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潮騒
2019年の1月1日 新しい年の始まりと共に忘れられない景色を見た。
あれはまだ、人と会って話すのが当たり前の世界の年明けだった。
私は初日の出を見るため、従兄弟たちと共に大分県国東市にある千燈寺の近くの山を登っていた。
国東市は古くから山岳信仰が根付いており、今登っているこの山も
もともと山伏が修行の場(修験道)として使っていた山道だ。
なのでなかなかに険しい。
幼少期から30になった現在まで福岡市で育った私にとってはスニーカーでも四苦八苦するこの道をサンダルでひょいひょい登っていく叔父には一生勝てる気がしない。
でも私は数年前に連れられてきたその時からこの山がなんだか好きだった。
山道の途中には芸術家アントニーゴームリーの鉄の像が瀬戸内海を眺めている。
登り切った先は岩山になっていて、その岸壁に山伏たちが修行の際に残した手彫りの仏像が無数に安置されたお堂がある。
険しい自然の中で何かを感じ取ろうとするその人々の心の動きや営みの痕跡を感じるその山がなんだか好きだったのだ。
木々が生い茂る中腹を抜けて山頂についた時、私は一人になれる場所を見つけた。
お堂の横の岸壁を少し登ったところにがちょっと腰掛けるのにちょうど良さそうな場所を見つけたのだった。
私にとって朝は一番素に戻る時間だ。
抗い難い眠気を抱えているということを大義名分に
手放しで心をクローズにして、一人になりたい。他人に対してちょっと不躾になったとしても「ただ自分でいる」という時間をとことん突き詰めたいという欲求を許すことができる唯一の時間だ。
家族も従兄弟も友達も大好きだけど、その全てを締め出してどうしても一人になりたい時がたまにある。
タイミングよく、山頂に至ってお堂でご挨拶を済ませた後にその時が来たのだった。
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