自分の押韻のしかたを整理してみる

どもどもです。今和間田せぃがです。
いわゆるVTuber活動をしています。

ところで、僕はVTuber活動だけじゃなくて、ラップ活動もしています。
最近、ビギナーズマイクリレーという企画に参加して、恐れ多くも他のかたのリリックを添削する立場になりました。
なので、この機会に、自分の押韻のしかたについて整理したいと思います。

あくまで自己流なので、間違ってる部分あるかもだし、これがすべてではないよってところと、ちょっと難しめな話になっちゃうかもしれないので、その点諸々ご注意だよ!

とにかくトラックを聴こう

僕の場合、リリックを書く時は、とにかくまずトラックに合わせるところから始めてます。

個人的に、リリックとフロウは不可分だと思っていて、どちらかを先につくることはありません。
僕は、リリックとフロウを、統合された「響き」という感覚で捉えていて、それをリリック(言葉)とフロウ(乗せ方)に分離することはできないと考えているからです。

ラップは声を使ったビート

ラップというのは、いわば声を使った楽器です。
普通の歌がいわゆる上ネタ…メインとなるメロディラインを担当するのに対して、ラップは、よりドラム…広い意味でのビートネタに近いです。

「声っていうめっちゃ面白いビートネタがあるから、
 メロディのかわりに、こいつを上ネタにしちゃうぜ~!」


それがラップの本質かなと思います。

だから、「トラックにラップを乗せる」ってことは、イコール、「楽曲にひとつ音ネタを加える」ということです。

つまり、その音ネタは楽曲とうまいことセッションできている必要があると思います。不協和音的な合わせ方をするにして、不協和音的にセッションできていないといけないんだと思います。
だとしたら、セッションする楽曲を聴かないことには始まらないよね?というのが、自分のスタンスなわけです。( *´艸`)

リリック先行型スタイルについて

上で書いたのは、あくまで僕のやりかたです。
ラッパーの中には、「まずリリックを先に書いて、それからトラックに合わせる」スタイルのかたもいます。

それが成立するのは、ラップというのが声を使ったビートに近いからじゃないかな~と思います。
ビートなら、BPMが合っていれば、ある程度どんな曲にも乗ります。

ラップでリミックス文化が盛んなのも、この辺かなと思います。
普通の歌に比べて、どんな曲にも合わせやすいんです。

けれど、これだけだと「どの曲にも合うビート」にはなるかもしれませんが、「その曲のためのビート」にはなりません。
なので、リリック先行のラッパーさんも、実際にトラックに乗せる際には、必ずフロウを調整して、トラックとビートを調和させてると思います。

自分の場合は、最初から「その曲用のビート」として書き下ろした方が、多彩で変化の富んだビートをつくりやすいので、トラックを聴きながら作っています。

ラップを乗せる=トラックの隙間を縫う

トラックを聴いたら、実際にラップをつくっていきます!

まず、トラックにラップを乗せられる「隙間」を探しましょう。

ラップ用トラックに慣れているトラックメイカーは、大抵、ラップが乗せられる余地をトラックに残しているものです。
だから、「トラックにラップを乗せる」というのは、トラックメイカーが残した隙間を見定めて、その隙間をうまく縫っていく作業に近いです。

(そうじゃないトラックも結構あったりするんですが…、その場合はがんばって隙間を探します)

ジャズにたとえてみる

言い方を変えると、たとえばこれがジャズセッションで、あなたの担当がピアノだったとして。
隣に立ってるトランペット奏者ががんがん走ってたとしたら、「そのトランペットを邪魔しないピアノの入り方」が絶対にあるはずです。

ラッパーは、それをトラックに対しておこないます。

なので、音の隙間を探します。
つまり、「トランペットを邪魔しないピアノの入り方」です。
隙間が見つかると、自然と一小節目の出だしが見えてきます。

ライミングは言葉ではなく、響きで踏もう

「ラップといえば押韻」のイメージがあると思いますが、何故ラップは押韻するのでしょうか?
歴史的経緯はさておいて、僕は、響きの一致によるグルーヴを生むためじゃないかな~と思っています。

上でラップはドラムに近いといいましたが、「押韻=同じ音を繰り替えす」というのは、言ってみればドラムパターンの繰り返しに近いです。

「だだだだ!」って同じドラムパターンが来ると気持ちよく感じる周期がも音楽にはあります。
それを声で表現するのが、ライミングだと思っています。

だとしたら、ライミングは言葉の一致ではなく響きの一致である必要があるかな~と考えてます。

押韻は音を揃える作業

一般的に、押韻は、母音が合っていることを指します。
(たぶん、みんなの押韻のイメージもそんなかんじだよね?)

何故母音が合っていれば押韻しているかというと、母音は母音ごとに音の周波数帯が違うからです。
押韻する=母音を揃えるということは、つまり音の高さと方向性を合わせるという作業だといえるんじゃないかなと思います。

日本語の音韻は意外にたくさんある

日本語はあいうえお5音しか母音がないと思われがちですが、実はそんなことはありません。

たとえば、「あ」の音は、前舌母音 [a] と後舌母音 [ɑ] の中間音 [ä̝] に分かれます。これらは、表記上は同じ「あ」でも全部違う音です。

更にここに子音の発音が絡んできます。
たとえば、「が」は、破裂音(ɡ)、鼻音(ŋ)、摩擦音(ɣ)に分かれます。
とすると、「が」の発音は、単純計算で母音3×子音3の9種類あることになります。

他にも、日本語にも母音間結合はあるし、前後の音で音韻が変化する例もあります。もうこの辺まで考えていくと、変化無限大で、わけわからーん!の世界です。ほんとうに。

言葉で踏んでいても、響きでは踏めていないことがある

上の方で、押韻は声でおこなうドラムパターンの一致だといいました。

人間の声には、ハイハットに似た音も、スネアに似た音もあります。
仮に表記上の母音が合っていたとしても、ハイハットとスネアくらい違う音を、同じドラムパターンだというのは無理があります。

