第6話 Reprise
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判決がでると聞かされていた10月になっても、話が進む様子はなかった。
このままではオーバーステイになって滞在すらできなくなるということで、
予定していたパリ滞在を早めに切り上げて帰ることにした。
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急な変更だったので、安いチケットを探していると韓国経由のチケットが出てきた。
そういえば、最近フェイスブックをみていると韓国のフォロワーが多い。
韓国の人からのメールで、写真集フラビュラスを買いたいという問い合わせも頻繁に来るようになっていた。
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パリの人気フローリストが韓国の人たちを対象にしたレッスンで成果を上げているのを数件見ていたので
これはいい機会かもしれない、この時間を利用して韓国にも種を蒔きに行こうと考えた。
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パリに店をもつということはファッションの世界と同じように、世界を相手に仕事をするということだと思う。
世界中がパリの花屋に仕事を依頼する。
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もちろん一握りの仕事が一握りのフローリストに、ということだけど。
パリでトップになれば、世界中のひとに見てもらえる。
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自分が綺麗だと思う花を生け続けてたくさんのひとに喜んでもらうには
できるだけたくさんのひとに知ってもらう必要がある。
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パリに店を出したあとにはきっと韓国からの仕事の依頼も多くあるにちがいない。
そう思って韓国を下見しておこうと思った。
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市場にどんな花があるのかを知っておけば、仕事を受ける時のイメージの元になる。
そう、下見のつもりだった。
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それなのに、そのことを嫁に話すと、もうせっかくいくんやったらレッスンとかしてきたら?
と無茶振りをしてきた。
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無茶振りだけど、まぁパリ出店なんてもう十分無茶なことしようとしてるなぁと思ったら、
まぁやってみてだれもこなかったらこないでもいいかぁと思い、
友人に翻訳をたのんでフェイスブックで告知をしてみた。
韓国に行くんだけど、レッスンとかデモンストレーションに興味のある人いたら連絡ください。
何人かあつまったら開催します。
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そしたら、すぐに5、6件の問い合わせがあった。
そのなかの一人に、
『わたしはソウルで花屋をしている、そして教室があるので、
わたしの生徒のためにレッスンとデモンストレーションをしてくれないか?』
といってきてくれたい人がいた。
おれほどフェイスブックを活用してる花屋がいるだろうか。と思いながら
すぐにその話にのっかった。
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そこからメールでやりとりをしながら詳細を決めていった。
韓国について、市場を視察、素材を見て、レッスンとデモの内容を決めながら軽く仕入れておいて
二日後の市場でがっつり仕入れる。
というような青写真を描いていた。
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そしたら、協力してくれるハンさんが、
うちの生徒さんは日曜じゃないと集まりにくいから、日曜にデモをしてほしいという。
おれ韓国に土曜に着くっていうてるやん。といいながらも
あれこれ話し合った結果、やはり日曜にデモをすることに。
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ハンさんもとても不安だというが、仕入れを任せるしかない。
ある程度デモの計画を頭のなかで組み立てて発注する。
なにがあってなにがないのかもわからないので、かなり難しい。
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おれの組み合わせは、ちょっと一つの素材がかわるともう綺麗じゃない。
ひとつ素材が手に入らないということは、その他の花をすべて無駄にすることにつながる。
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気候やオランダかのの輸入素材のことなどを考えて、おそらくあるだろうなという素材だけでできるプランを考える。
せっかくPRにきてるのに、しょーもないものつくってたら何の意味もない。
ベストの選択をして、あとはこのあったこともないハンさんを信じるしかない。
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なかなかおれに門戸をあけてくれないパリにお別れをして、いざ韓国へ。
ハンさんが空港に迎えに来てくれて初顔合わせ。
思いつきで韓国に行こうかなとつぶやいて、空港に迎えに来てくれる仲間がいるというのは
花の世界は本当に素晴らしいなぁと思う。
