Dual basis, Tensor
**双対基底(dual basis,1-form)**とは、ベクトル空間の基底に対応する、線形汎関数の集合のことを指します。線形汎関数とは、ベクトル空間の任意のベクトルをスカラーに写像する線形写像です。
1. 双対基底の定義
ベクトル空間 ( V ) の基底を ( {e_i} ) ( ( i = 1, 2, \dots, n ) )とします。これに対して、双対空間 ( V^* ) の基底 ( {\omega^i} ) は次の条件を満たします:
[
\omega^i(e_j) = \delta^i_j
]
ここで、 ( \delta^i_j ) はクロネッカーのデルタであり、 ( i = j ) のとき ( 1 ) 、それ以外は ( 0 ) です。つまり、双対基底 ( \omega^i ) は基底 ( e_j ) に対して「指示機能」を持ち、同じインデックスの場合にのみ1を返します。
2. 双対基底の例
例えば、2次元ベクトル空間 ( V ) における基底 ( {e_1, e_2} ) を考えます。この基底に対して双対基底 ( {\omega^1, \omega^2} ) は次のようになります:
[
\omega^1(e_1) = 1, \quad \omega^1(e_2) = 0
]
[
\omega^2(e_1) = 0, \quad \omega^2(e_2) = 1
]
このとき、任意のベクトル ( v \in V ) を基底 ( {e_1, e_2} ) で表すと、 ( v = v^1 e_1 + v^2 e_2 ) となり、対応する線形汎関数の作用として、 ( \omega^i(v) = v^i ) となります。
3. テンソルの定義:共変テンソルと反変テンソル
テンソルは、ベクトルや共変ベクトル(双対ベクトル)を基に構築される多次元の線形写像のことです。テンソルには「共変(covariant)」と「反変(contravariant)」の区別があります。
混合テンソル:共変と反変の両方の成分を持つテンソルで、例えば ( T^i_j ) のように表されます。これは、反変成分と共変成分がそれぞれ1つずつあることを示しています。
テンソルは、ベクトル空間およびその双対空間における線形写像の特性を利用して構成され、特に微分幾何学や一般相対性理論において重要な役割を果たします。
テンソルを双対基底と基底ベクトルを用いて表すために、外積(outer product)を使用します。外積は、テンソルの構成要素として非常に重要であり、テンソルの構造を理解する上で基本的な操作です。
1. 外積(Outer Product)の定義
外積は、2つのベクトルやベクトルと共変ベクトル(双対ベクトル)からテンソルを生成する操作です。具体的には、2つのベクトル ( v ) と ( w ) の外積は、2階のテンソル ( T ) を生成し、次のように定義されます:
[
T = v \otimes w
]
これは、テンソルの各要素がベクトル ( v ) の成分とベクトル ( w ) の成分の積で与えられることを意味します。
2. テンソルを双対基底と基底ベクトルで表す
ベクトル空間 ( V ) の基底を ( {e_i} )、対応する双対空間 ( V^* ) の双対基底を ( {\omega^i} ) とします。
1階のテンソル(ベクトル) ( v \in V ) は、基底 ( {e_i} ) を使って次のように表されます:
[
v = v^i e_i
]
ここで、( v^i ) はベクトル ( v ) の成分であり、( v^i = \omega^i(v) ) です。
2階のテンソル ( T ) は、反変テンソル ( T^{ij} ) として表す場合、次のように基底ベクトルの外積で表現できます:
[
T = T^{ij} e_i \otimes e_j
]
同様に、共変テンソル ( T_{ij} ) として表す場合、双対基底の外積で表現できます:
[
T = T_{ij} \omega^i \otimes \omega^j
]
混合テンソルの場合、たとえば1つの共変成分と1つの反変成分を持つテンソル ( T^i_j ) は、基底ベクトルと双対基底の外積で次のように表されます:
[
T = T^i_j e_i \otimes \omega^j
]
3. 例としての表現
具体的な例を考えてみます。たとえば、3次元空間におけるテンソル ( T ) があり、その成分が次のように与えられているとします:
[
T^{ij} = \begin{pmatrix}
1 & 2 \
3 & 4
\end{pmatrix}
]
この場合、テンソル ( T ) は基底ベクトル ( {e_1, e_2} ) の外積として次のように表されます:
[
T = 1 \cdot e_1 \otimes e_1 + 2 \cdot e_1 \otimes e_2 + 3 \cdot e_2 \otimes e_1 + 4 \cdot e_2 \otimes e_2
]
また、これを双対基底を使った表現に変換する場合、共変テンソル ( T_{ij} ) の形では次のようになります:
[
T = T_{ij} \omega^i \otimes \omega^j
]
このように、テンソルは基底ベクトルと双対基底の外積の組み合わせで表現され、それぞれの成分によってテンソルの構造が定まります。
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