夜を彩る
家族芋が寝静まると、ようやくひとりの時間である。
遅番から帰ればいつでもひとり時間だが、ちょっと油断しているとすぐに朝が来る。
休みの夜は、貴重である。
夕飯の洗い物をやっつけたら、お気に入りのグラスに液体を注ぐ。
飯時に呑んだものは、風呂に入ればリセットだ。
読みたい本と雑誌を並べ、どれにしようか迷いながら。
ネイルカラーのケースをいそいそ取り出す。
仕事柄、手には透明しか使えない。
好き勝手に彩るのは、形の悪い足の爪だ。
ベースが乾くまで、今日は何色にするかをゆっくり悩む。
推しの根本凪のカラー、ミントグリーン。
自分の夏の定番、ターコイズ。
雑誌の付録の淡いイエローも気になる。
春に友人に渡したのとお揃いのラベンダーミルクも、まだ使っていない。
靴下で隠す、内緒の自分。
一回で使い切るような儚いサイズのミニネイルが好きで、コンビニでつい買ってしまう。
去年、数字の看板の店で、星の王子さまをイメージしたシリーズを見つけ、使い切れないほどストックしてしまった。
ミントグリーンは盛夏に取っておくことにして、
ビンテージデニム、と書かれた小瓶に決めた。
ガラス越しの色と、爪に乗せた色は全く別ものになる。
それを、乾かしては重ね、また乾かす。
自分好みの色になるまで。
至福のひと時だ。
ネイル屋さんに行けば、もっとずっと綺麗に仕上げてくれるだろう。
きっと、座ってウトウトしていればいいのだ。
しかし、
はみ出した!なんて思いながら、ゆっくりと自分の爪に向き合うこの時間は、自分のためだけにある。
最高に贅沢なツマミなのだ。
乾くまで、布団には入れない。
それを言い訳に。
もう一杯と、もう一冊。
☆ヘッダー写真、お借りしました。ありがとうございます。
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