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美術展プロデュース

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海外・国内美術展プロデュースの経験、進行中案件、ウラ話など
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#展覧会

美術展は刹那的。だから…

美術展プロデュースをしていていつも思うのは、展覧会とは実に刹那的であるということ。今回は2024 年 6月に開幕した「ロートレック展  時をつかむ線」の現場から、カタログ制作の実際についてです。 ▶美術展は刹那的展覧会を作る・・・それは何年も前から準備をして、作品の所蔵館(者)を口説いてコンテンツを作り上げ、様々なアクシデントを乗り越え(予定していた作品が急に借りられなくなる、なんていうのはよくある話)、予算とにらめっこしながら調整をして、会場設営をして、作品を展示して、一

最近美術展に若い人が多い、という話

一昔前まで(と言っても、コロナ前の2020年くらいまでの話ですが)、美術展のコアな来場者と言えば50代~70代の男女、特に60代のアクティブ・シニアと呼ばれる層が一般的でした。  ところが去年(2023年)、コロナが5類に移行し、美術展の入場制限が緩和されたあたりから気になっていることが。。。 「美術展に若い人が増えた」。 なぜ? ▶一人でも多くの来場者のために丹精込めて作った展覧会は一人でも多くの人に見てもらいたい・・・というのはもちろんですが、そもそも展覧会には作品

アメリカ印象派展 “アメリカのモネ”と呼ばれた画家

東京・上野の東京都美術館で開催中の展覧会「印象派 モネからアメリカへ ウスター美術館所蔵」。おかげさまで連日大勢のお客様にご来場いただいています!  きょうはメインを張っている画家のひとり、“アメリカのモネ”と呼ばれたチャイルド・ハッサムのお話。 ▶”アメリカのモネ“ チャイルド・ハッサム モネの《睡蓮》(1908年)と並んで展覧会のメインビジュアルとなっているチャイルド・ハッサムの《花摘み、フランス式庭園にて》(1888年)。筆のタッチが似ていることから、ポスターを見て

アメリカ印象派展 開幕です!

▶︎ベタな印象派の展覧会ではありません!「印象派 モネからアメリカへ ウスター美術館所蔵」本日、東京都美術館で開幕しました!初日からたくさんのお客様にご来場いただき、心から感謝いたします! 一般的に印象派といえばフランス印象派。その誕生から150年という記念の年に、印象派がもたらした、まさに「革命」と言うべき変革とアメリカを始めとする印象派の世界的な広がりを紹介する企画です。 ▶︎初めて出会う画家の作品に癒される ご来場いただいたお客様から「とにかく明るく、美しい!」「

ロートレック展制作中!②『 日経おとなの OFF』の表紙を飾りました!

来年(2024年)6月から開催予定の「ロートレック展 時をつかむ線」。 フランス、ベル・エポックを代表する画家、アンリ・ド・トゥールーズ=ロートレック(1864-1901)のグラフィック作品の個人コレクションとしてはおそらく世界最大級と言われる、アメリカのフィロス・コレクションが初めて来日します! ▶︎2024年 絶対見逃せない美術展 毎年12 月になると書店の雑誌コーナーを彩る「来年見逃せない美術展」特集。来年6 月から開催される「ロートレック展」が、『 日経おとなの

アメリカ印象派展開幕まで1か月!そもそもアメリカ印象派って?

来年(2024年)1月から開催されるアメリカ印象派の展覧会「印象派 モネからアメリカへ ウスター美術館所蔵」。印象派の展覧会は数あれど、これまであまり紹介されてこなかった「アメリカ印象派」にスポットを当てます。でも、そもそもアメリカ印象派って?フランス印象派と何が違うの? ▶フランス印象派の誕生 印象派は19世紀後半フランスで生まれ、それまでの美術のメインストリームだった”秩序”を重んじる「アカデミーの美術」に反発、美術界に変革を起こしました。その革新性は、両者を表すキー

アメリカ印象派展制作中!⑤世界で初めて美術館が購入したモネの〈睡蓮〉

来年(2024年)1月から開催されるアメリカ印象派の展覧会「印象派 モネからアメリカへ ウスター美術館所蔵」。ポスタービジュアルの一つ、クロード・モネの《睡蓮》は、ウスター美術館が世界で初めて美術館として購入した〈睡蓮〉です。この作品には画家の“チャレンジ”、そして美術館にとっても “チャレンジ”がありました。 ▶モネのチャレンジモネは1883年、43歳の時にパリ近郊のジヴェルニーに居を構え、以降1926年に86歳で没するまで、人生の半分をこの地で過ごし制作を続けます。

アメリカ印象派展制作中!②ウスター美術館は3時間で見られる美術の百科全書

来年(2024年)アメリカ・ウスター美術館所蔵のアメリカ印象派の展覧会「印象派 モネからアメリカへ ウスター美術館所蔵」が開催されます。ボストンから1時間、知る人ぞ知る隠れ家的美術館、ウスター美術館の魅力をご紹介します! ▶ウスター美術館は お手頃”美術の百科全書” 3時間で5000年の美術史を総ざらい! よく、ニューヨークのメトロポリタン美術館を指して「古今東西の人類史が詰め込まれた百科全書」という表現が使われますが、ウスター美術館(Worcester Art Muse

美術展の仕込は4年がかり【前編】

メディアが提案・主催する展覧会では、大型の企画は実現までに4年程度かかるのが一般的です。「そんなに長く?」と思われるかもしれません。 美術展の開催期間は数週間・・・でもその作業は膨大! 今回はメディアが主催する展覧会の一般的なプロセスを2回に分けてお話します。(あくまでも個人の経験に基づくものです。ご承知おきください) 前編は、端緒から展覧会開幕1年前あたりまでの動きです。 1.企画:開幕4年前〜1年前 *以下が同時並行で進みます ①端緒は思い付き? 世の中のト

美術展の仕込は4年がかり【後編】

メディアが提案・主催する展覧会では、大型の企画は実現までに4年程度かかるのが一般的です。「そんなに長く?」と思われるかもしれません。 美術展の開催期間は数週間・・・でもその作業は膨大! 今回はメディアが主催する展覧会の一般的なプロセスを2回に分けてお話します。(あくまでも個人の経験に基づくものです。ご承知おきください) 前編に続き後編は、展覧会開幕1年前あたりから開幕までの動きです。 2.制作:開幕1年前〜開幕タフな借用交渉もほぼ終わり、開幕1年前あたりから国内での動

美術展とメディアの関係

▶意外と知られていない、美術展の「主催」って? イベントの「主催」は、そのイベントの中心になって取り仕切る、責任を負うという立場。美術展のポスターやチラシには、「主催」として展示作品の所蔵美術館、開催美術館の他にテレビ局や新聞社など、メディアの名前が掲載されていることが多くあります。これは多くの場合、そのメディアが展覧会の金銭的なリスクをほぼ全面的に負っていることを示しています。 ▶美術展の金銭的リスクはメディアが負っている 美術展の金銭的リスク(=主な経費)には借用料