ICT活用による、乳幼児健診の混雑緩和と子育て支援

「新型コロナウイルスを克服し、東京の未来を創るアイデア募集」への応募内容メモです。

■提案名

ICT活用による、乳幼児健診の混雑緩和と子育て支援

■提案の概要 

Web会議システムを活用したオンライン育児相談、eラーニングシステムを活用した育児指導など、ICTシステムを活用することで、オンラインによる子育て支援を可能とする。

また、乳幼児健診の一部をオンラインによる受診とすることで、混雑緩和による感染予防、利便性向上による受診率の向上、職員や保護者の負担軽減を行う。

■提案にあたっての現状・課題・背景 

各自治体で行われている乳幼児の集団健診では、保健師や助産師による育児相談、集団指導による育児情報の提供、小児科医や歯科医による診察などが行われている。
支援を必要とする家庭を見つける重要な機会であり、自治体内のほとんどの乳幼児がこの健診を受診する。

現状、保健所など、コロナウイルス感染対策が行われる建物内で健診が行われている場合があり、感染を懸念した保護者による受診率の低下が懸念される。また、緊急事態宣言時には、健診の中止も発生した。

育児相談や集団指導、診察の一部については、オンライン提供も可能と考えられるが、ほとんど実現していない。背景には、IT専門職員の不足や、セキュリティ面、個人情報保護への懸念などの問題があると考えられる。

感染拡大時には対面による育児相談や、自治体の主催する各種の教室(両親学級、離乳食教室、歯磨き指導など)の開催は難しくなるため、これらをオンラインで行うためのインフラの整備が求められる。

■提案を実施することによる効果

Web会議システムを活用したオンライン育児相談、eラーニングシステムを活用した育児指導など、ICTシステムのインフラを整備することで、オンラインでの適切な指導、相談を行うことを可能とする。

これにより、感染拡大時だけでなく、時間や場所の制約から育児相談や自治体の主催する各種の教室への参加(両親学級、離乳食教室、歯磨き指導など)ができない保護者に対しても、子育てに必要な情報を提供する。

情報の提供手段として、eラーニングシステムを活用することで、適切な時期における受講案内と理解度チェックテスト、受講確認を行うことを可能とし、支援が必要な家庭を把握するためのツールとする。

乳幼児健診については、オンライン提供できる内容を省略して実施することで、健診時間の短縮、混雑緩和による感染予防、利便性向上による受診率の向上、職員の負担軽減を行う。

■提案の詳細

各自治体で行われている乳幼児の集団健診では、(1)保健師や助産師による育児相談、(2)集団指導による育児情報の提供、(3)小児科医や歯科医による診察などが行われている。

このうち、(1)保健師や助産師による育児相談、(2)集団指導による育児情報の提供については、既存のサービスや技術を用いたオンラインでの実施が可能である。集団健診の内容を、オンラインで提供できないものに絞ることで、時間短縮、混雑の緩和が可能となる。

さらに、オンラインでの実施が難しい(3)小児科医や歯科医による診察についても、医療機関への委託とし、結果を自治体と共有することができれば、感染拡大時でも集団健診を行うことなく、同等のサービスを提供することができる。

共働き世帯の増加に伴い、平日日中の健診や子育て支援へのアクセスが難しい家庭が増えているため、時間や場所の制約のない、オンラインでの子育て支援へのニーズは高まっていると考えられる。

(1)保健師や助産師による育児相談 をオンラインで提供するためのインフラとしてWeb会議システムを、(2)集団指導による育児情報の提供を行うためのインフラとしてeラーニングシステムを、それぞれ整備する。

1) Web会議システムを用いた育児相談

ZoomなどのWeb会議システムを用いることで、育児相談をビデオ会議形式で行うことができる。電話では見えなかった子供の様子などを把握することができ、より精度の高い相談が可能になる。

Web会議システムの利用について、懸念されるのが個人情報保護の問題である。Web会議システムのセキュリティについては、コロナ環境下の企業や自治体共通の課題として、知見が蓄積しており、ツールの改善も進んでいるため、適切な利用によりリスクを最小限にすることも可能になってきている。

ただし、IT技術やセキュリティに精通した自治体職員の不足から、これらのシステムの適切な活用方法を各自治体が検討し、マニュアルを整備していくには時間がかかることが想定される。都として、Web会議システムの利用上のガイドラインを整備することで、各自治体でのスムーズな導入を促すことも必要となるだろう。

より幅広い市民の相談業務においてWeb会議システムの導入が要望されるケースも想定されるため、オンライン授業なども含めたガイドラインの整備が必要となる。

職員間の業務連絡手段としてのWeb会議システムの活用に比べ、市民の相談業務では、取り扱う個人情報の内容が相談者本人のものであることから、漏えいのリスクは比較的低くなっており、市民のニーズに合わせた、より柔軟な対応も可能であると考えられる。

2) eラーニングシステムを活用した育児指導

子育てにおいては、両親学級、定期健診、離乳食教室など、自治体による、必要に応じた情報提供が行われており、保護者同士の交流の機会にもなってきた。

しかし、感染防止のために、これらの集団指導の開催が難しくなってきており、オンラインでの情報提供が必要となっている。

すでに、Youtubeなどの動画配信サービスにより、離乳食教室など情報提供が行われているが自治体もあるが、各自治体が個別に動画を作成しているため、情報が重複していて必要な情報が探しにくい、まとまった情報がない、などの問題が発生している。

eラーニングシステムを活用し、都としてコンテンツを集約して適切な時期における受講案内と理解度チェックテスト、受講確認などを行うことで、保護者が情報を探しやすくなり、活用しやすくなると考えられる。

また、会員登録によって、未受講者を担当保健師が確認できれば、支援が必要な家庭を把握するためのツールとしても活用できるようになる。

eラーニングシステムについては、免許更新時の講習や、職業能力開発センターによるキャリアアップ講習などにも活用出来るため、都としてインフラを整備することで様々な活用が期待できる。eラーニングシステムを提供する企業は複数あり、既存のサービスを活用することで、導入コストを低く抑えることが可能である。

また、提供するコンテンツについても、両親学級、離乳食教室など共通する内容について都で集約することで、自治体のコンテンツ作成の負荷を減らすことができると考えられる。

このように、都としてICTを活用したインフラや利用上のガイドライン、コンテンツを整備することで、自治体の子育て支援におけるオンライン化を推進し、感染拡大時にも支援の機会を逃さない対応が可能となる。


この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?