見出し画像

マルチ商法が成功するための条件を、簡単なモデルで考察してみた。

こんにちは、英語表現ライターのイミシンです。

インターネットが発達し、様々な情報が簡単に手が入るようになった現在でも、マルチ商法にハマってしまう人は一定数いるようですね。

中には、むしろインターネットやSNSを利用してマーケティングを行っている人たちもいるとか。

私は、マルチ商法に肯定も否定もしませんが、どの程度のネットワークを築けば利益が出るのか?チャレンジする人は一度考えてみた方がいいのではないでしょうか?

そこで、簡単なモデル・数学を用いて、利益を上げられる条件に付いて考えてみました。

1.マルチ商法の単純化したモデルの作成

単純化したモデルにて考えます。次の図にて、Aさんはあるマルチ商法にチャレンジすると考えます。このAさんが利益を確保する条件について考察してみます。

画像1

まず、このマルチ商法を行うにあたって、必要な会費をT円とします。

次に、Aさんを「0代目」とします。そこで、Aさんにはa人の友人がいると仮定します。そこで、Aさんはa人の友人のうち、割合pにて勧誘すると考えます。(すなわち、Aさんはa×p人に声をかけることになる。)

そこで、Aさんが確率qで勧誘に成功するとします。(すなわち、a×p×q人の勧誘に成功する。)

なお、0≦p≦10≦q≦1です。

そうすると、「1代目」として、a×p×q人の会員がAさんの下にできます。

図の例では、Aさんに友人がB, C, D, E, F, Gさんの6人(=a)いて、その内2/3(=p)の割合でB, C, D, Fさんを勧誘し、1/2(=q)の確率でB, Fさんの勧誘に成功します。すなわち、「1代目」として、Bさん、Fさんの2(=6×2/3×1/2)人が会員になります。

「1代目」の会員が支払う会費T円のうち、紹介報酬として、rの割合でAさんの手元に入るとします。(すなわち、「1代目」の会員一人につき、AさんはT×r円を紹介報酬として受け取る。)

ここで、0≦r≦1です。

同様に「1代目」の会員は、ここでは簡単のため、Aさんと同じa, p, qの値にて、「2代目」の会員を勧誘するとします。すると、「1代目」の会員には一人当たり、紹介報酬T×r円が「2代目」の会員一人当たり入ってきますが、それと同時に、「0代目」であるAさんにも、「2代目」の会員一人当たりT×r×r(=T×r^2)円紹介報酬が入る仕組みとします。

以下、同じa, p, qの値にて「2代目」の会員が「3代目」を、「3代目」の会員が「4代目」を……と続き、「0代目」のAさんは、「3代目」の会員一人当たりT×r^2×r(=T×r^3)円、「4代目」の会員一人当たりT×r^3×r(=T×r^4)円……の紹介報酬を受け取るとします。

また、一度マルチ商法に参加した会員は、必ず離脱しないという仮定を置きます。

2.受け取る紹介報酬の計算

「0代目」のAさんは「1代目」の会員一人当たりT×r円の紹介報酬を受け取ります。一方、「1代目」の会員の人数はa×p×q人です。すなわち、Aさんは「1代目」全体から、T×(r×a×p×q)円の紹介報酬を受け取ることになります。

次に、「0代目」のAさんは「2代目」の会員からは一人当たりT×r^2円の紹介報酬を受け取ります。一方で、「1代目」の会員は、一人当たりa×p×q人の「2代目」の会員の獲得に成功します。よって、「2代目」の会員は全体で(a×p×q)×(a×p×q)=(a×p×q)^2)人いることになります。つまり、Aさんは「2代目」全体から、(T×r^2)×(a×p×q)^2=T×(a×p×q×r)^2)円の紹介報酬を受け取ることになります。

以下、Aさんの受け取る紹介報酬は、「3代目」からT×(a×p×q×r)^3円、「4代目」からT×(a×p×q×r)^4円……となっていきます。

このモデルが「n代目」まで続くとすると、Aさんの受け取る紹介報酬の合計R円は、以下の式で計算されます。

画像2

3.利益が出る条件の導出

前の項にて、Aさんが受け取る紹介報酬の合計R円を計算しました。ここで、Aさんは会費T円を支払う必要があるので、利益(または損失)は、B(=R-T)円と計算されます。

