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昭和の名曲にみるシンセ・電子楽器の名機たち(その12)

70年代に入り小型軽量化したシンセ「Minimoog」の誕生を皮切りに各社より色んなシンセが登場し、それらを活用した《プログレッシブ・ロック》《クロスオーバー》などの新しい音楽ジャンルが登場したのは以前にも申し上げましたが、それは単純に需要にあやかって模倣品が登場したのではなく各社がアイディアを絞り切磋琢磨したお陰で色んなアーティストから愛されるものが誕生し、沢山の名曲が登場したのだと思います。そんな2つの電子楽器についてお話をしたいと思います。

「Minimoog」と人気を二分した「ARP Odyssey」

当時「Moog」社は自身のシンセ機能《ラダーフィルター》など特許を取得してたため、他社は容易に模倣品を出すわけにはいかず、一工夫も二工夫も必要でありました。以前ご紹介した「Moog」のライバルといえる「ARP」よりセミモジュラーシンセ「2600」が登場しましたが、その機能を簡素化し小型化した「Odyssey」が誕生しました。後発ともあり「Minimoog」とはまた違ったアプローチの機能とサウンドは人気を二分しました。特にリード系のサウンドが際立ち、YMO「ライディーン」の主旋律や、世界的にヒットしたアバ「ギミー・ギミー・ギミー」の冒頭リフといえばピンとくるのではないでしょうか。

こぼれ話

「ARP」は「Moog」から《あれ?その回路うちのに似てますね?》と度々注意されてたのは有名なエピソードですが、裁判沙汰までに至ってないのは多少の費用を払って和解していたという噂です。現に「2600」と「Odyssey」に初期・中期・後期モデルがあるのは、モデルのグレードアップも去る事ながら「Moog」から注意を受ける度に仕様を変更していたためといわれています。

リズムマシンの常識を変えた「Roland CR-78」

70年代に電子オルガン演奏のお供であった「リズムマシン」音楽ジャンルを選択し《チャカポコ♪》と繰り出す反復リズムサウンドはどことなく情緒があり和みます。ロックやポップの分野でもレコーディングの際のガイドリズムとして活用されどちらかというと裏方的な存在でしたが、固定されたリズムパターンだけでなく自由にパターンが作成できないだろうか?と誕生したのが《コンピューリズム》「CR-78」なのです。この「CR-78」の登場により後の「TR-808」のように打ち込みができる《ドラムマシン》へ発展しますが、「CR-78」はそのユニークなリズムサウンドは独特で、ブロンディ「ハートオブグラス」をはじめOMD、ロキシー・ミュージック、フィル・コリンズ、ホール・アンド・オーツなど多くのヒット曲に使用されました。

こぼれ話

80年代になると世界初のPCM音源ドラムマシン「Linn LM-1」が登場し機械がドラマーの代替する時代になりましたが「Linn」のプロトタイプは当時のローランドのリズムマシン(型番不明)をまるまる1曲ぶん打ち込みができるよう強化改造したものが始まりだったのです。その貴重なサウンド(といってもローランドの音ですがw)1979年のレオン・ラッセルのアルバムで聴く事ができます。

まとめ

ヒット商品が登場すると各社から類似品が登場するのは常ですが、単なる模倣でなく特徴あるモデルが誕生したのはひとこと企業努力の賜物と思います。現に「Moog」と「ARP」は、良いライバル関係を保ち、お互いのモデルに触発されながら新モデルを開発してたとのこと。今は便利なものにあふれている時代でありますが、当時の《こんなこといいな♪できたらいいな♪》を現実にするための姿勢が70年代のモデルには特に感じますね。^^

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