言葉上で押韻しているように見えても、発音してみると全然踏んでないということは、よくあることです。

つまり、どの音がどのくらい近くてどのくらい遠いかを考えながら、ライミングしなくてはいけません。
しかも、トラックの隙間にうまくフィットさせながらです。

これらを頭で考えながら押韻するのは、かなりしんどいはずです。
僕はしんどいです。
多分、こんなことを考えながらリリックを書いているラッパーはそういないんじゃないかな~と思います。

だから、「言葉」ではなく「響き」で踏むことをオススメしています。

実際に声に出しながら、確認しよう

具体的には、実際に声に出して響きを確認しながら、自分の耳と口で踏み具合を確かめましょう。
これなら、細かい理屈抜きでフィーリングで和解できます。

口の中で音を転がしながら、似た響きを探していると、もう言葉上で踏んでいるかとか関係なく、気持ちいい瞬間がきます。
それがいわゆるグルーヴで、僕にとっての押韻というわけです。

このやり方だと、ドラムパターンの配置の仕方も、脚韻に限らず色々遊べるはずです。頭ではなく気持ちよさで踏むからです。
(ちなみに、僕はドラムパターン配置として頭韻が好きです)

色々自分の気持ちよさを探してみてください。( *´艸`)

ここからはちょっと話が飛躍するんですけど、押韻をドラムパターン的なグルーヴだと考えるなら、突き詰めれば、まったく踏んでなくても、押韻は成り立つと思うんですよね。
たとえば、一定の規則に沿ってなめらかに母音が推移すれば、そこにグルーヴが生まれて、押韻が成立すると思うんです。
これは、僕もまだまだ研究中な部分だけど、たとえば(手記はここで途切れている

閑話休題

歌ものラップとは?

ところで、ラップが声によるビートだとすると、いわゆる歌ものラップはどう理解すればいいでしょうか?

僕は、これはこれでビートとして成立すると思います。

というのは、歌ものラップはメロネタをチョップして作られたビートとして理解できるからです。
ギターやピアノをチョップしてビートにしているトラックってあるでしょ?
あれを声でやっているのが歌ものラップだと思っています。

だから、僕は歌ものラップには、チョップビートのマインドがあることが大事だと思っています。

普通のメロディラインにはないような執拗なループとか。
そのコードからそのコードに飛ぶか普通?みたいなハチャメチャなコード進行とか。

その結果、意外に普通な歌ものになっちゃったとしても、そこにマインドを感じれば、僕の中ではラップかなぁという気がしています。(ФωФ)

リリックで気を付けていること

あとは、これはどっちかというと、押韻というよりはリリックの話になるんだけど、上で書いたような「響き」の調和をとりつつ、「言葉」としても意味が通るように気を付けてます。すごかろ?(*´ω`*)

具体的には、
 歌詞だけを見た時に日本語として意味が通るように。
 一人称や文体のぶれがないように。
 体言止めの多用などで不自然な文にならないように。
 あんまり口語を多用しないように(これは最近ちょっとユルめにしています)。
とかとかです。

これらは、ここ十年二十年、日本語ラップがずっと馬鹿にされ続けてきた部分です。
なので、それらを全部クリアするスタイルを模索したんです。

あと、英語も使わないようにしています。
自分が喋れない言葉を使うのは、リアルじゃないと思っているからです。
僕がバイリンガルなら使っていいと思うんだけど、僕は日常的に英語を喋れないので。使うのは、日本語として定着している英語表現はいいと思う。
(これは、英語を使っちゃダメー!という話ではなく、僕なりに日本語ラップを突き詰めていった結果、こうなったという話です)

同じ理屈で、いわゆるHIPHOP用語もあんまり入れないようにしています。
日常的に使っていて、充分に自分にとってリアルな場合は、例外的に使ったりもします。ぷちょへんざとか、たまに使います。

自分のHIPHOPとしての日本語ラップ

押韻ってテーマからすると、ちょっと脱線になっちゃうんですが、個人的に、HIPHOPというのは、歴史を背負うことだと思っています。

そう考えた時、洋楽ラップの延長線として自分のラップを構成するのは、僕の場合、あんまりリアルじゃなかったんです。
海外の文化も歴史も僕の中にはないし、音楽的な感性とか体内リズムとかも全然違うと思います。

だから、僕は僕のHIPHOPを貫くうえで、日本語ラップとしてのルーツを探しました。
日本の文学、落語、歌謡曲、フォークソング、そういうものを摂取しまくりました。それが僕にとっての歴史でリアルだったからです。

そういう歴史を背負ったうえでHIPHOPした結果、僕のラップはこういう形になっているわけです。
日本にラップ文化が根付くまでは模索の連続だったと思います。
僕のスタイルもまた、その模索の中のひとつの答えなわけです。
形はゆるふわだけど、いろいろ考えてるし、自分の中でのスジをちゃんと通してるんだぞ~。(*´▽`*)フハハ


というわけで、自分なりの押韻方法とかを書いてみました🍀

これだけじゃなくて、他にも気を付けていることや自分なりのコツはたくさんあるんだけど、感覚でやってることを説明するのは難しいし、話があっち行ったりこっち行ったりするので、大変だよね~。ヾ(:3ノシヾ)ノシ
でも、今回はだいぶ言語化できた気がします。

色々書いてあるけど、まとめると「頭じゃなくて気持ちよさで踏むんだよおお」ということに尽きるので、よかったら試せそうなところ試してみてください。( *´艸`)

ではでは。

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