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嘘日記 5月2日

昨日見た時に無かったはずのものが今日となってそこに在る。そんなことはこの世の中において、さして珍しいことでもないのだろう。例えば顔にできたニキビであったり、アスファルトにできたヒビ割れだったり、部屋の隅に現れた顔色の悪い少女であったり、それは如何様にも考えられうる。

ちなみに如何様と書いて「いかよう」と「いかさま」という二つの読み方ができるのをご存じであろうか。意味も全く違ったものになる。小生、今日の日記をしたためている時に偶然発見してあ!すごいなっておもいました。

さて、冒頭に戻るが今日小生が発見した、昨日は無くて今日在ったものというのは蜂の巣である。そう、ハニカム構造のあれだ。



玄関の扉を開けると視界の端になにやら突起した物を認めた。認めてから認めなければよかったと悔やんだのは人生においてこれで17回目であった。直径4センチほどのそれは素人目からみてもこれからその数倍は大きくなることが容易に想像された。

あいにく虫を平気で潰すような屈強な女(母、妹)たちは出払っていた。家には小生しかいないはずであった。どうやらひとりで立ち向かわなければならないようだ。

ゴキジェットとスコップを装備して主のいない隙に城を落とすという妙案を閃く。が、それを遂行しようとスコップを探していたほんの1分の間にさっきは居なかった4センチの城の主がどこからともなく帰還している。

帰ってくるなら一言言ってくれればよかったのに。

とにもかくにも小一時間の戦闘の末、小さな城を壊滅させることに成功した小生であった。

それにしても今日は5月とはとても思えないほど暑い一日であった。聞くところによると30℃近くまで気温は上昇したらしい。

ただ、そんな猛暑でも家の中は存外にスズシイものである。一仕事を終えた小生を見て顔色の悪い少女が部屋の隅で不気味に嗤っているのであった。

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