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昭和の名曲にみるシンセ・電子楽器の名機たち(その9

ティアーズ・フォー・フィアーズ「シャウト」

80年代に入りデジタル技術を取り入れ進化し続けた電子楽器でありますが、従来、人の手で演奏されてたものを電子楽器で代替した「シンセポップ(当時の日本ではエレポップといわれてました)」というジャンルとして沢山のヒット曲が誕生しました。中でもティアーズ・フォー・フィアーズの「シャウト」は、その最先端電子楽器を使用したばかりか、今では当たり前に行われている音楽制作スタイルを用いた先駆けの楽曲となったのです。

ミュージックワークステーションの先駆け「Fairlight CMI」

シンセや電子楽器はエレクトーンを引き合いにしても両手両足使い1台で最大3パートの演奏しかできなかったのですが、1979年に誕生したフェアライトCMIはコンピューターを搭載した全く新しい電子楽器で、これ1台でサンプリングした楽器音源を最大8パートの自動演奏ができる「ミュージックワークステーション」の先駆けだったのです。しかも、当時そのお値段1千万円越え!?しかし、ピーター・ガブリエルはこの生まれたてホヤホヤの《夢の電子楽器》を紹介され感動し、なんと!彼の親戚と共にフェアライトCMIの販売代理店を立ち上げたほど愛したモデルなのです。TFFの「シャウト」ではその《夢の電子楽器》に搭載されたサウンド「エアーボイス」のメロディがとても印象的です。

こぼれ話

ピーター・ガブリエル自身もフェアライトCMIを使用したアルバム「IV」を1982年に発表していますが、1980年の「YES Drama」「ケイト・ブッシュ 魔物語」などでそのサウンドが既に確認できましたが、当時それが電子楽器だとは誰も想像しなかった事でしょう。なお、ガブリエルと親戚が立ち上げた販売店で一番最初に購入した方は《楽器オタク》で知られるレッド・ツェッペリンのジョン・ポール・ジョーンズだそうです。

サードパーティ製ライブラリーが威力を発揮した「E-mu Drumulator」

「Linn」「DMX」とPCM音源ドラムマシンが登場した中、サンプラーの代名詞である「E-mu」から当時1,000ドル程度と従来品と比べ破格で「Drumulator」が登場しました。魅力的なのは価格だけでなく専用のROMライターを使えばオリジナルサウンドをドラム音源に変更できる仕様ともあり、当時、いち早く目を付けたのが現「Avid」の前身「Digidesign」社。従来サウンドライブラリーは純正品しかなかったのですが、今では当たり前となったサードパーティ製ライブラリー販売の先駆けとなりました。「シャウト」はその素晴らしい《非純正》サウンドが活かされた楽曲といえます。

まとめ

1台のシンセ・キーボードで何役も自動演奏をこなすモデルは90年代になるとそこまで珍しものではなくなりましたが、80年代中ごろまでは夢の仕様。しかもフェアライトCMIはサンプリングの先駆けでもあり、この存在があったこそサンプラーで起死回生を狙い成功した「E-mu」社の存在があり、おかげで「Drumulator」が登場し、そのライブラリーで「Digidesign」が成功をおさめ、現在の音楽制作のスタンダードとなる「Avid」誕生となったと考えると、この半世紀の壮大な物語があったのだと感心します。(´ω`)

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