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小説のような

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詩のような、短い空想と妄想と雑念。
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2024年3月の記事一覧

ウルトラマン«小説»

ウルトラマン«小説»

朝からくたくただよ。
昨日も一昨日もその前もだけど。

ゆっくり寝たいなぁ……。
幼稚園行くようになったら寝かせてもらえるのかなぁ。
いや無理か、もう一匹いるし。

そっち行かないよ!
ママこっち!ここ!
どっちかカート座らせれば良かったかな…
いや、時間かかるだけだ。
ちょ、髪引っ張らんで痛痛痛たた……

触っちゃダメ!
押してもダメ!走るなって!
あー声枯れてきたわ。
はいはいよしよしよし……

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直江津1991«小説»

直江津1991«小説»

その地味な1年生は、
俺の好きな女の後輩だった。

合唱部の部長が、さばさばしたクラスメイトの女子だった。
俺が部員のA子を好きなことも、見抜いていたのだろう。
俺等が部員たちに混ざって音楽室で休み時間をつぶしたり、一緒に昼飯を食うのに文句を言いはしなかった。

片思いも3年目。
恋愛にも流行にも縁が無い俺は、高望みはしていない。A子の側でわいわい楽しんでる、クラスメイトの一人で良かった。

強面

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此方彼方の間に«小説»

此方彼方の間に«小説»

貴女からの最初の電話は夏だった

エアコンの消し方がわからくなっちゃった

急いで駆けつけると
ほっとしたように苦笑いした貴女は
まだ、還暦を過ぎたばかりだった

冬の始まりには
ストーブのスイッチを探していた
それからすぐ
貴女は嫁の顔を忘れがちになった

先生と呼ばれる日があり
ヘルパーさんになる日もあり
嫁を思い出す日もわずかにあった

次の夏には
デイサービスだけでは回らなくなり
義父が音

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