第12話 L'ouverture
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営業権の種別変更とファサードの変更の手続きで、
4ヶ月から半年は店をあけられないという
役所の手続きがあると聞かされ、
またしてもオープンが先送りに。。。
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ということにはならず。。。。
もう開けちまおうぜ。
ということにしました。
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結局、ファサードの変更はぜず、ガラスの内側に
ATSUSHI TANIGUCHI
florist jardin du I'llony
ASHIYA TOKYO PARIS
とロゴをはっただけ。
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テントは昔のボロのまま、
営業権の種別変更だけをして、はじめの数日間は、
種別は変更されていないという状態で
オープンするということにしました。
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アイロニーらしい見切り発車なフライングスタート。
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これで、おれはめでたく、
日本人ではじめてパリに支店をだした花屋
になりました。
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この数ヶ月後に青山フラワーマーケットさんが
どどーんと一等地にパリ店をオープンさせたので、
唯一のという称号はすぐになくなりましたが。
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3月にオープンできそうだということがわかったときに
どうせならこの日にしたいと思う日があった。
3月11日。
あの日を境に多くの日本人の人生が変わったと思います。
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おれは深刻な影響を受けたわけではないけども
たくさんの人たちが被害を受けたのを見聞きして
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おれは自分の花では被災地になにもできることがないと思い一度は失望したけど
すぐに身の回りの人に花を配ってそれを募金にかえることを思いつき、
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花のちから と名付けてそれをネット上の募金集めの
プラットフォームを利用してはじめた。
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たくさんの人が共感してくれた。
これは俺自身自分の気持ちを少しでも整えることに役に立った。
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花屋はいつも気持ちを穏やかに保つ必要がある。
自分の負のエネルギーを花に感じとらせてはいけない。
花はお客さんのところでその力を発揮しなければならない。
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あのときに、言葉では説明できないものを逆にたくさんもらって、
なにかをたくさん背負ったような気がした。
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あのことはきっと忘れることはないけど、
毎年少しでも気持ちが届くよう延々とつづくきっかけをつくりたかった。
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パリ店オープンのお祝いや周年祝いは花のちから募金へ
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そう決めて、友人たちにたくさん手伝ってもらって、オープンの準備をいそいだ。
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結局店の工事はギリギリ間に合わず、什器が完成していないまま、一旦工事を中断して
予定していたオープニングパーティを決行することに。
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壁には今まで撮ってきた花の写真をパネルにしてかけた。
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パーティの準備も友人たちが手伝ってくれた。
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ひとつめの店のときとも、ふたつめの店のときとも、ちがう感覚。
出来上がってる什器をつかって初めてこの空間に花を飾って行く。
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花を飾るときに3つ目になってようやく気付いたことがある。
店には余白があるほうがいい。
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パリに来て感じたことのひとつに、
日本の芸術の"間(ま)"の使い方があった。
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パリではお祭りの花火もバンバンバンバンと絶え間なく上がる。
間のなかにある美しさ。
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そして、店の余白には人が入る。
人が入ると花もさらに輝きを増す。
そしてその花がまたさらにその人に笑顔を生む。
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そういう店がいい店だと思う。
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3月11日の夜
たくさんの人がお祝いに来てくれた。
パリでたくさんの手助けをしてくれた人たち、フェイスブックで応援してくれていた人たち
同じ通りの人たちも来てくれて歓迎してくれたのも嬉しかった。
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他の二つのときと同じく、ゴールという感じはまったくしなかったけど、
世界がさらにひろがっていく感覚はものすごく感じた。
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ここからアイロニーの花がどう広がっていくのか。
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鳥が実を食べて飛んでいってどこかで糞をして種子が根付いて、、ちがうな。
タンポポの綿毛が風にふかれて飛んでいくように
植物の種子が何らかの方法で生きていく場所を広げていくような
そういう本能的な力を感じていた。
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à suivre...
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