レモンの香る湖に飛び込んだ君の背中
夏至が過ぎた
一年の中で一番日が長いといわれているのが6/21
そこから7/7までの2週と3日が夏至にあたる
毎年この時期を抜けて雨が上がる頃そこら中が暑さで埋め尽くされ、文字通り夏に至る
僕の方でも近頃とんでもない速さで縮んでいく袖に見て見ぬふりを決め込んでいたけれど、気がつくと蝉時雨が当たり前に街に馴染んでいた
まとわりつく暑さに少しでも対抗しようと
アイスで頼んだレモンティーを流し込む
あ、、 やってしまった…
気づいた時には遅すぎた
まんまと夏がフラッシュバックする
涼しさあるところに暑さあり、、
離れるつもりが夏はより一層ざぶざぶと近づくばかりで気を抜けば足をとられてしまいそうなほど僕に迫っていた
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いつもなら一見さんお断り。な雰囲気が入口を固く閉ざす近所の喫茶店、しかし今日の暑さの前にはその鋼鉄の門扉もチョコレートよろしく溶けていた
こだわりのホットコーヒーを売りにしてそうなお店だったのでアイスティーを頼んだのは少し忍びないけれど
こう暑いと仕方がない…
そうだよ。どれもこれもこの暑さの前じゃ仕方ない
寝不足つづきなのも
洗濯物を溜め込んでしまったのも
暑さのせいだし
二日酔いもきっと暑さのせい
このnoteの更新が半年ぶりなのも多分暑さのせいだし
お金がないのもそりゃあ暑さのせいであるからして
どうしてもパルプフィクションが急にみたくなり家を飛び出しGEOに行ったのに貸し出し中だったのなんて言うまでもなく暑さのせい
なんならこのご時世にサブスクを使わずGEOまでDVDを借りに行くなんて暑さのせいすぎる…
細長いグラスが申し訳なさそうに汗をかく1人がけ用のテーブル
見て見ぬふりを続けた僕は季節のグラデーションに置いていかれてしまった
グラスの中に放り込まれた黄色だけのルーレット盤は氷の上に座礁していながらも少しずつその果汁を滲み出して茶色の海に混ざっていく、境目など誰も切り取れないほど鮮やかに変わっていった
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晩になっても日の光が無いだけでてんで蒸し暑さは変わらないので気分転換と称してアイスクリームを買いにいくことにした
やる事で山積みの部屋を一刻も早く飛び出して現実逃避をしたいのは暑さのせいでしかない…
ずいぶん昔サイズを間違えて買ってしまった履き心地があまりよくないサンダルを引っ張り出してつっかけた
のそのそとコンビニへ向かう道中
なんとなく流していた景色と近所の中学校の側を抜ける際
突然目の端から現れたとても大きな光る蜘蛛の巣に驚く
僕は一瞬にしてその光景に目を奪われた
しかしよくよく見やればそれは蜘蛛の巣ではなく
どこからか跳ね返された光の筋だった
ああ、そうか。
どうやら中学校ではプールに水が張られているらしく
夜になると街灯の光を水面が照り返した
その光が学校の外側にある歩道すぐ近くの壁にまで届き
てらてらと映し出されていたのだ
不思議な気持ちに包まれた
駆け抜ける清涼感に興奮が止まらない
暑さにうなだれていたのが嘘のようだ
網状に広がる不規則な光の揺れは観ているだけで
僕をなんと涼しい気持ちにさせてくれることか
こんなに素晴らしいものがあったのか
僕はめいっぱい深更を泳いだ
思いがけず笑ってしまう
暑さあるところに涼しさあり!
そうしてしばらくの間遊泳を続けた
少しした頃ある事に気づきふと我に帰る
ううん、けれどしかしこれは困ったよな
こんなにいいものはできれば一家に一台は必要だ
この光の筋をどうにか持って帰りたいが家の中には25mプールも街灯も置き場所がないのでどうしようも無い…
うーん…
しばらく考え思い至る
そうだ!夏の間はいつでもすぐ観にこられるようにサイズのあった良いサンダルを買おう。それがいい!
あ、これじゃお金がなくなるのは本当に暑さのせいじゃん……ま、いいか
なんてことだ
今年の夏、楽しみだ
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袖から流れていく汗はこれから夏に滲みだして上手く混ざっていってくれるだろうか、サンダルで檸檬の地面を蹴って季節を進んだ
げしげし、夏至
それでは
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