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バイキンマンでジャイアンだったお母さんから、ムスメへ。

あなたは、私に本当によく似ている。
まるで、自分自身をイチから育て直しているように感じる。

時々油断していると
【今度こそ、失敗しないように。傷つかないように。最善を選べるように。】
そんな思いが沸き上がるけれど、あなたは私の「やり直し」じゃない。
それでも、やっぱり、私のいくつもの失敗をあなたには繰り返して欲しくはない、と思ってしまう。

どうか。私よりも良い人生を。
ステキな人生を過ごして欲しい、と願ってしまう。

気付いて!
構って!
愛して!
気に掛けて!
私だけを!!!
全身全霊でそう叫んでいるようなあなたを「大丈夫だよ」と言って、抱き締めてあげたい。

「いい子」を演じて、「ね!ほら、私はイモウトよりいい子でしょ!」と言うあなた。
「イモウトが悪さしてるー」ってすぐに告げ口するあなた。
そんなことをしなくても、あなたはあなたで大好きで、イモウトはイモウトで大好きだということが、ちゃんと伝えられなくてごめんね。

あなたが泣いていると、涙を拭くためにティッシュを持って駆け寄ってくるイモウト。
あなたが「貸して欲しい」と言えば、割と何でも素直に「いいよ」と貸し、あなたが「欲しい」と言えば、割とどんなお菓子でも分けてくれるイモウト。
あなたが「お母さんに絶対に言わないで」と言ったことは、こっそり聞いても絶対に教えてくれないイモウト。

どちらが好まれるか、もう気付いているのだろうと思う。
登園すると、お友達がワッと寄ってくるイモウト。
イモウトに遊んで欲しくて泣くあなた。
私がイモウトを愛でれば、よりイモウトを悪く言うあなた。
連鎖がなかなか止まらない。

「今日はお姉ちゃんの日にしようね」と。
あなたを特別愛でる日を作っても、あなたの器は満たされない。

意地悪は意地悪で返ってくる。
優しさは優しさで返ってくる。
自分に戻ってくる時は、何倍にもなって返ってくるんだよ。
軽い気持ちで吐いた嘘や、意地悪が、Aちゃんを傷つけたなら、Aちゃんと仲の良いBちゃんも嫌な気持ちになって、Aちゃんのママやきょうだいも嫌な気持ちになって、AちゃんやBちゃんから話を聞いたCちゃんやDちゃんも怒るかもしれない。
ほんのちょっと誰かに優しくしたら、同じように、優しくしてもらった子だけじゃなくて、それを見ていた他の皆も、それを聞いた他の皆も、あなたのことが好きになるかもしれない。

善意は、必ずしも善意だけを呼ぶわけじゃないけれど。
悪意は悪意しか生まない。
悪意から善意は生まれない。

だから。
あなたがイモウトに意地悪したり、お友達に意地悪をしたのをお母さんが知って「わぁ、ステキだなぁ」とは、ならないの。
ただ、悲しい気持ちになるだけ。

「どれどれ?お母さんにも見せて!」って、お母さんが言ったのを絶対に聞こえていたのに無視して「捨てるね」ってお父さんに言って捨てちゃったけど。
あれは、その直前にお母さんがイモウトとお話していたのが気に障ったのだろうけれど。
後からお父さんに怒られていたよね。
「そんな意地悪したら、お母さんは悲しいのは勿論だけど、お父さんの大事なお母さんが、お父さんの大事なムスメに意地悪されていて、お父さんも悲しい」って。
それをお友達にしたら、お友達はどんどん離れて行くのではないかしら。

お母さんは、言い続ける。
「それは、やらない方がいい」
「そういうことは、あなた自身を堕とすこと」
「そんなことをしなくても、あなたはステキなところ、優れたところがあるというのをちゃんと見ているし、お母さんだけじゃなくてちゃんと見ててくれる人は世の中居るんだよ」って。

でもね。
年を取れば取るほど、そんなこと誰も言ってくれなくなる。
「嫌な気持ちになった」「悲しい気持ちになった」なんて伝えずに、黙って皆離れていくよ。

お母さんも、お父さんも、あなたよりは先に寿命を迎えるでしょう。
お母さん達が居なくなった時、周りに誰も居なかったら、あなたは拗らせすぎた偏屈を抱えて、孤独に耐えなくちゃいけない。偏屈なオバサンなんて、誰からも愛されないよ。
メンヘラも、ヤンデレも、偏屈なオバサンも、経験してきたお母さんの話をいつかちゃんと聞いて欲しい。

若き日のお母さんを正してくれようと、律してくれようと、穏やで暖かな世界に引き入れてくれようとした人は、何人も居た。
それは本当に労力の掛かることだし、「話せば伝わる」と信じてくれた人たちに、お母さんは感謝しかない。
それなのにお母さんはその人たちの優しさを何度も裏切って、色んなことに気付くのに、随分時間も掛かってしまったし、沢山の人を傷つけた。

もしかしたら「誰も私をわかってくれない」って思っているかもしれない。
でもそれは、多分違うよ。
あなたが誰の何も、わかっていない。

誰からも愛される存在で在りたかったら、まずはあなたが誰をも愛しなさい。
その覚悟が無いのなら、あなたにとって大切な人は、本当に心から大切にして欲しい。軽い気持ちで蔑ろにしないで欲しい。

シンデレラがお姉さん達に意地悪をし返していたら、シンデレラは愛されたかしら。
アリエルが人間の悪口ばかり言っていたら、人間の王子様と恋に落ちたかしら。
ベルが野獣に偏見を持って接していたら、野獣の魔法は解けたのかしら。
アナがエルサを信じなかったら、アレンデールの平和は取り戻せたのかしら。

苦痛や恐怖、困らせることで周囲をコントロールしようとしないで。
それはバイキンマンやジャイアンのやり口だから、皆もう辟易しているよ。

愛されたかったら先に愛して。
尊重されたかったら先に尊重して。
「愛されたいから愛してます」じゃなく、いつか自然に相手を尊重できるようになったら、きっとシンデレラにもオーロラ姫にもなれるから。
いや、その時にはもう「他の誰かになりたい」じゃなくて、自分自身をちゃんと愛し尊重して居られると良いなぁ。

ありのままのあなたを大事には思うのだけれど、矯正するようで心苦しいのだけれど、どうか苦しい生き方を選択しないで欲しいと思ってしまうのは親心か。

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