自分の居場所、心のヨリドコロ
ヤンデルさん
ご無沙汰しておりました。
インターネットを通して北海道は初雪が降ったというニュースが流れてきて、相対的に加速する時の流れに恐れおののいております。
季節の変わり目、いかがお過ごしですか?
私はというと研究費申請の書類の山に追い込まれて、脳の色々な部署がストライキを起こしてしまい、辟易しておりました。
ようやく通常営業に戻ってきてくれて、お返事を書いております。
実は先日、岸見 一郎さんと古賀 史健さんの『嫌われる勇気』、『幸せになる勇気』を読み、承認欲求と対に書かれている共同体感覚を知って「あぁ」と声が出ました。
ヤンデルさんとの往復書簡が始まってからというもの、心の中にヨリドコロが出来たような感覚を覚えていたのですが、それはつまり、私にとってこの往復書簡は、何とか社会の中に自分の居場所を見つけようという共同体感覚を育てる活動の一環になっているからだと思いました。
さて、ようやく通常営業に戻った脳を使って、今回のお題に取り組みます。
「新聞社からの依頼です。
投書欄にPETって何?と質問が来ました。これに400字で答えてください。あなたの実名が署名されます。全国紙の健康面に載ります。」
おっと…そうでした、前回の「高校生の自分」に比べて、対象が全国の新聞読者の皆さんに拡大され、文字数が400字に制限されたのでした。
難易度がイージーモードから一気にベリーハードモードになったような…。
正直なところ、完全に迷子になってしまいました。
文字数が400字と非常に限られているので、あちこち迷走している余裕もありません。
きっかけを求めて、もともとどういう文章を書く練習をしているのか、振り返ってみました。
このヤンデルさんのお手紙、私にとって情報発信に関する至高の指針になっています。
何度も何度も読み返しました。
ここからキーワードを拾って比較してみます。
そうそう、医療情報発信はマニアックになりやすいものの、パブリックな情報を書く努力も必要があり、今回は公共性のある情報発信を目指しているのでした。
(脇道ですが、読み直した時に、『病気と健康を理解するうえで必要な前提知識』という言葉にギョッとしました。確かに、病気と健康の境目は思ったよりもずっとぼんやりしていて、一般の人と医療者の間では、その感覚にずれがありそうです。こういうことも、確かにパブリックな情報として「読みたいと思ってもらえるように」書くのは重要なことですね。)
こうして振り返ってみると、高校生の自分に向けた前回の文章は、かなりマニアックに寄ってしまっていたなぁと反省しています。
今回は出来るだけ公共性のある情報になるように心がけてみます。
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PETとは何か、というご質問へのお返事
臨床現場でPETというと、FDGというブドウ糖に似た薬を使って、PETという装置で撮影し、がんが何処まで広がっているのかを見つける検査のことを指します。
しかし、ここではPETの通り一遍な説明ではなく、せっかくご質問頂いた意図をもう少し考えました。
もしかしたら、ご本人、もしくは近しいご家族や友人の方ががんを患われて、すでに嫌になるくらい色んな検査を受けたのに、どうして更にこんな値段の高い検査を、とご不満をお持ちなのではないでしょうか。
あるいは、検査前の6時間以上の絶食について、必要性に疑問をお持ちかもしれません。
もしくは、放射線を出す薬を注射する検査だと言われて、密かに『被ばくは大丈夫なんだろうか』、と不安を募らせていらっしゃるのかもしれません。
実際の検査を担当する身として、患者さんとお話ししていると、これ以外にも色々な質問や意見を聞くことがあり、多くの方が多かれ少なかれ不安や疑問を残しながら検査に臨まれていると感じます。
実は、私たち放射線科の医療者はそのような患者さんの疑問にお答えする役割も担っております。
少しでもPET検査に疑問や不安があれば、是非納得がいくまで担当の医療者にご質問下さい。
検査を受けられる方のご理解とご協力があって初めて、PETは最適な検査となり得るからです。
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出来るだけ短くしようと頑張ったのですが、これでも500文字以上ですし、何だか省きすぎた気もします。400文字ってすごい難しいですね…。
時間をおいて振り返って考えてみようと思います。
そして、今回のお題に取り組むと同時に、次回ヤンデルさんへのお題をどうしようか考えていました。
ヤンデルさんはTwitterは医療情報発信に向かないとおっしゃっていて、そのご意見に『なるほど、確かに』と納得しているので、自分で提案しておいて変なお題だなと思うのですが、
「Twitterに『PETとは何?』についての情報を置いて来ようとする場合、ヤンデルさんならどうしますか?」
これにしようかと思います。
医療情報発信について、色々な型を知れれば幸いです。
(2019.11.11 タク→ヤンデルさん)
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