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T1/4は、いかにして生まれたか?

T1/4と表記して、T-Quarterと読む。TATAMI-TOで開発した1/4サイズの畳だ。

デザインは、手工業デザイナーの大治将典さん。「畳表やい草を使った新商品を開発していただきたい」とご相談したのが、確か2017年2月頃。数ヶ月して、「通常の畳を1/4サイズにしたものをデザインしたいが、どう思いますか?」と打診があった。

その時、頭をよぎった感想は、率直に言って、「ずいぶん安直なアイデアだな」というものだった。「畳素材を用いた新しい商品」と言うと、財布だの、コースターだの、バッグだの、はたまたランチョンマットだのとなるのが相場。民芸調か、逆にあざとく新規性を狙ったアイデアになりがちだ。それを超えるアイデアを期待していたのに、通常の畳を1/4サイズにするなんて、なんだか拍子抜けするくらい当たり前だな。

しかし、数分考えて「いや、待てよ。その安直さにこそ、案外誰も思いつかなかった何かがあるのではないか?」と思った。 ぼくは大治さんに「いいと思います!ぜひ、お願いします」と答えていた。

しばらくして、大治さんから1/4サイズの畳のデザイン画が送られてきたけれど、その時点でもまだ半信半疑だった。デザイン画で見ても、畳を1/4に縮小することが新鮮かどうかは、なかなか判断がつきにくい。だが、当然のことではあるけれど、デザイナーの大治さんには、畳を1/4にサイズダウンするだけで新しい世界が広がる様が見えていたのだ。プロとは、そんなものだ。プロダクトの世界を映像に置き換えれば、ぼくにだって、人には見えない世界が見えている。

やがて、鏡さん(山形は寒河江の鏡畳店4代目)が試作をつくり始めて、試作品が1枚また1枚と増えていく。畳縁の色も、何種類か試した。当然、1/4サイズの畳がある程度の量になる。そうこうするうちに、「これは、けっこう新鮮だな」と思った。それは、見たこともない新しい景色のように感じた。畳が畳を超えるかもしれない。そうだ。清少納言が「ちいさきものはみなうつくし」と謳った昔から、日本人には小さいものを愛でる美意識があるではないか。1/4サイズのそれは、畳というより床材に近いようにも思えてきた。(つづく)

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CMディレクターとして、これまで数多くのTV-CMを企画・演出してきました。2012年より、東北芸術工科大学デザイン工学部映像学科教授。映像にとどまらない、モノや地域のブランディングに活動の幅を広げています。
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