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ぐいっと

5月。

職場が、死ぬほど忙しかった。


犬好き上司はあまりの忙しさに、貸与されている店舗用ガラケーを壊した(男の子って力強いんだねぇ)。
液晶が死んだため、どこから電話がかかってきたかがわからない。

あ、彼の名誉のために言っておく。
故意ではなく、あくまで事故です。
慌てて出ようと、ぐいっと開いたんだろうね。

「芋さん、ちょっと耳に当ててて」
開くと蝶番がガクガクするガラケーを渡され、3メートルほど離れて彼は「聞こえる?」と自分のスマホに小声で話す。
微かにガラケーからも聞こえるが、直の声の方がクリアなレベルだ。

「店長、諦めましょう。こいつはよく頑張りました。」
当方が言うと、彼は黙ってスマホを切った。


「一度、ガラケー圧し折ってみたかったんですけど、引導渡していいですか?」
ワクワクしながらおねだりしてみる。

彼はニコリともせずに、ガラケーを右手と左手に分けた。


もう、なってたんか。
(・д・)チッ


ていうか、真っ二つになっても着信するんだねぇ……。



5月。

ガラケーが死ぬほど、忙しかったのである。



下っ端の当方レベルで残業が発生するのであるからして、当然上司ズは帰れない。

犬好き上司が、出勤するなり栄養ドリンク2本を一気飲みしていたので、猫好き上司にチクってやった。
「代行。店長が栄ドリ2本、一気してまふ」
「あ〜、2本は駄目だよ。お腹壊すよ。芋さん、あたしトイレ行ってくる。」

…………お前もかい!!



今週ようやく、上司ズの疲れた顔に、うっすらと笑顔が戻り始めた。

栄ドリを一本で止めておいたのに、当方もイマイチ腹具合が良くない。
飲み慣れないものは、止めたほうがいい。

ぐいっとイクのは、ほどほどに。



☆ヘッダー、お借りしました。ありがとうございます。

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