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ハンさんはおれより少し年上の女性で、彼女の店はソウルアートセンターという施設の中にあるらしい。
彼女も英語があまり得意ではないらしく、日本語の話せる生徒さんと一緒に来てくれていた。
デモのときも通訳を担当してくれるという。
ハンさんはおれのことを海外の有名なフラワーアーティストのように思っていて
こんなイベントをするのは初めてなのでとても不安だった。と言った。
常に危機感のないおれは、大丈夫。きっとうまくいきますよ。楽しみましょう。と言った。
きたこともなかった外国で自分の花を評価してくれている人がいるというのはとても嬉しい。
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車で数十分走ったあとに、ソウルアートセンターにつき、ハンさんの店フレグランスに到着した。
数人いたスタッフの女の子たちもちょっとした有名人が来たような雰囲気を醸し出してくれていた。
ハンさんは仕入れた花をおれが気に入らないことをとても心配していたようで、
他にもたくさん花を仕入れてくれていた。
思っていた通り、半分くらいは使いづらい素材だったが、買足してくれていたものを選んでプランを変えることにした。
これには少し時間がかかりそうだったし、その場で黙って考えていると、ハンさんが心配しそうだったので、
大丈夫、問題ありません。と言って帰ってホテルでゆっくり考えることにした。
そしてホテルまで送ってもらいプランを練り直すことに。
いろいろなことを考えていたら、いつのまにか眠ってしまっていた。
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翌朝、タクシーに乗って、ハンさんの店に行き、デモをするためにハンさんの店の配置を変更させてもらった。
十分な広さがあり、いい形になりそうだった。
結局30名ほどの方が参加してくれることになり、韓国の花雑誌の取材が入ることになっていた。
はじめまして、わたしはタニグチアツシです、、ありがとう、だけは覚えておいた。
日本のこと、パリのこと、いろんなことを話しながら6つのブーケを束ねた。
韓国からの目線のことを考えながら話をするのはまた少し自分の視野を広げてくれるものだった。
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デモが終わったあと、きてくれた人たちとのカクテルパーティがあり、
たくさん話をすることができた。
同じ花を綺麗だと感じる人たち同士、国なんてほんとに関係ないなぁと思った。
パーティが終わったあと、雑誌の取材を受けた。
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なんとも急に思いついたとは思えないほど充実した2日目だ。
すべてが終わってハンさんとハンさんのスタッフのみんなと打ち上げにいくことに。
彼女たちもたくさんの質問を投げかけてきたけど、
日本の花屋で働く女の子たちが持っているような悩みと同じだった。
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パリでもそうなんだけど、片言の英語で会話をしていると、
簡単なことしか言えない。
でも、時にはシンプルな言葉のほうが力があることがある。
このとき、彼女たちの悩みに近いような質問に答えるために考えた言葉は
日本語で考えていたら、このときこう答えていなかったかもしれない。
一番大切なことは、自分が美しいと感じること。
日々どんなものに対しても美しさを見出すこと。
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自分にも言い聞かせるように言った。
なんて偉そうなこと言っている人の翌日のブーケレッスンの参加者は二人だけだった。
まだまだがんばらねば。
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朝市場に連れて行ってもらい二つの市場の様子を知ることができた。
これで、なにができてなにができないかが大体わかるので、いつか仕事を頼まれた時の判断の精度があがった。
レッスンも無事に終え、その後は写真集フラビュラスの営業にあちこちを周り充実した韓国遠征を終えた。
韓国でお世話になった人たちと再会を約束して空港へ。
画
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日本に帰る飛行機を待っている時に、行動してよかったなと思った。
停滞してるパリももっとなんでもやっていこう。と思い、
学生ビザでもなんでもとってみようかと進出をサポートしてくれている会社に相談のメールを送った。
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そうするとすぐに返事がとどいた。
谷口さんのビザの問題ですが、
まずはレンタルオフィスを借りて、その住所でパリ支店をつくってしまえば、代表者ビザが取れますし、フランスで仕事を始めることも可能です。
!!!!
早く教えてよ!!!
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さっそく手配を依頼した。
そうだ、空くのを待っている店舗物件のちかくにアトリエを探して、レッスンやレストランなどの生け込みからはじめられる。
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ようやく進みたい方向への進み方が見つかって、動くことができる。
じっと我慢できない自分としては本当に嬉しい進展だった。
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また一歩パリに近づける。
à suivre
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