

一方で、フラップレス手術の場合には、歯科用CTスキャンのデータを利用してコンピュータ上でシミレーションをおこないます。そのシミレーションの結果から、手術で埋入位置や角度などをガイドする「サージェリーガイド」というマウスピースのような器具を製作します。手術はサージェリーガイドに開いている穴から専用の器具を差し込んで骨を穿孔していきます。フラップレス手術の場合、多くは1回法ですから縫合と2次手術は、おこなわないことが多いです。

フラップレスインプラント手術のメリットとデメリット

フラップレスインプラント手術のメリットは、ご紹介してきたように、切開を伴わないため出血や腫れ、痛みが軽減されることです。また、手術では1回法でおこなわれることが多いため、2次手術が不要になり身体的な負担が減ること、治療期間の短縮も考えられます。

デメリットとしては、患部を目視できないため、なにかの障害があったときに対処がしづらいということが起こりえます。なにかあったときに、臨機応変に対応できる歯科医師の技量が大切になります。

フラップレス手術の症例


75歳の男性の患者さんの症例です。下肢深部静脈血栓症という、静脈の奥で血栓ができてしまう疾患の既往があるため、ワルファリンカリウムという血液が凝固しにくくなる薬剤を服用しています。義歯の安定が悪くインプラント治療を希望していました。しかし、インプラント手術では薬剤のため止血が困難になることも予想されましたが、服用を中止すると血栓により肺塞栓など発症する恐れもありました。そのため、出血が抑えられるフラップレス手術によってインプラント体を埋入することに決定。術中や術後の大きな出血もなく、経過も良好でした。切開を伴わないというメリットが出血傾向にある患者さんに合致した症例です。

参照記事
https://www.jstage.jst.go.jp/article/jsoi/28/4/28_515/_pdf

まとめ

フラップレス手術では、出血や痛みが抑えられる可能性があり、現在では多くの人が希望する治療になっています。しかし、患部を目視できないというデメリットもあり、これを解決するには経験が豊富な歯科クリニックを選択する必要があります。自分の治療を任せられるクリニックの条件は、「複数の選択肢を患者に提示し、きちんと説明してくれること」、「歯科用CT、手術室といった設備が整っていること」、「料金が明示され、担当する医師がインプラント学会の指導医などの資格を持っていること」などがあげられます。

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