推しが辞めた

昨今の推し活ブームの中、推し活ということばが流行る少し前から、私には推しがいます。バンドマンでした。すごく人間味の溢れる人で、優しい人で、歌がうまくて、ライブパフォーマンスが良くて、そんな推しを追いかけることが、私の人生になっていました。

2022年4月、10年近く続いたバンドを一旦休止するという発表をしました。

メンバーの脱退に伴う活休。推しは残るメンバーだったため、サポートメンバーを探し戻ってくる。また、活休に伴い現体制のラストツアーをする。という発表でした。

その前のツアーから、嬉しくない発表をすることは薄々勘づいていたので、全身を震わせながら1時間ほどライブを見ていた記憶があります。初めて出会った高校生のとき、どん底だった私を救ってくれたバンドに人生を賭けてきた私には、今後の人生をどうするかといった発表でもありました。

人が聞けばバカだなと思われる決断を繰り返してきた私にとって、最後のツアーのために仕事を辞めるという決断は、決して重い決断ではなく、むしろ当たり前のようにすぐに決断できました。大学受験でライブに行けないなんて信じられなかった私は、推薦入試の日程が早いというだけで決めた大学に入学し、大学の履修はツアーに合わせて組み、入社する会社もシフト制が最優先。まあそんな会社もツアー日程を見た瞬間、さすがに休みが足りないと気づいて辞めてしまったのですが。

仕事を辞めた私は9月から始まった全12公演のラストツアーに無事全通することになりました。

決めていたことは、絶対に楽しい思い出にする。ということ。一緒にライブに行っていた所謂『身内』の中には、今回のツアーで脱退するメンバーのファンもいたため、楽しい卒業旅行という気持ちで、ツアーに挑みました。
通ってきた数年の中で、推しと言い合いをしたことも、泣かされたことも、怒られたこともあるため、絶対にそういうことはないようにしようというのも思っていました。

結果としては、怒られることも、泣かされることもなかったし、身内とも楽しく全国各地を回ることができました。
ただ、今後の雲行きがよくないことも察するツアーであったことも事実です。
話せば話すほど、推しの考えていることがひしひしと伝わってきて、メンバー間の空気もなんとなく伝わってきて、それは希望がどんどん小さくなっていくことも示唆していました。

どんな話をしたのかは、私がお金を払って買っていた時間で、私に話してくれたことなので、ここには書きませんが。同様に色々聞いていたひとは察してもらえればいいし、そう言う話には触れなかったひとは変な憶測をせずに、そう言う特典会をした人がいるんだなと思ってもらえればと思います。

2022年12月24日、現体制ラストライブで私が感じていた嫌な予感は現実となりました。
バンドは活休ではなく、解散になり、推しの今後は全くわからなくなりました。
察していたため、正直「やっぱりね」と思ったのが感想。その場では涙も出ず、最後のライブとして挑んでいたライブは、好きな曲を聞けて、やり切ったという状況。もっと聞きたい曲あったけど。

そのあとの打ち上げも、思い出話に花を咲かせ、楽しく終わらせました。

それからの日々は、ifの未来を考える毎日。もし、あのとき、そんなことばかり考えたり、見えもしない推しの今の毎日に思いを馳せたりしていました。勝手に。
残されたソロ活動の、制作していたアルバムが、最後の見えている活動でした。

その見えていた道が急になくなったのが、2023年2月26日。
ソロ活動のアルバムはなくなり、ソロ活動ももうしないという発表がありました。

正直ソロはもう決まっている仕事で終わると思っていたけれど、なんとなく見えていた道が急になくなり、地図アプリに現在地だけが表示されて、道筋も周りの状態もわからない。そんな状況にいるような感覚です。
てかさ、Tシャツの中に入ってたCDはなんなのか教えてくれる人はいませんか?いたら教えてください。

私の推しが辞めた。はこんな感じ。
出会いから話すことも可能ですが、そんなことしてもなんの意味もないし、今書いていることも意味がないのはわかっていますが、気持ちの整理として。

本当に推しは推せる時に推せ。
辞める覚悟をした人に、あーしろこーしろとか、一ファンが言っても仕方ないですし、ファンと運営は一生仲良くなれないし、推しは推しで友達でも恋人でもありません。
こちらが推すことをやめれば向こうからこちらにアクセスする術はないですし、推しがエンタメから手を引いたらこちらからアクセスする権利はありません。

今まで少し近い道を歩いてきた私と推しは、ここから全く違う方向に歩いていくのかもしれません。その道はまたいつか繋がるかもしれないし、もう一生出会うことのない道をただ歩いていくだけかもしれない。
ただ、もしまた出会える可能性があるなら、歩いてみようと思います。

仕事辞めちゃったから仕事探します。わたしはわたしで元気に頑張ってみるから、元気にやっていてね。お互い好きなことを見つけて幸せになろうね。

営業でもお世辞でも、あなたが好きって言ってくれたわたしの文章が届きますように。


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