実際にBを計算してみます。

画像3

ここで、p×q=sと置くと、上の式Bは、sの関数f(s)を使って、

画像4

と書くことができます。ここで、f(s)は、

画像5

です。会費Tはもちろん正の値なので、Bが利益となるためには、B>0すなわち、f(s)>0でなければなりません。

また、ここでsは、ある一人の会員の友人の内、会員となった人の割合を表し、0≦s≦1です。

4.具体的な数字でf(s)を計算

ここで、具体的な数字でf(s)を計算してみましょう。

Aさんの下にできる代の数 n=5
一人当たりの友人数 a=100
会費に対する紹介報酬の比率 r=0.2

としてみると、f(s)は、

画像6

となります。f(s)を、sの値を0から0.005刻みに代入することで計算していくと次のようになります。

画像7

上の表でハイライトしてある部分はf(s)<0となるs、すなわち、赤字になる部分を指しています。
黒字を達成するためには、s=0.03、すなわち、一人当たり3=100×0.03)人の会員獲得に成功する必要があります。

ここで、なんだ一人当たり3人でいいのか、と思う人もいるかもしれません。しかしここでは、数多くの仮定を置いており、それらを達成する必要があります。主な点は以下の通りです。

1. n=5すなわち、このマルチ商法を5代にわたって広める必要がある。
2. 全ての会員にa=100人の友人が存在し、かつpq=s=0.03の割合で、すなわち3人の勧誘に成功する必要がある。
3. 会員が離脱してしまってはいけない。(Aさんは下の全ての会員が離脱しないように引き留める必要がある。)

これらはかなり大変な仮定のようにも思えます。まず、Aさんが100人中3人の勧誘に成功したとしても、それより下の全ての会員が3人の勧誘に成功することは難しいでしょう。人によっては (i) 友達との仲を恐れ、また、 (ii) 勧誘の手法が上手ではなく、pqの値が小さく、pq=sの値が0.03に届かない会員も数多くいると推定されます。
また、そもそも全員に100人の友人がいるという条件も厳しいものではないでしょうか。
そして、下に5代にわたって、このマルチ商法が広まるというのも困難ですし、下にいる全ての会員が離脱しないという条件も現実的ではありません。(下の会員は赤字になるため、離脱に対するインセンティブがはたらくため。)

もう少し現実的に、代の数nや、一人当たりの友人数aの条件をもう少し緩めて以下のような条件で計算してみます。

Aさんの下にできる代の数 n=2
一人当たりの友人数 a=50
会費に対する紹介報酬の比率 r=0.2

この数字では、f(s)は、

画像8

となります。f(s)を、sの値を0から0.005刻みに代入することで計算していくと次のようになります。

画像9

2代でAさんが黒字を達成するためには、「0代目」であるAさんと、「1代目」の全ての会員がs=0.065、すなわち、一人当たり3.25=50×0.065)人の会員獲得に成功する必要があります。

3.25というのは小数で切りが悪いので、切り上げて一人当たり4人の勧誘が必要ということにしておきます。

5.このモデルの問題点

1. 全ての人の友人の数(=a)が同じという仮定に無理がある。
2. 全ての会員が友人の数に対して勧誘する割合(=p)ならびに勧誘に成功する割合(=q)が同じという仮定に無理がある。
3. 全ての会員がマルチ商法から離脱しないとする仮定に無理がある。
4. 代が一つ下がるごとに、Aさんが受け取る紹介報酬がrの割合で減っていくが、これが現実のマルチ商法に当てはめられるかどうかが不明。

などがあります。

6.最後に

如何でしたでしょうか?このモデルを現実に当てはめることはなかなか難しいと思いますが、マルチ商法で利益を出す難しさは実感頂けたのではないでしょうか?

繰り返しになりますが、マルチ商法を私自身は肯定も否定もしません。しかし、マルチ商法にチャレンジする方は、利益を出すためにはどの程度の規模のグループを形成する必要があるのか、概算しておくべきだとは思います。

もしよろしければサポートをよろしくお願いいたします!皆様にとって有意義な情報をこれからも発信して参ります。